第百十四話「副官会」
チーン!
《件名:ブレイブアンデッドでーすっ》
《なんか今日「副官会」ってのがあるらしいよっ。
強制参加らしいし、とっても面白そうだから行ってきまーっすっ》
ノリノリだなあいつ……。
はて、副官会?
何をするんじゃろ?
《件名:ドンでーっす》
《副官会ってのは何をするんですか?》
俺もとりあえず着替えて本部に向かうか……。
チーン!
《件名:どうやら》
《リュウリュウさん企画の意見交換会らしいよっ》
ほほぉ、つまり現在ある問題点を見直したり指摘し合ったりする会って事か。
……いや、派閥同士で腹の探り合いか?
相手を褒めちぎって終わるパターンも想像出来るな?
《件名:参加してみたーい♪》
《部隊長は参加出来ないですよね?》
まぁダメ元で聞いてみるべ。
チーン!
《件名:わからないから》
《リュウリュウさんに聞いてみたらっ?》
そりゃそうだわ。
《件名:はー》
《い♪》
第9剣士になった時に交換したヒューマンコードで……。
《件名:おはようございます!》
《副官会というものに興味があります。
見学とかは難しいでしょうか?》
おーし、武器の装着完了!
チーン!
《件名:見学は無理だが》
《副官会議の報告に同席する位なら可能だよ》
ふむ、まぁ俺が参加したら副官会議にはならないだろう。
とりあえず行きますか。
はい、第3剣士リュウリュウの部隊長室です!
「ふふふふ、嬉しいものだね」
「へ、何がですか?」
「実務に雑務、そしてこういった些細な会議にまで興味を示してくれるとはね」
「知っておいた方が良い事が多いので、出来るだけ吸収したいと思ってまして……」
「うむ、とても良い事だと思う。
こんな事なら、あの時レッドに無理を言ってでも私の部下にすれば良かったと思ってるよ」
「地位には全く興味ないですけど、命令されるのはあんまり好きじゃないんですよ」
「はははは、ドン君らしいね」
「皆が仲良くやれるのが一番ですから」
「ほぉ、若いのにやはり考えが壮大だな」
「今の一言がですか?」
「君のその「地位」にいてその発言は、世界統一平和の事の様に聞こえるよ」
「統一しなくても平和にする事が出来ると思いますよ」
「ほぉ、一度そういった話もしてみたいものだね」
「リュウリュウさんの都合に合わせるのでいつでも言ってください」
「はははは、空気を読むのもうまいみたいだね」
「外にどなたかいらっしゃったみたいなので……」
「うむ、おそらく第1剣士ガディスの副官「ティック」だろう」
ふむ、第1から順番に報告に来るのかしら?
コンコンッ
「入りたまえ」
「失礼します」
ガチャッ
「後日正式紹介する予定だが、第9剣士のドン君だ」
「ティックです、ガディス部隊長から話はよく伺ってます。
お会いできて光栄です!」
「ドンです、宜しくお願いします」
ティック……金髪で短髪の色白男で、おそらくハーフエルフだな。
歳は……見た目が30歳後半位だから700歳ちょいってとこか?
青髭がやや目立つが、しっかりと剃ってる。
体格はやや肥満で背は170センチ前後。
瞳は灰色で顔は優しそうなおっちゃんって感じ。
実力は勇者ランキングの20位前後ってとこかしら?
「うむ、では本日の副官会で第1剣士部隊にあげられた問題点はなんだね?」
「やはり私を含むメンバーの実力不足でしょうか」
「詳しく聞こう」
「1つはガディス部隊長の桁違いの強さ、そしてもう1つは私の指導力に関する問題です」
ふむ、つまりあれか、ガディス1本だけで他が見劣りしてしまうと。
確かに第1剣士部隊ならそれだけ期待もされるだろうし、プレッシャーもあるわな。
「ガディスに関してはもはや仕方の無い部分ではあるな。
しかしティックの指導力……自己分析としてはどうなのかね?」
「勿論指導する事は可能ですが、人心が付いてきません」
「人心か……ついてたなティック。
本日はそれに詳しい人物がここにいるぞ」
「はっ、是非ご意見を伺いたいと思います!」
「へ?」
「ドン君ならどうするかね?」
キラーパスかよ。
進言しても良いけど、そうすると神者ギルドの戦力が上がっちまうんだよな。
んー、確かに部隊長以外からの信も必要だし、突っ込まず適度なアドバイス……だな。
「えーっと、人心ってやっぱりその人の行動とその結果で付いてくるものなので、狙ってってのは難しいと思います」
「確かに……そうですよね」
「現段階の問題の摩り替えみたいな現象が起きてるので、整理しましょう」
「摩り替えですか?」
「結局のところ1番の問題は「ガディスさん以外の第1剣士部隊が弱い」という事にある。
そうですよね?」
「恥ずかしながら……」
「人心が付いてこないなら、人心があって指導力のある人に任せれば良いんですよ」
「ガディス部隊長にお願いするという事ですか?」
「それでは「部隊長に頼ってるだけの副官」という構図になってしまいます」
「では、どうするのかね?」
「そう、金です」
「「?」」
「他の部隊長に指導を依頼するんですよ」
「金を支払って……という事か」
「幸い部隊長の皆さんはお金が大好きなはずです」
「ふふふふ、ウェポンエンチャントの件か」
「そしてその情報を副官未満のメンバーには伝えない事が重要です」
「その情報規制に何の意味が?」
「お金を支払って依頼してると下の者が知らなかった場合、その下の者からティックさんはどう見えるでしょうか?」
「……なるほどそういう事か」
「…………あぁ、つまり私と部隊長との繋がりを下の者にアピール出来るわけですねっ」
「そしてそれが別の部隊長、更に複数人だと効果的だな」
「副官は副官室の媒体からダンジョン情報の入手が可能です。
魔石を手に入れ、それを売却すれば金銭的に困る事はないでしょう。
それにティックさんも訓練に加われば一石二鳥でしょう?」
「部隊長も喜び、ティックの実力向上とメンバーの人心掌握、更に他の部隊にも流用出来る。
一石二鳥どころではないな」
「リュウリュウさんが他の部隊長に「いくらなら他の部隊の訓練を手伝ってくれるか?」と打診して、平均的な数字を出し、それを決まりとしてしまえば部隊長も断れなくなりますからね。
それに部隊長の指導力や求心力にも繋がるでしょう?」
「ド、ドン様はそこまで考えていたのですかっ!?」
「そんなまさか。
話してるうちに「あー、これも狙えるな」ってなったのを口に出しただけですよ」
「最初からそこまで考えていたと言えば周りの信頼にも繋がるというのに、正直に話すとは……。
つくづく面白い男だな君は?」
「狙い過ぎはよくないです。
二兎を追う者は一兎を得ずですよ」
「狙わなかった故、今回は二兎を得た様だぞ?」
「あり?」
「素晴らしいご意見、感謝致します!」
「面白い内容だった。
早急に計画し、すぐに対応しよう」
「お願い致します!
…………では失礼致します!」
入ってきた時より超イキイキしてたな。
まぁ、この位ならアーク君も許してくれるだろう。
パタンッ
「今のリュウリュウさんの仕事だったのでは?」
「ふふふふ、ドン君の真似をしただけだよ」
「……適材適所ですか?」
「いや、「つくづく人頼り」だよ」
「あ、今俺使われた感じですね」
「はっはっはっは、悪く思わないでくれたまえ」
「まぁこの位なら構いませんけどね」
「うむ、今の一言、後悔するなよ?」
「……うまいですね、勉強になります」
「私の方も勉強させてもらってるよ……むっ」
「来ましたね」
「あぁ」
コンコンッ
「入りたまえ」
「失礼します!」
ガチャッ
おぉ、女性だ。
「……そちらの方は?」
「初めまして、ドンといいます」
「第9剣士部隊の部隊長を務めている」
「あぁ、先日アンチ様に喧嘩を売った面白い方ですね」
「出会い頭に殴られた気分です」
「ふふっ、皮肉ではありませんわ。
アンチ様も素直に面白い人だと仰ってました」
「第2剣士部隊副官のサーユ君だ」
「サーユと申します、以後お見知りおきを」
「よろしくお願いします」
サーユ……エルフで茶髪、髪は……低い位置でのポニーテールっていうのか?
なんていうのかわからんが、うなじ部分で一つにまとめてる。
オバサンって程じゃないが、350歳くらいか?
人間でいうところの35歳位かしら?
落ち着いてる感じなんだけど普通に毒を吐きそうなやや色黒の女性でございます。
実力は……やはり勇者ランキング20位前後ってとこだな。
「では第2剣士部隊の今回あげられた問題点を聞こう」
「これはデュートさんに進言頂いたのですが、やはり先日のジェイド君の件もあり、実働部隊の有り方について……でしょうか」
「ふむ、それに関しては現在収容施設の増強を検討しているので、今後は「成敗」と「捕縛」に分かれてくると思う」
「わかりました。
それと、これは別件なのですが……」
「構わない、話したまえ」
「先日のジェイド君の転属について、他のメンバーから質問攻めにあっています。
アンチ様にはまだ申し上げていませんが、先にリュウリュウ様にお話しておこうと思いまして」
「それは賢明な判断だね」
「どういう事です?」
「アンチはあれでいて感情の起伏が激しくてな、もしアンチの部下達がアンチを質問攻めしたのなら、数人の死者が出るだろう」
「あぁ、だからミナさんは俺に怖い者知らずって言ったのか」
「君の側にはデュート君がいるからね」
「あの人が近くにいれば大抵怖くないですから」
「同感ですわ。
デュートさんが最後に会議室に入って来たのですが、キングスさん以外の皆は顔が引きつっておりました」
まーた闘気むんむんで登場したな。
いや、デュークはデュークなりに考えているんですけどね?
しかしこの人――
「その中で冷静にその状況を見れたのなら問題あるまい」
「ありがとうございます」
うん、確かに状況分析の出来る人だな。
普通はマイガーみたいに蛇に睨まれたなんちゃらになるんだが……肝は据わってるみたいだ。
「さて転属の件だが……」
チラって俺を見るなよ……。
なるほど、これがつぐづく人頼りか。
うん、俺も違った手口だけどよくやってるわ。
「……わかりましたよ」
「ふふふ、なんといってもドン君が前例を作ったのだからね」
「期待してますわ」
「んじゃあまず、具体的にどんな質問なんですか?」
「主だった質問は「自分も転属出来るのか?」、それに「転属してもペナルティはないのか?」といったところでしょうか」
「……第2部隊が不人気なのはよくわかりました」
「ここにきて露骨になったな」
「前々からわかってたのに対処は出来なかったんですか?」
「全てが実力主義という根底は私一人ではなかなか変えられないものだよ。
ドン君の様な革新的な何かがなければ……ね」
ふむ、こいつもこいつなりに頑張ってはいるんだな。
政治的な謀略はともかくとして、神者ギルドを良くしたいとは思ってるわけだ。
勿論、結局は自分の為なんだけどな。
俺も勿論そうだ。
平和……究極のわがままだろ?
誰かの為とは言いつつも、「誰かの為に何かをする」ってのは結局はわがままにカテゴライズされるわけだ。
屁理屈みたいだけど、リュウリュウも自分の位置を更に良くしたいから、身の回りも神者ギルドも良い状態にしようとするわけだ。
俺もチャッピー達を助けたいから、世界も神者ギルドも良い状態にしようとするわけだ。
考えようによってはこれも聖戦なのか。
水面下の聖戦って感じだな。
さぁ、この転属問題だが…………。
「任期を決めましょうか」
「任期とは?」
「「この部隊で何年務めたら転属出来ますよ」ってのを決めてしまうんです」
「ほほぉ、しかしそうなると人気の部隊の人数が多くなり、逆に不人気の部隊の人数が少なくなってしまうが?」
「なので不人気の部隊を新人の受け皿に使います」
「なるほど、ある程度の期間はそれで補えるし、その新人が別の部隊に行っても更に新人が入ってくるな」
「勿論、不人気の部隊長の指導も必要になると思います」
「しかしその「指導」、誰が行える?」
「取り締まりはウチの部隊の仕事なんですよね?」
「……ふふふ、指導を取り締まりと言い換えたか。
確かにドン君の指導力と、デュート君の「睨み」があればかなりの効果を得られるかもしれんな」
「過大な評価だとは思いますが、努力はするつもりです」
「本当、面白い方ですね」
「先程リュウリュウさんにこき使われたので、リュウリュウさんをこき使ってやろうかと思いまして」
「はっはっはっは、確かに私の仕事も膨大なものになるだろう……がしかし、やりがいがある仕事ではある」
「こき使われてくれるそうですよ、ドン様?」
「仕返しが怖いもんです」
「ふふふふ、楽しみにしてなさい。
うむ、後程案件をまとめて、近いうちに各部隊に通達出来るようにしておこう」
「ありがとうございます。
…………では失礼致します」
パタンッ
え、第9剣士部隊まで遠くね?
とりあえず次はリュウリュウの副官か……。




