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JACK+ グローバルネットワークへの反抗   作者: sungen
異能編(最終章)
135/151

第14羽 MD ⑥ラストステージ(前編) -5/6-


再び目を覚ました速水は、どこかにくくり付けられ横になっていた。

刺すように頭が痛む。

不快音の流れるヘッドセット、さらに色々な物を体中に取り付けられていて、腕、手首は体に沿うように、足も固定されていて、ほとんど動かせない。体が冷たい。


ぎぃぎぃ、というカラスのような鳴き声が聞こえる。

これは本当はあるはずの無い……幻聴?


いや。本当に、鳴き声が聞こえていたんだ……。

だって近くに、カラス?が本当にいる。


速水はその気配を感じていた。


ちゅんちゅん、ケタケタと。鳥のさえずりも聞こえる。

――あ、今、肌に鳥の羽が触れた。


つまりこれは……速水の頭が作り出した幻想では無い?

速水は本当に、普通の人には聞こえない、確かに存在する鳥達の声を聞いていた?


ありえない。と速水はその考えを打ち消した。たぶんコードとか、布が擦った感触だろう。

震えが止まらない。今も見知らぬ鳥が肩に止まっている気がするとか、気のせいだ。

……やっぱり俺は狂ってるんだ。

『大丈夫ですか、速水サン……!』

だって、さっきから、ジャックの声も聞こえる。

――ジャックが速水の耳元で囁き、速水を覗き込んでいる気がする。


ジャック……。

速水は唯一自由な口を動かした。


「俺は、死ぬかもしれない」

視界は……目を開けているのに、真っ暗だ。

女の泣き声が聞こえた。

『大丈夫?ハヤミ……ごめんね、ごめんね』

ベス?


――急に頭の中にドラム缶をぶち込まれたような衝撃が走って、ハヤミは絶叫した。

「いっ…、っう!ぁああああああああ!!」


「シャドーが!」「まずい!」

「薬を――増やせ!早く!!」


『じゃあ、カラスが鳴いたら、帰りましょうね』

『スズメは?鳴いても平気なの?』


「ぎやぁああああああああああああ!!」

速水は叫んだ。


『カッコウが鳴いたら雨が降る…。まあ、助かるわ』

『大丈夫よ。どっちも同じ。どちらも、朔、貴方なの』

――、母さん?


『だからジャック。貴方は安心して、眠っていなさい……』


■ ■ ■


『あ゛ぁああああああああああああ!!あぁああ゛あ゛ぁああ!!』

研究員達が、細長い板の上で暴れる速水に投薬する。


「やめて!おい、やめろよ!!」

ノアはその様子を別室で見せられていた。ぷつ、とそこで映像を切られた。

切ったのはベス――主任だ。

「――ノア、彼はこれで、完全なレシピエントになるわ。貴方はどうする?」


ノアは歯ぎしりをしてベスをにらみつけた。


「……お前等は狂ってる!!いや、エリザベス!お前は狂ってる!!」

自分の前に置かれた薬を投げつけた。


「ハヤミを離せ!ハヤミを自由にしろ!!」

この部屋にあるのはベッドとモニター、机だけだ。

「じゃあ――代わりに貴方が、どうなってもいいのね」

主任が言った。

「っ。ああ、もういい!!――いや、良くない!!……クソッ」

ノアはベッドを叩いた。

主任はクスクスと笑った。

「私は貴方のそういうところが好きよ」


「ふざけるなよ」

ノアは主任を睨みつけ、彼らしからぬ低く強い声で言った。

ギリギリと歯を食いしばる。ノアは強く強く拳を握った。


――ハヤミ。

スクールで出会った、異邦人。

何から何までノアとは違っていて、けれど面白くて。

彼は色々な事を知っていた。曲がまともに聴けないのに、ダンスは凄い。

憧れていたわけではない。実力は互角だ。次は、絶対に勝ちたいと思っている。


「……あいつといて分かった事は、嫌なやつに嫌なまま従ってても、ろくな事にならないって事だ!」

ノアは吐き捨てた。今までの自分を捨てる気で。


「分かったよ。こんな腐った世界、俺が変えてやる。お前等が嫌がる方向にな!!」

「――それでこそノアね」

「……チッ」

ノアは舌打ちした。机に残った薬を手のひらに収める。


「……楽しみだわ」

主任が微笑んだ。


■ ■ ■


気絶と覚醒を何度も繰り返し、速水はもはや自分の意識がどこにあるのか、それすらも分からなくなっていた。

……何もかも、真っ白だ。


これは夢だろうか、現実だろうか。それとも悪夢なのか……?


――急に、真っ暗になった。


「うわっ!」

――突然、速水はその暗闇に放り出された。

暗闇に膝をつく。

暗闇の中を、風が強く吹いている。風は速水を通り越し、吸い込まれるように、速水の向こうへドンドン流れていく。

音はしない。真っ暗だが何かある――視界が生きている気がする。


風が止まり、逆風で速水の髪が乱れた。速水はうるさい髪を押さえた。


ひらめく物があった。

なにかいる。

今、なにか、髪のような物がひらめいた。


とにかくその「何か」を映そうと、速水は暗闇の中で目を凝らした。

大きく開いた速水の目に、同じような物が映った。


「……え」

速水は目を丸くした。少し向こう。赤くて丸い何か。

――瞳だ。


人がいる――?


誰かがこちらを向いて、立っている。


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