トンとことこ♪ 3話
オリハルコンの家。それは一辺が5mの正六面体の俺のお家。
どうやって入るんだと近づくと、自動ドアのようにオリハルコンがスライドして開いてくれる。
中はそう、空き部屋だ。家具なんてもちろん置いてない。窓どころか照明すらない。
言わば箱と言う方がしっくりと来る。だから、駄神はブタ箱なんて名前にしたのか…
何も見るものがない俺の家は取り合えず放置して、狼をどうするかべきか考える。
貴重なタンパク源である。茹でれば食べれないことはないだろうけど、俺はこの体のせいで捌くことが出来ない。
このままここに置いて腐らせても、勿体ないからブタ小屋にしまおう。
*ブタ小屋に保管しますか? Y/N
頭の中に浮かび上がる謎のシステムメッセージに従い、俺はもちろんイエスと選択する。
すると狼はうっすらと光に包まれ消えてしまう。
それを見届けた俺はブタ小屋を確認する。
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ブタ小屋⇒セーウルフの死体
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今更だが、ここはゲームの世界なのか?少なくとも俺の知る現代日本じゃないよな。
危険が去ったら、急にみんなが恋しくなった。だけどお腹は…ギュルルルル~♪…お腹が減ったな。
感傷に浸る暇も現実にはない。
寝床はオリハルコンの家があるから平気。水はお湯を冷ませば飲めるとして…目下の目標は食べれる物を…………あるじゃん!
お菓子の家♪すまないオリハルコンの家よ!またな!
テンションの上がる俺は同じ場所に出せるか実験をしてみる。
結果…………お菓子の家は現れた!それはまさにエデン。
この極限状態において、このお菓子の家は輝いていた。
生クリームにチョコレート♪イチゴにウエハースに桃もある♪
マシュマロにクッキー♪キャンディーもある♪甘い物は好きな方なので食べれるが、水がないのが辛い。
少々汚いが、先程、狼に撃ち込んだ熱湯の水貯まりが出来ていたので、泥をすすらないように上澄みだけを飲む。
お腹が満たされ落ち着いたところでまとめると…お菓子の家を出したと同時にオリハルコンの家は消えてしまった。
2つ以上は出せないのと、別のお家を出した瞬間に前のお家は消えてしまう事。
そして、もう1つ気になる事がある。お菓子の家を食べた後に消して…また、出したら…食べた部分は元通りになるか………………………………………………………………
結果から言うとなった。もぐもぐ♪…お菓子のお家はちゃんと復元されていた。
しかも、試しにウエハースを一枚剥がしてからお菓子のお家を消したところは何故か、ウエハースはしっかりと残っていた。
安全な寝床の確保と食料をなんとか出来たなら、残るは人を探しに行こう。
俺はまた茂みの中に身を隠す。今度は見つからないようにしないと…
右よ~し!左よ~し!前よ~し!進め!トンとことこ♪トンとことこ♪そうして、かなりの時間を進んだと思う。
慎重に慎重を重ねて進んだ先には木が途切れ、そこから先には平野が広がっていた。
ここで俺は迷う。このまま平野に出て進むか。それともこのまま森に残り人を探すか。
森の中には水場もあり、野性の動物もいるから狩りに困らないだろう。
自然も豊かで森のどこかに人里がないとは限らない。だけど、当てもなく探すのは厳しい。
特に森は隠れる場所が多いが、それは俺を狩ろうとする方も待ち伏せ等で狙いやすい訳である。
俺はブタだが心は人間だ。野生の動物とは違い森で生きていけるほど心がタフじゃない。
だから、平原に出て、人に会える可能性に掛けて見たかった。
理由としては見通しの良い平野は待ち伏せに合いにくいかもしれないし、夜になれば灯りが見えるかも知れない。
それに街道が見つかれば、それに沿って進めば人里に出るかも知れない。
そんな淡い期待に掛けて、俺は森から出た。
私の名前はモモ。
年齢は今年で13歳の130センチの人間の女の子です。
ショートボブでピンクの髪に紺のローブに樫の杖を装備したのが私の格好。
孤児院を出て、冒険者としてソロで頑張っている新人冒険者です。
もちろん、そんな私とパーティーを組んでくれる人はいません。
たまにいたとしても、下心が見え見えの男の人達ばかり。
だけど諦めない。
孤児院出身の先輩方もこうやってソロで頑張ってやって来たからこそ、王都で活躍されているわけだし。
今は街から南に進んだ森からの帰り道である。
気が重い。それは収穫0だからだ。
セーウルフの一匹も狩ることの出来なかった私。この先やっていけるか不安である。
急がないといけない。
夕日がどんどん沈んでいく。
森の奥の方まで入りすぎたのか、このままでは夜になってしまう。
少し駆け足で街に急ぐ。その帰路の途中で不思議な大きな箱を見つける。
いや、見つけると言うか、道を通せんぼするような形で置いてある。……見たこともない金属の箱だ。
私が森に行く時には当然こんな箱は置いてなかった。未発見のモンスター?
警戒しなから、恐る恐る近づき樫の杖で軽くつつく。
カンカン♪といい音が鳴る。すると…
「ひっ!……人なら返事をして。人じゃないならどこか行ってよ~…期待させといてガルルルル~♪とか、そういうのはもうお腹一杯だから!テンション上げておいて毎回下げられるこっちの身にもなって!」
可愛らしい声が聞こえる。
子供?何故こんな所に?色々と疑問が沸くが、返事をしてみる。
「えっと~…冒険者のモモと言います。そちらもひょっとして新人冒険者ですか?」
返事をした途端、金属の箱の壁が開き、中から真ん丸な何かが私に向かって飛び込んで来た。
「キャッ♪」
思わず尻餅をついてしまい、慌てて樫の杖を構えるが、目の前にはブタとスライムを足したような不思議なモンスター?が泣いていた。
「うわぁぁぁぁぁぁん……やっと人に会えた~…」
やっと人に会えた。良かった。
何度もモンスターがオリハルコンの家を小突き。その度に人と会えたと思いテンションが上がるが、グルル~♪やガルル~♪のモンスターだと知った途端にくるこの切なさ…
なまじ、命も掛かっているだけに、ハートへの負担が大きいのだ。
そして、多少自棄になり掛けていた時であった。
このモモと言う少女が俺の前に現れてくれたのは。
「その!こんなブタですが!ほら!言葉も話せますし!悪いモンスターじゃないから!!一人に……えぐっ……じどりにじないで~~…」
咳を切ったようにえぐえぐ泣いてしまう俺。
こんな右も左も分からない世界で少女と言えども人に会えばこうなるよね?
俺の円らな瞳には、この少女が後光を差し女神様に見えた。
このチャンスを逃したくはない。ここで見捨てられたら心が折れてしまう。
モモと言う少女は俺に近寄ると、頭と言うか体全体を優しく撫でてくれる。
「モンスター……じゃないわよね?詳しく話してくれるかしら?」
まるで小さい子供をあやすかのように俺に接してくれた。
「えぐっ……えぐっ♪……どうじょ。こんなじょごろですが、中にじゃいってぐだじゃい……えぐっ♪…」
俺は真っ暗なお家の中にモモさんを案内する。するとまたオリハルコンが閉まり何も見えなくなる。
「おじゃまします。ライティング!コンコン♪これってあなたの魔法?」
光の玉がフワフワと浮き、箱の中を照らす。
目を見開いて驚く!魔法使いだ!ここが完全に日本じゃない…いや、地球でもないことが分かってしまった。
「そのことも……えぐっ♪……含めて……話を最後まで……聞いて下さい…えぐっ♪」
俺は前世の事も含めて、全て正直に話した。
藁にもすがる思いで現状をなんとかしたいのだ。
一通り聞いてくれたモモさんからあれこれと質問をされて答えていく。
その結果……
「私とパーティーを組みましょう♪」
「へ?」
俺を両手で掴まえて、女の子座りしてる膝の上に乗せると、そんなことを言ってくる。
「だって、ブタさんはこの世界のことが分からないし、人からブタさんになったから色々と困っている。オーケー?」
「オーケー…」
「そして、私は新人冒険者で頼れるパーティーメンバーがいない。そして、ブタさんのステータスは思っているよりも優秀。しかも、女として襲われる心配がない。なら、互いに助け合わない?」
向こうからまさか提案を持ちかけて来るとは夢にも思わなかった。
「俺としてはこの不自由な体で出来ない事を、色々と助けてもらえるならオーケーです。」
「決まりね♪改めまして。私の名前はモモ。よろしくね。ブタさんの名前だけど、どうしようか?ブタのままじゃ流石に…」
俺はこれから只のブタになるつもりはない。
どうせ名前をつけるのならブランド物がいい。
なら!
「イベリコで…………そう!俺の名前はイベリコと呼んでくれ!」
「分かったわ、イベリコ♪これからよろしくね。今日はここで野宿させてもらうわ。…イベリコってぬくぬくしてそうね?オーケー?」
「おーけー♪」
モモさんのぬいぐるみと化した俺は、毛布の中でゆっくりと眠ることが出来た。




