第百三十五話「レウスの大冒険」
ガチャッ
「追加です」
「む、ジョゼフか……」
「リュウリュウ……カエデにミノリ、ソージにサイまで……」
「てんめぇ、このソージ様をこんなところに入れやがって!
俺様の剣を、辛糖・甘之助を返しやがれ!」
辛いのか甘いのかどっちなんだよ。
「む……」
「ド、ドン様……」
「ん……て、てめぇっ!?」
「どうやら実力まで隠していたようだね。
これは……私でも敵わないな」
「この剣、グロウストーンが10個入ってるんです」
「な、何だよそれ……」
「フハハハハハハッ!
……いや、これは予想外も予想外」
「いや全く……驚きの連続ですな」
「創始者達が勝てないはずだよ」
「お、俺様は信じたわけじゃねーかんな!」
「スン、どんな感じ?」
「きゅっきゅきゅきゅーい!」
「へぇ、リュウリュウさんが皆をまとめてくれてるのか」
「は、話せるのかね?」
「ある程度はですけど」
「どうだレウスは凄いだろ!」
「キャスカ君、鼻水を拭いたまえ。
レディーはそういう所にも気を使う事が出来てこそ、旦那に気を使う事が出来るのだよ」
「だってさ?」
「……」
いや、「くぴ?」って顔をするなよ。
今リュウリュウの見せ場だったろうが。
……しゃあねぇな、話題転換だ。
「退屈してませんか?
何も無い所で申し訳ありませんが、今しばらく――」
「いや、スン君の「レウスの大冒険」というのがなかなか面白くてね、案外退屈はしないものだよ」
「…………」
「きゅーい♪」
とりあえず天使。
「これから番外編の「狂神デュークの狂った日常」というのが楽しみでならないよ」
「あ、はい」
「しかし……」
「しかし?」
「あーる18、というのはどういう意味なのだろうか?」
あ、スンに変な事教えてすみません。
「そういや、レウスの大冒険はあーる15だったな?」
「難しいわね」
「でも面白かったです」
「私もそう思いました!」
「では私も楽しみにさせて頂きましょう」
ガチャッ
「……お邪魔します」
「「「リッキー!?」」」
「これだけの人がいたんですね……」
「どうですか、決意の方は?」
「やはり少し怖いので、片目から……お願いします」
「了解しやした」
「「「片……目?」」」
「じゃあ左目からいきましょうか。
ちょいとそのままでいてください」
「は、はいっ……」
ポォ……キィイイイン
「………………ほい、どうすか?」
「…………ぁ……っ!」
「ゆっくりでいいすからね」
「はは……光が……」
「大丈夫ですか?」
「はい、懐かしい光が……」
「おし、それじゃあ左目が慣れたら右目も治しましょうか」
「はい!」
「ほ、本当に見えてるのかね?」
「えぇ……夢みたいです」
「スンボードに書いてあったレウスの大冒険の話と一緒……だと?」
「す、全て真実なのでありますね!」
「きゅーい!」
「どーだ!」
天狗スンと鼻水キャスカ。
鼻繋がりで、似た者同士。
「あらあらあら〜?
渋い男にちょっと渋い男、腹にイチモツありそうなイケメンに可愛い男の子♪
あ、そこのおじさんはタイプじゃないの、ごめんね〜♪」
「私の事でありますか?」
「お前も台無しだよ、マカオ」
「あら、何の事かしら〜?」
「いや、こっちの問題だ」
「なるほど、これが騏驎本来の姿か」
「き、きめぇ……」
「気が合いますねソージさん」
「出発の挨拶に来ただけよ〜」
「「出発?」」
「あぁ、リッキーさんにルミさんの居場所が聞けたので、マカオにチャッピーとルミさんを連れて来てもらうんですよ」
「それじゃあ行ってきま~す♪」
「気をつけてな」
「は~い♪」
パタンッ
「わざわざこの場で言うメリットはないだろうに……」
「ここまで来て隠し事はしたくないでしょう?」
「全てを公にするのもどうなのかね?」
「まぁ、そこは不器用なもんで……」
「ふふふ、して、次なる一手はどうするつもりなのだね?」
「レッドさんとお話しに行きます」
「ほぉ、それは何故かね?」
「レッドさんは俺の事を知ってて黙認してくれてますからね。
そこからガディス派閥に手を付けていきます」
「ふっ、そう上手くいくものかね?」
「第5剣士部隊副官のエレンさんさえ気を付ければいけるかと」
「…………」
「はぁ、なんでエレンなんだよ?」
「エレンさんは、おそらくタジョウマルさんですから」
「「「なっ!?」」」
「初耳ですよ、リュウリュウ?」
「すまないジョゼフ……」
「リュウリュウ様、タジョウマル様が……なぜ第5剣士部隊にいるのですか?」
「ザーボンさんの監視ですかね」
「……欺けぬ相手もいるみたいだな」
「全部は話しませんが、良い手打ちが出来る様に進められればいいです」
「ど、どういう事でしょうか……」
「サイさん、派閥争いって実は大変だったりするんですよ」
「誰しも安定した足場は欲しいものだよ」
「リュウリュウさんは飛行魔石持ってるじゃないですか」
「ハッハッハッハ、確かにそうだね。
さてさて、レウス君の作る世界で私は何を成すのかねぇ」
「一番面倒な役を押し付ける予定です」
「ほぉ?」
「王になって頂きます」
「「「ぷっ……はっはっはっはっはっ!」」」
「はっはっはっは、囚人の敵を王にするのかねっ?」
「えぇ、その手腕は勿体ないので」
「それは高く買われたな」
「そんじゃ俺はどうするんだよ?」
「ソージさんはそうですね……魔人門の統括をやってもらいたいですかねぇ。
その啖呵と胆力は、魔界の人間達と渡り合うのに必要だと思いますから」
「ちと危ねぇ場所だが……そこのボスってのが中々良いな」
「私はどうなるでありますか!」
「サイさんにはミナさんと協力して、教育者になって頂きたいですかね。
硬さと柔軟さを知った2人なら、未来を預ける子供達の成長の助けになるかと思います」
「おぉ、楽しそうであります!」
「なので頑張ります」
「レウス君は……」
「はい?」
「……いや、何でもない」
えぇ、本当にどうするんでしょうかね!
「さて、俺も出掛けてきます」
「うむ、気を付けたまえ」
「……敵なのでは?」
「君が死ぬと事態が悪化しそうだからね」
「あはは、それじゃ行ってきます」
パタンッ
チーン!
《件名:中央国側の》
《北の国への関所にて待つ》
あらレッドちゃん早いわね。
「あれ、ケント君お出かけかいっ?」
「……なんすかその丁髷は?」
「東の国、アグニスの伝統だってさっ」
「服も紋付き袴に……雪駄か」
「礼服ってやつだよっ」
「黒で良い感じなのに……緑髪ってどうよ」
「あははは、少し恥ずかしいねっ」
「この紋は何ですか?」
「ユグドラシルの木が描いてあったんだけど、枯れちゃったから黒で塗りつぶしたんだよっ」
「大それた事しますねぇ」
「そういえば、これからどこに行くんだいっ?」
「今からレッドさんとこに行くんです」
「僕も行くよっ」
「え、これから南の国に行くんじゃないんですか?」
「ケント君に見せに来ただけだよっ」
「彼女ですかあなたは」
「……僕は男だよっ?」
「……準備してきてください」
「行ってきますっ」
全く……なんであの人――
「ただいまっ」
考える余裕がねぇよおい。
おし、親書も持ったし大丈夫だろう。
「さぁ行こうっ」
「へーい」
はい、中央国側の北の国への関所であります!
……こいつぁビックリ。
「やぁドン君!」
「なんだレッドが待ってたのはお前ぇだったのか」
「……すまない」
「付いて来ちゃったんですか?」
「ここで待ってたら偶然こいつらが現れてな」
まぁ話す訳はないか……。
「デュート君のその頭は……」
「あ、丁髷のままじゃないすか」
「あはははは、急いでたからねっ!」
「で、こんな所で何をするんだい?」
「密談の予定だったんですが、ぶち壊しになってしまいました」
「はっはっはっは、密談ってのを普通バラすかぁ?」
「はははは、ドン君は変わらないね!」
「いえ、この際なので2人も密談に加わって頂きます」
「……早くないのか?」
「現状が現状なのでハッキリさせちゃった方が良いと思いまして」
「「ハッキリ?」」
「えぇ、実は俺、反抗組織の一員なんですよ」
「……冗談にしちゃ笑えねぇぞ?」
「気付きませんか……俺の実力?」
「あ……」
「ちっ、怠ったな」
「身構えなくても大丈夫です。
殺すつもりも戦うつもりもありませんから。
現にレッドさんも生きてるでしょう?」
「レッド、てめぇ……」
「レッド!」
「……損な役回りだな」
「ガディスさん」
「……なんだい?」
「前に俺に言ってくれた、平和を願う気持ちに偽りはないですよね?」
「こちらから君に、改めて問いたいくらいだよ」
「……お前ぇは休戦の使者って事か?」
「んー、終戦の使者ってのが正しいかなっ」
「あ、それ良いですね、採用しましょう」
「ありがとうございますっ」
「ったく、ふざける状況じゃねぇだろうが……」
「すみません、こういう所は子供なもんで」
「なんか不快に感じねぇのが不快なんだよ」
「ドン君、その……密談というのは?」
「レウスです」
「は?」
「俺の名前はレウス・コンクルード、こちらはデュークさんです」
「「…………」」
「……事実だ、エイミの召喚獣に確認させた」
「て、転生者ってやつ……か?」
「どうやらそうらしいね」
「これは天老アークに作らせた親書です」
「……見ても良いのかい?」
「それは3人宛なので大丈夫ですよ」
「「3人?」」
「平和を目指してるガディス派から攻略していこうと思いまして」
「攻略っておい……」
「リュウリュウだって最終的には平和を願ってるはずだよ?」
「諸事情がありまして現在勾留中です」
「「なっ!?」」
「大丈夫です、当人が納得してくれてますから」
「納得って……」
「他にもカエデさん、ミノリさん、ジョゼフさんにリッキーさん。
剣士だとソージさんとサイさんですね」
「攫い過ぎだっつーの」
「そうですね、早く解放したいもんです」
「解放してくれるのかい?」
「勿論ですよ、終戦目指してるだけなんですから」
「1人も殺さず終戦出来ると思ってんのか?」
「皆が納得してくれればそれは可能でしょう?」
「「「納得しなかったら?」」」
「妥協してもらいます」
「出来ると思うのかい?」
「妥協したくない人の要望を聞けば良いんですよ。
妥協してもらうのは、心の広い人の方です」
「我儘な人だけが有益になってしまうよ?」
「それが世界の理ですが、我儘な人に融通を利かすのは「その時」のみです。
後々じわじわと真綿で首を締めるように……アレします」
「……はっ、これが魔神か!」
「ははは、この僕が少し震えたよ!」
「……実力も申し分ない」
「3人がそれに納得して頂けたなら、アジトまでご案内しますが?」
「あ、ケント君、ちょっと待ってねっ」
「……お願いします」
ヒュンッ
「ぐぁああああっ!!」
「「「なっ!?」」」
「エレンさんが……いや、タジョウマルさんが2人をつけてたみたいですね」
「なんだと!?」
「エレンさんがタジョウマル!?」
「……初耳だな」
「確かに今のは男の声だったな」
「久しく聞いていない声だったね」
「……やはり本人か」
「ケントくーんっ♪」
顔に返り血浴びながら手を振るなよ。
「……あれが狂神か」
「はは、震えが止まらないよ」
「……実力すら測れん」
はいはいわかりましたよ。
はい、タジョウマルの魔石は全て強奪し、タジョウマル含むガディス達を連れてアジトまで戻って参りました!
タジョウマルは中肉中背の黒髪丁髷男でした。
顔は日本人の彫が深い人って感じだな。
エレンに化けてたせいで、口紅がついてて少しアレだ。
現在は気絶しております!
ヒュンッ……トッ
「ここです」
「お疲れ様でござ……なっ!?」
「お疲れ様ですファンネルさん」
「お疲れ様ですっ」
「へぇ、前に会った時よりかなり強くなってるじゃねぇか?」
「ザ、ザーボン殿っ……」
「きっと良い師でも出来たんじゃないかな!」
「スンに任せてますから」
「師匠は大魔王だったのか!」
「ほぉ、ダンジョンを隠れ家にしているのか……」
「レウス殿……これは一体?」
「いよいよ終戦に向けて動き始めたって事ですよ」
「か、かしこまりました!」
「アークとスンとラーナを会議室へ、それとスンにリュウリュウさんを連れて来てもらってください」
「承知したでござ――」
「レェエエウスゥウウッ!」
ゴゴンッ
うっさいのが来たわ。
「ようやくゆっくり出来るね!」
「ようやく始まったんだよ」
「レウス~……あらやだ、レッドったらアタシに嫁ぎに来たの~?」
「…………」
ドサッ
「こ、ここは一体……」
「「ルミ!?」」
ゴチャゴチャしてきたな……。
「レウス聞いてよ、ご飯が1日1回なんだよ!?
我、もうお腹空いちゃって空いちゃって大変だよ!」
「レウス~、なかなか美しいわ~って思ってたら、あのルミって子、女なんですって~♪
勿体ないわよね~?」
「レウス、お好み焼きが出来たぞ」
「レウスさん、僕も手伝ったんですけど熱々でおいしいですよ!」
「ガラードさんがなかなか食べさせてくれないのが難点ですけどねぇ」
「あらレウスちゃんチャッピー、お帰りなさい!」
「オォバルスゥウウッ!」
「ふふふ、相変わらずステキね」
「レウス君、昨日スンちゃんと一緒に寝たんだよ!」
「あっ、ムース、レウスは我と話してるんだ!」
「会員番号0号殿は俺と話してるんだ!」
「ちょっとレウス聞いてるの~?」
「レウス、お好み焼きはもうないぞ」
「何食べちゃってるんですか!
僕の分、小分けにしておいたのに!」
「あ、それは私が頂きましたぁ」
「な、いくら舞虎さんでもそりゃあんまりですよ!」
「私も頂いたわよー」
「拷問ですよオバルスさん!」
「そこの包丁でも食べればいいじゃな~い♪」
「僕の胃はマカオさん程強靭じゃないんです!」
「ん、僕の事呼んだかいっ?」
「よよよよ呼んでないですっ!」
「やかましいわっ!!」
「「「「…………」」」」
「ははは、これが魔物使いなんだね!」
「……耳が痛いです」
「ルミの言う通りだぜ……」
「……面白い奴等だ」
やっと大人しくなったか。
「レ、レウス!
聞こえてるなら我の話くらい聞いてくれたっていいじゃない!」
「レウス、やかましい料理というのに挑戦してみるぞ」
「やかましいで思い出しましたけどスズメやトルソはまだ起きないんですかねぇ?」
「あぁん、もっと言って~ん♪」
「うわ、ドン引きですマカオさん!」
「バティラちゃん、あれも一つの愛のカタチなのよ」
「お前達うるさいのだ!」
「カカカカカ、カコカコッ」
「きゅっきゅい?」
「やれやれ、何の騒ぎかと思ってくれば……」
「あれ、利休も起きてたんだ!」
「チャッピーは一番だったみたいだな」
「わ、我が一番んんっ☆」
「わふっ……わふっ!」
「レウス様、お戻りになられたのですか」
「レウス、こんなに騒いでいいのか?」
「スンちゃん、こっちこっち!」
……チャ、チャンネル替えたい。