トンとことこ♪ 12話
俺は体を手に入れた。そして、あれからモモとクエストをこなし、そこそこのお金を稼ぎとうとう真珠の日がやって来て金貨三枚を手に入れた。
前回より一枚多いのは購入を希望する声が大きかったからのようだ。
と言うわけで、俺とモモは領主様のお屋敷に向かい、色々とお願いをする事となった。それは、領地に帰って来た領主様が、ルーちゃんの一件で礼を言いたいと言うので、領主様自ら文を書かれ、招待とあいなった。
つまり、これから領主様と交渉次第で俺の保育園の設立の運命が決まる。上手く行けば本格的な準備……失敗すれば……おうふ……
「モモモモ……モモ! 領主様良い返事くれるかな?」
「落ち着いてイベリコ。貴方は只のブタじゃないわ。今や7級冒険者の相棒! その名も魔箱使いのイベリコナイトじゃない。自信を持ちなさい。」
そう、俺とモモはあれから活躍してランクも上がり、そこそこ有名にもなった。お金儲けも大事だが、俺の趣味に合わせて子守りや貴族様のお子さんのお遊戯会も積極的にやった。
それが最初はルーちゃんだけだったのに、あれよと言う間に増えて、奥様方から保育園設立を後押しされている状況であった。
「うん、もう一個の異名が子守り騎士だけど、そっちの方が俺に取っては名誉だ。」
「そうよ。ちゃんと土地も購入して、世界樹で建物だって作って……本当に立派よイベリコ。ついでに孤児院も直してくれたし。街の人気はウナギ登りよ!」
心に励ましと言う栄養素が投入されてやる気が起こる。
「良し! ルーちゃんやマーくんやミーちゃんの為にやるぜ!」
領主様の屋敷の門の前で俺は気合いを入れて踏み出した。
ルウさんに案内されて客間に通された。既にそこにはガタイのしっかりとした40代の男性が待っていた。
サイドと襟足は刈り上げ、トップに少し長さを残したベリーショートでワイルドな髪にこれまた端正な顔つき。パッと見20代でも通用しそうな方だ。
「ようこそ、わざわざ呼び立てして悪かったね。私が領主のギルバートだ。ささっ、座ってくれたまえ。」
「初めまして領主様。冒険者のモモと言います。こちらは私の相棒のテイムモンスターのイベリコです。以後お見知りおき下さいませ。」
「はじめまちゅて!ボクイベリコじゅ!」
だーーーーー! 緊張しすぎて鼻が回らない……
「緊張させてしまったようだね、楽にしてくれて構わないよ。君達にまずは礼を言いたい。娘を救ってくれてありがとう。」
頭を下げる領主様は一人の父親だった。その姿を見て俺はやっと緊張が解ける。
そこからは例の事件の時の話や奥様達から領主様に圧力?が掛かっているらしく、保育園の計画を支援したい旨を領主様自ら俺に打診してくれた。
「じゃあ、この街に保育園を作っても良いんですね!」
「ああ、だけど1つ条件がある。ズバリ人選だ。ルーの一件もあるからな。平民の子もいるとは言え、貴族の子供も通うとなると族には格好の場所になるからな。そこで俺の選んだ者を雇い入れて欲しい。どうだろうか?」
願ったり叶ったりだ。それならばギルドに求人募集をかけなくて済むし、領主様の太鼓判付きなら問題ない。
「いいんじゃない? イベリコ。」
「だね。こちらの方からよろしくお願いします。給金や雇用に関する事はざっとですが……あっ、これ、簡単にまとめたものですので、良ろしければ目を通して下さい。」
と、鎧の中から出資表と雇用に関する雇用形態をざっとまとめた紙を領主様にお渡しした。
意外だったのか、少し目を丸くさせている。それを別に俺は失礼だとは思っていない。むしろ、好印象として捉えた。
「いや、これは済まない。セゾン。君もこちらに来て見てくれないか?」
端で控えていた年配の執事さんがこちらに一礼してから寄って来る。
「畏まりました旦那様。…………ほぅ、コレは……」
実に興味深く目を通してる。
「いやぁ~……君は本当にただのモンスターなのかい? 正直コレはやられたね。そこらの貴族よりしっかりしてるよ。福利厚生をしっかり考えて……この有給なんて制度も、こんな破格な条件で雇うなんて聞いたこともないよ。」
休み無しで働くなんて言うのは、この世界では当たり前の事だ。そんな中での有給休暇や通勤手当てに退職金制度、極めつけは育児休暇。
「正直言うとお金に関する事だからね。こちらとしても折り合いを着けたかったんだが、これなら何も問題ないよ。君の真珠の事も聞いてるし、そこから毎月運営費に宛てて……正直君に儲けは出ない。言い替えればコレは慈善事業になるけどいいのかい?」
領主様は俺に問いたいのだろう。何故に俺が子供達をそこまでして面倒をみたいのかと。
「俺は子供達が好きです。成長途中である子供達は将来の世の中を作っていく一員です。でも、その過程で色々と挫ける事がたくさんあります……」
「・・・・・・」
「俺はそんな子供達の背中を押してあげたいんです。出来る事なら健全で健やかに芽を伸ばしたい。多すぎるんです、大事な芽を粗雑に扱う……あっ、済みません……その生まれた時から何故かそう思うのです。」
(熱くなって、余計な事を言うところだった。)
「(まるで見てきたような言い方だな、ただのモンスターじゃないな……むしろ彼は人だな。どういう訳かブタのような姿をしてるが、人に理解されぬ力でそのような姿になった……そう仮定すると、良かろう。)」
「あの領主様?」
「あぁ~済まない。イベリコくん。君はモモ君の母ぎみと同じタイプの人間のようだ。おっと、いい、私がそう思うんだ、そうしといてくれ。」
領主様は今、俺の事をハッキリと人扱いした。…………ありがとうございます。
「恐縮です。」
礼をわきまえてる。ますます気に入ったな。俺は着いている。拡大計画に乗って、このような旨い話があるわけがないと思ったが、神が遣わした者かも知れない。
「早速動いてくれ。ここに書かれている通りなら、施設も土地も確保してあるし、……ん!? 送迎馬車!! おいおい、こんな物まで用意してたのか君は?」
「通園に一時間以上も掛かる子もいますし、それだと危険や来るだけでクタクタになってしまいますからね。世界樹の木材で作った馬車ですので疲れ難いですよ。」
ニコニコして話す俺を、セゾンさんまで驚いた顔をしている。
「あははははは、いいね。そのトコトンやるところ、気に入った。では早速明日に一名、紹介状を持って行かせるから、教育を開始してくれ。よろしくなイベリコ君。」
手を出して来たので、デュラハンボディから降りて鼻で握手した。
「パパ~……もうそろそろいい?」
こっそりとお部屋に忍びこんでいたルーちゃんが俺をヒョイと掴み上げる。
「頼めるかい? イベリコ君。」
「喜んで!」
この日はルーちゃんとモモと一緒にずっとお屋敷でご厄介になった。
どうしてこうなった…………
△▼△▼△▼△
ちゃお~
保育園、本格的に始動だね。ゼウスのおっさんも君の事を気にかけて、俺にめんどくさい仕事を回して来たよ。
今日から来る二人の新人の内、片方は伝説級の凄腕の殺し屋、別名「漆黒の牙狼」と呼ばれた殺戮者だから気を付けてー(棒)
教えてあげてもいいんだけど、それじゃあつまらないしね。あっ、正解したらまた報酬出るから頑張ってね~
信託クエスト⇒殺し屋に素性を吐かせろ!
*報酬⇒ブタ箱にトイレ(区分け個室)機能を付与
▼△▼△▼△▼
で、紹介状を持って荷物をぶら下げた20代の女性が二人、俺の前にいる。
「領主様のご紹介で上がりました。リニアと申します。よろしくお願いします。」
「同じく領主様のご紹介で上がりました。アクセラと申します。よろしくお願いします。」
この内のどちらかがとんでもない娘らしい……あんの駄神の奴、ふざけてる。子供達の命が掛かってる以上、俺が必ず見つけてやる。
こうして、面接(取り調べ)が始まった。




