トンとことこ♪ 2話
豚カツやカツ丼が食べられなくなった元保育士のブタです。
森の中をトンとことこ♪と進んでいます。
ここはどこなんだろうね。
と言うか人に会いたい……愛子ちゃんに本を読んであげる約束をしてたのに……卓也くんとはお馬さんごっこをしてあげる筈だったのに……よそう……考えるだけで気が滅入ってくる。
園長先生や他の先生が…きっと何とかしてくれる。
俺は遠くに引っ越したと子供達に伝えてほしい。
円らな瞳に心の汗を滲ませながらも茂みの隙間を縫うようにして移動する。
なるべく音を出さないようこそこそと移動してると、たまに何処か遠くで鳥の鳴き声が響き、それがますます俺を不安にさせる。
心臓に良くないよ……生きた心地がしやしない。
進むべき方向はこっちで合っているんだろうか?答えが出ないまま進む俺は自問自答する。
誰でもいい。返事が欲しかった。茂みを1つ、また1つと抜け、辿り着いたのは少し幻想的な場所だった。
その場所だけスッポリと木々が生えてなく、木々の隙間から漏れる木漏れ日が差しこんでいて、時を忘れて見入ってしまう。
綺麗だった。あまりにも綺麗な場所だったので、その中心に躍り出て何かを感じようと油断をしてしまった。
「グルルル~♪」
一匹の狼が低い唸り声を出しながらゆっくりと茂みから姿を現せる。
俺はバカだ。今、置かれた状況を忘れて呑気に躍り出た自分を呪い殺したかった。
ノコノコと目立つ場所に出た自分に腹が立つ。
狼は軽やかな足取りで俺の品定めしながら周り始める。
ゆっくりと俺を起点にして、時計周りに……その動きに合わせて俺も体の向きを入れ替える。
でかい!今の俺が小さすぎるのだが、そのせいで目の前の狼がより大きく見える。
頭の中で「逃げろ!逃げろ!」と叫ぶが、背を見せるのはもっと怖い。
思っていても行動に出せない事があるが、まさに今がその時だ。
狼はヨダレを垂らしながら一周した所で俺に飛び掛かって来た!
こちらも警戒した上だったので咄嗟に反応し、横に跳び跳ねて回避する。
その俺の横を狼は通りすぎる。口を大きく開けた狼の姿が脳内にこびりつき、心臓を激しく打ちつける。
惜しい事をした。熱湯を掛けるチャンスだったのに…
震える体。怖い怖い!だが、こんなピンチの時なのに園児のみんなを思い出す。
励ます声が聞こえる。応援してくれる声が聞こえる。
幻聴なのは分かっているが、俺の震え上がった心に火を灯してくれる。
狼は着地するとクルッと身をこちらに向け、姿勢を低くし、再度飛び掛かる準備をする為に足に力を溜め始める。
その僅かな刹那が、俺に考える時間を与えてくれた。そう、俺のチートはこれだけじゃない!
足に力を溜めた狼は一気に解放し、俺めがけて飛び込んで来る。
その瞬間、時の流れの感じ方がゆっくりとなる。
体感時間が限りなくゆっくりと流れる中、俺は童話を思い出す。
狼に対し、三匹の子豚は藁でダメだった。
木でもダメだった。レンガの家でも煙突から入られてしまう。
だが俺は!
「ガルルルル!」
宙を漂う狼。その狼を真下を意識して俺は発動させる。
____________オリハルコンの家を!
その瞬間、狼の真下から現したオリハルコンの家が、アッパーカットを喰らわしたかのように狼を突き上げ!
高く舞い上げ、俺の頭上を飛び越し、地面に激突する音が鳴り響く。
微動だにしない狼だが、止めに熱湯をバシバシ掛けてから俺は恐る恐る近づき息があるか確かめる。
__________息をしていない。
勝った!俺は生き残った!!狼の周りをピョンピョンと飛び跳ねて俺は助かった喜びにうち震える。
童話ならここで終わりだが、俺のブタとしての童話はまだまだ続きそうだ。