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第百十五話「副官会2」

 コンコンッ


「入りたまえ」

「失礼します」


 ガチャッ


「初めましてドン様、第3剣士部隊副官のサイと申します」

「初めまして、俺を知ってるんですか?」

「以前一度ギルド内でお見かけしました」

「へぇ……」

「確かその時、ドン様は沢山のパンや飲み物を沢山抱えておりました」


 パシリ編の時に見られたのか。


 サイ……人間でおそらく40代後半。

 かなりM字が進行……侵攻した短い黒髪だな。

 短髪というよりかなり短い、2~3センチくらいしかないんじゃないだろうか?

 身長は160センチ前後で、体型は普通。

 普通のおっちゃんって感じだが、二重なせいかお目目だけパッチリって感じだ。

 むぅ、付け睫毛を付けてみたい気分だ……。

 実力は……ランキングの10位後半ってとこか?

 ミカエルと同程度って感じだろう。


「では、いつもの様に報告してくれたまえ」

「はっ、いつもの様に問題無しであります!」


 リュウリュウが企画してるから、周りが指摘出来ないのか本当に問題がないのか……。


「流石第3剣士部隊ですね」

「いや、第3剣士部隊も問題はかかえているんだよ」

「それはどんな問題なんで?」

「当ててみたまえ」

「さっき考えたのはリュウリュウさんが企画してるから、周りが指摘出来ないという遠慮……ですかね?」

「うむ、その通りだ」

「自己分析としてはどうなんです?」

「ほとんどをサイに任せているからな、部隊の面倒を見切れていないのも問題の1つでもある」

「サイさんの自己分析はどうなんです?」

「問題無しであります!」

「……これも問題の1つでもある」

「っぽいですね」


 もはや盲信といって良い程の信者なんじゃないか?

 ダメ元で……。


「ちょいとミナさんを――」




 呼んでみました!


「リュウリュウ様、ドンさん……それにサイ様まで?」

「ミナ、忌憚のない意見を聞かせて欲しい」

「はい、なんでしょうか」

「第3剣士部隊の問題点があれば聞きたいのですが?」

「あるはずもありません」


 即答じゃねーか。

 考える素振りすら見せずにこれか。

 マインドコントロールでもされてんのかおい。

 がしかし、リュウリュウも聞きたいみたいだし、その線は薄いか……。


「熱狂的ですね」

「どうしたものかね……」

「第3剣士部隊に長くいる人より、入隊して間もない人に聞いた方が良いんじゃないですか?」

「ふむ、それも一つの手か……」

「……ドンさんは、なぜ第3剣士部隊に問題があると思っているのでしょうか?」

「ミナ、やめなさい。

 これは私の意思だよ」

「リュウリュウ様、私も伺いたく思います」

「サイもか……」

「問題がないと言い切れる……これだけで問題だからですよ」

「「……どういう事でしょうか?」」

「少し強く言ってしまいますが、問題がないと言い切れるのは、2人は周りが見えていないという事です」

「……よくわかりません」

「サイさん、自分の短所を言えますか?」

「私の短所……ですか?」

「無ければ別にいいですけど?」

「いえ、私はまだまだ修行不足でリュウリュウ様の足元にも及びません」

「ありがとうございます」

「ミナさんはこの事に関してどう思いますか?」

「事実であると思います」

「では、ミナさんは何故この事を指摘しなかったんですか?」

「それは……サイ様自身の問題ですし、サイ様の前で言って申し訳ありませんが、取るに足らない事だからです。

 現にサイ様自身もそう判断されているのではないでしょうか?」

「その通りです」

「勿論そうですが……リュウリュウさんは「こういう事」を聞きたがってるんですよ」

「「…………」」


 ちょいと強引だが、これなら伝わるだろう。

 まるで子供に言い聞かせてるみたいだが、事実この2人はリュウリュウしか見えない状態だから仕方ないか。


「さぁサイ、ミナ、教えてくれるかね?」

「……取るに足らない事かと存じますが、部下の複数名が、部隊長であるリュウリュウ様を見掛ける機会が少なく不安だと言っておりました!」

「……同じく取るに足らない事かと存じますが、以前私が第3剣士部隊に在籍していた時、魔術の訓練量を増やして欲しいと申告がありました」


 まぁ副官会と関係ないとは思うが、こういった問題は叩けば出てくるもんだな。


「うむ、確かに最近部隊の連中の前に顔を出せてないのは事実だな。

 気をつけると共に、訓練に関しては今一度考えてみよう」

「「……では失礼します」」

「サイさん、ミナさん」

「「はい」」

「ありがとうございます」

「「…………」」


 パタンッ


「……ふふふ、あの2人のああいった顔は初めて見たかもしれんな」

「やっぱ入隊当時からなんですか?」

「2人とも優秀ではあるが堅過ぎていかん」

「堅過ぎる部下を俺に回してくれたんですか?」

「あぁ、良い方向に行ってるみたいだね」

「確かに多少堅さはとれてきましたけどね」


 さて次は第4剣士ターコムの副官だな。


 コンコンッ


 休憩が欲しいところだが、突っ走って落ち着いた方が良いような気がするな。

 疲れてるところ悪いがお付き合い頂きたい。


「入りたまえ」

「おじゃましまーす」


 ガチャッ


 やたら陽気な声だったな。

 こいつぁ……おそらくハーフドワーフ。


「第9剣士部隊の部隊長のドン君だ」

「初めまして、ドンといいます」

「初めましてぃ、ミルクと申しまーす!」

「元気な方ですね」

「ミルクは第4剣士部隊のムードメーカーなのだよ」


 ミルク……褐色肌の薄いピンク髪のショートボブ。

 黒い革靴にロールアップの迷彩パンツ。

 七部の黒いTシャツに迷彩柄のハンチング帽子。

 かなりの童顔だが、歳は100歳はいってるんじゃないか?

 身長145前後で細身、瞳の色は赤茶色。

 そして特筆すべきはそのパイだ。

 うーむ……キャスカレベルだな。

 実力はガクっと下がってランキング30位前後。


 実動部隊じゃないって事なのかしら?


「ターコム率いる第4剣士部隊は衛生部隊なのだよ」

回復(ヒール)部隊って事っすか」


 丁度聞きたい事があるからこの流れなら聞けるかしら?

 資料室にあった資料からなら突付けるな。


「そういえば回復(ヒール)の剣技って数種類あるんでしたっけ?」

「ほぉ、詳しいね」

「資料室で少し勉強したんですよ」

「あたしが話そうじゃないか!」

「ふふふ、お願いしようか」

「まず普通の回復(ヒール)、これは右手と左手で可能なんだ。

 そして両手での回復(ヒール)……とまぁここまでは普通の回復(ヒール)になるんだよ。

 更に上位の回復剣技がある、それが自己再生と自動回復(オートヒール)だ!」


 やはり持ってるのか……。

 しかし一体どうやって?

 協力者がいるようには思えないが…………協力者?

 ……協力させれば出来るって事か。

 おそらく召喚獣である皆に命令してパクったんだろう。

 そうなると浸透回復(ヒール)と間接回復(ヒール)はどうなんだ?

 そこに関しては情報規制があるのか?

 皆に教えてたから知っててもおかしくないが……。


「なんか便利そうな剣技ですね」

「部隊長なら教える事が出来るが、どうするかね?」

「自分で剣技開発するのが好きなので、お断りしておきます」


 奥義書をもらったら燃えちまうしな。


「ふふふ、限界を感じたら言うといい。

 いつでも教えるからね」

「ありがとうございます。

 しかし、副官の方も知ってるもんなんですか?」

「ミルクには特別に許可をしているのだ」

「特別……って事は何か特別な理由があるって事ですね?」

「そういう事なんですよ!」

「ミルクには特殊な才能があるのだよ」

「才能?」

「人より回復力が強いのだ」


 わお、同士発見☆


「へぇ、そりゃすごいですね」

「えっへん!」

「って事は戦闘時の回復サイクルの効率化を考えて、ミルクさんに自己再生と自動回復(オートヒール)を教えたと」

「無論、戦闘への参加は極力控えてもらう様には指示してるが、彼女が傷を負った場合の危険性を考慮しての事だ」


 ふむ、確かに俺でもそう考えるだろうな。

 もし戦闘になったら俺が援護回復に徹するだろうからな。


「さて、回復(ヒール)に関しての説明はこんなところか」

「ですねぃ!」

「わざわざありがとうございました」

「にゃははは、構わないですよぅ!」

「ではミルク、今回の副官会の収穫を聞こうか」

「はい、医療班の増強が必要ですね」

「やはりそこか……」

「前々からわかっていたと?」

「うむ、ユグドラシルの木が枯れて約1000年。

 医療に力を入れてきたが、やはりその進歩は他と比べると遅れてしまってるからな」

「確かに怪我は回復(ヒール)で治せますが、病気となると話は別ですからね……」


 確かにこれは深刻な問題だよな……。

 医療漫画位しか読んだ事ないから、医療技術の進歩には協力出来ないしなぁ。

 今までユグ葉でなんとかなってたものだが……(オーラ)でなんとか出来るかしら?

 ふむ、帰ったら少し考えてみるか。


「これに関しては、俺には難しいですかね」

「ふふふ、ドン君も万能ではないという事か」

「俺を何だと思ってるんですか?」

「革命児……といったところかな?」

「褒め言葉として受け取っておきます」

「リュウリュウさん、この問題どうしましょ?」

「今度の部隊長会議に上げて対策を考えよう」

「わっかりましたぁ!」

「うむ、本日はご苦労だったね」

「いえいえ、では失礼しまーす!」


 パタンッ


「……そういえばデュートさんから聞いたんですけど、ユグドラシルの木が枯れた理由って未だ不明なんでしたっけ?」

「うむ、あの地が戦火に巻き込まれたのが一番の理由だとは思うが、生命力溢れていたあの木があれしきの事で枯れるとは思わなかった」

「って事はリュウリュウさんはあそこで戦った事があるんですか?」

「かなり若い時だったがね」

「ほえー……」

「あの世界大戦に興味があるのかね?」

「何がどうしてああなったかが、結構あやふやですからね。

 原因や、相手がどう思って、こちらがどう思って戦ったのか……そういう所を詳しくは知りたいと思ってます。

 ただ、それが秘匿とする部分なのであれば仕方ないですけどね」

「……勤勉とはこの事を言うのかもしれんな。

 別に秘匿としている訳ではないのだ。

 無論下の者には口外出来ないがね。

 ……聞きたいかね?」

「聞いて良いのであれば……ですけど?」

「『レウス・コンクルード』、この名前を聞いた事があるかね?」

「世界大戦の引き金となった人物……ですよね」

「ふふふ、さすがに知ってるか」


 俺俺。


「彼は魔物との共存を望んでいたそうだ」


 なうなう。


「召喚獣の大半はレウスの友らしい」


 全部全部。

 ……いや、知らない奴も召喚獣になってるかもだしな。

 大半であってるかもしれん。


「しかしレウスは魔王と共謀し、世界に勇者への不信の種を植え付けたのだ」


 ……あながち間違っていないかもしれんな?

 皆の不安なりを取り除こうって時に死んじまったからな。

 仕事が途中だったのならこうなってしまっても仕方がないか……。


「そこに付け込んだのが我々の祖先なのだ」

「つまりレウスの名を使い、小さな火種を大火へと変貌させたと?」

「先祖達は「先祖の仇討ち」という名目で集い、力を蓄えていた。

 非道な作戦を立て、それを実行したレウスを憎み、そして変化を恐れたのだよ」


 まぁあれは俺も良い思い出ではないがな。


「って事は、レウスはリュウリュウさんの先祖に何かをしたと?」

「うむ、しかし…………むっ」

「第5剣士部隊の副官……ですね」


 コンコンッ


「はいりたまえ」

「失礼致します」


 ガチャッ


「……第9剣士のドン君だ」

「初めまして、ドンといいます」

「エレンと申します、以後お見知りおきを」

「よろしくお願いします」



 エレン……少し黄色がかった茶髪でベリーショートが似合う女性だ。

 人間で、おそらく50歳を超えてるオバチャンだ。

 イメージは指示棒を持ってる教頭先生。

 身長は155センチ前後ってとこかしら?

 実力は…………あれ、今の俺より少し弱い程度だな?

 多分ランキング12位とか13位ぐらいだな。

 ソージより強いが、何故候補に選ばれなかったんだ?

 年齢的な問題なのかしら?


「さぁエレン、今回はどうだったかね?」

「強いて挙げるならば、「部隊長が怖い」……これくらいでしょうか」

「はっはっはっは、ザーボンにはもう少し愛想をよくする様に言っておこう」

「確かにザーボンさんをあまり知らない人は怖いと言うかもしれませんね」

「あれでいて中々良い方なのですが……」

「うむ、それはわかっておる。

 それ以外はないのだな?」

「大丈夫かと思われます」

「わかった、ありがとう」

「では、ご機嫌よう……」


 パタンッ


 おーし、次くらいで終わりそうだな。

 あれ、一番最後の副官って……。

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