トンとことこ♪ 4話
今朝はモモさんがセーウルフを捌いてくれたので、美味しいスープを協力して作った。
「美味しい~♪イベリコっていいダシが出るのね~♪…………ジュルリ♪」
そんな目で見ないで!
「モモさん…俺…信じてるからね……うん…」
今や俺も非常食の仲間入りにならないよう努めないと…
「冗談よ♪……それより、そのさん付け止めて。パーティーなんだからモモでいいわ♪」
可愛くウインクして笑顔を見せてくれる。明るくていい子だ。ひょっとして兄弟の世話でなれているのかな?
「分かった。モモは…その、兄弟とかいるの?なんかそんな感じがして。」
「孤児院に一杯いるよ♪去年までいたんだ♪だけど、12歳になったら出ていかないといけなくてね。………そんな顔しないでイベリコ。私はいい方よ♪こうして孤児院のおかげで生きてこられて、冒険者にもなれたんだから。」
寝る前に少しモモとおしゃべりをしたが、彼女は健気だ。
孤児院に毎月少額だが寄付をしているらしい。
それがいくらなのかは分からないが、モモの話を総合して聞くと、決して無駄に出来るお金はない筈なのに…
「で………そのね。セーウルフなんだけど、この尻尾を1つでも持ち帰らないとペナルティーで罰則金が発生するの。イベリコ!!お願い!!これ譲って!後でその分返すから!!」
お皿を地面に置いて、両手を合わせて頭を下げるモモ。
「パーティーなんだから借り貸しは無しだ。それに俺一人じゃこうやってモモの美味しいご飯だって食べれないんだ。上手くやってこう♪」
俺はモモの為なら出来る事はするつもりだ。もし、モモがもっと歳のいった女性なら惚れていただろう。
「ありがとう、イベリコ♪今回のクエストの最大の報酬はお前だよ♪」
「くっ苦しいよ……モモ…」
ムギュー♪と抱きつくのはいいが、俺の体でポヨンポヨンの真ん丸で、鼻を蓋されると呼吸が出来ないのだ。
気づいたモモは慌てて離してくれる。
「ごめんね。さっ、ご飯食べちゃお♪」
「おーけー♪」
一人で食べるご飯より断然に美味しかった。だけど、鼻からすすって食事をする俺を見て、モモが吹き出しそうになっていたのに、俺はちょっとだけ凹んだ。
アンデンテの街。そこそこ大きい街の門には様々な人が出入りし、賑わっている。
そこで何か調べられたり、俺がモンスターだからこのテイムバッチを付けてから入れ!
とか………そう思っていた時期がありました。だけど、実際はゆるいものだった。
「お疲れ様です♪」
「お疲れ~♪またボウズなの?ん?何、そのブタ。」
門番をしているお姉さんは、モモが抱えている俺を指差す。
「はじめまして。俺、イベリコと言います♪不思議なブタさんだけど、悪いモンスターじゃないから怖がらないでね♪」
いきなり剣でズブッとかされたらシャレにならんからね。第一印象を良くして可愛がってもらわねば。
「へぇ~♪珍しいユニークモンスターだな!しかも喋るのか!?…モモやったじゃん。あんたパーティーメンバーいなくて困ってたもんな。」
俺をツンツン♪しながらまるで怖がっていない様子に安堵する。
「えへへ~♪イベリコってとっても賢くて優しいモンスターなんだよ♪」
この設定は二人で話し合って決めた。
転生うんぬん言った所で証明のしようがないし、信じない人は何を言っても無駄。
なら、この世界には稀に人になつく変わったモンスターの事をユニークモンスターと呼ぶ。
と言うわけで俺はモモにテイムされたユニークモンスターと言う設定になっているのだ。
「お前さん何が出来るんだ?」
ワクワクしたお姉さんは俺をモモから受け取り尋ねる。
「美味しいおダシが取れます。」
「あはははははは♪なんだそれ♪」
笑い声を聞き、気になったのか、他の門番さんも数人こちらに来て、俺をツンツンする。いやん♪
「それが本当なのよ。イベリコって変わったチートを持っていて、実に私好みなのよ♪」
「どうやってダシを取るんだ?……しっかし♪面白いモンスターだな♪」
むにむに♪と俺を軽く伸ばしたり、手で挟んだりして形を歪めて遊んでいる。
「お水に浸かればあら不思議!?速効で旨味100%のダシが取れますぜ姐さん♪」
「マジか!?……モモ、少しイベリコでダシ取らせてくれ!!最近支給される飯が寂しくてな……そんなに時間取らせないからいいか?」
「イベリコがいいなら私はいいよ。どうかな?イベリコ。」
「これからお世話になるのでダシで良ければどうぞ♪」
「俺!鍋取ってくる!!」
すたこらと男の門番さんがお水を張ったお鍋を持って来ると、清潔な布で俺はフキフキしてもらってから鍋に浸かる。
俺って脂肪の塊なのか、浮きのように鼻から上は浮くのね。
街に出入りする人は何してるの?と言う感じで通り過ぎ様に俺を眺めて行く。
ダシを取ってるとは夢にも思うまい。……………………………………う~ん、一分経ったしもういいでしょ。
「おーけーだと思うよ姐さん。」
「イベリコ。お疲れ様♪」
モモが俺を掬って布で拭いてから地面に置いてくれる。
「もうかい!?こんなに早く取れるもんなのかい!?」
まさか~♪ってな感じで門番の男の人がお鍋からスプーンで一口飲む。すると…
「うっま!!!なんだこれ!?あははははは♪みんな飲んで見ろ♪」
見た目は只の水。だが、豚汁は旨い!俺も今朝飲んだから分かる。
男の顔を見て、次々とスプーンで一口ずつ飲んでは驚く面々。
「うっめーーーーーー♪モモ!あんた冒険者辞めなよ!イベリコと商売やった方がいいよ♪」
「やめてーーーー!悪魔の囁きが聞こえるわ!私の夢はこれからなの!」
両手を耳に当て聞こえないようにして、しゃがみこみながら目を閉じるモモ。
俺も冒険で色々見てみたいから、その方が助かるかな。
門番の皆さんってば、モモをからかって遊んでいるし。また、俺を拾ったお姉さんは俺を抱き締める。
あわわわ!胸の感触が柔らかい♪
「あはははは♪そうだ。あたいの名はレッカ。この街の自警団の一員だ。よろしく。」
「こちらこそ、よろしくです。てっきり騎士団の方かと思いましたよ。」
「そりゃないない!騎士様なんて、みんな貴族しかなれないし、王都に行かなきゃ見れないよ。」
手を顔の前に持ってきて振るレッカさん。他の皆さんも頷いている。
「そうそう。ここに月一で視察に来る位さ。」
「すみませんでした。ブタなので一般常識が足りなくて。勉強になります。」
「あはははは♪やっぱ変わったモンスターだよ♪なんか困ったことがあったら来な。いつでもいいからよ。」
「は~い♪」
「おめぇじゃねぇよモモ!と言うかパーティーリーダーになるんだからソロの時より頑張れよ。」
「え~~~~!イベリコがリーダーじゃダメなの!?」
この娘…大物だわと思ったのは俺だけか?…
「いや……モモ。気持ちは嬉しいけど、ブタがリーダーじゃ不味いでしょ。」
「なんか主従が逆転してないか?イベリコの方がしっかりしてそうだな。ちゃんと見てやってくれよな。」
「そりゃ~もちろん♪」
白い視線を一身に受けたモモはジリジリとあとずさる。
「ここにいると自警団のみんなにいじられるから行こっ!イベリコ!」
「ほ~い♪じゃあ、皆さん失礼します。ではでは♪」
ひょい♪とレッカさんの胸から内心名残惜しく離れ。俺はモモにの後をトンとことこ♪とついで行った。