第百四話「ソージと掃除」
「お待たせしましたメロンパンっす!」
「おう、飲み込みがはえーじゃねーか」
「勿論っすよ!」
「こういうのは上下関係の認識が大事なんだぜ?」
「勉強になりやす!」
「あ、イチゴ牛乳買ってこいよ」
「了解しやした!」
甘党の美少年……そして腹黒。
ここまでベタなのは久しぶりかもしれん。
どうも神者ギルドの初仕事はパシリのレウスです!
因みにソージは……おそらく俺と同じ位の実力だ。
勿論、俺の完全装備の敵じゃないけどな?
んー、多分勇者ランキング17位とかそこら辺の実力だな。
「お待たせしましたイチゴ牛乳っす!」
「待たせすぎなんだよおめーは!」
「気をつけます!」
「おうおう精進しろよ?
俺あってこそのお前だかんな?」
「はいっ!」
「ったくよぉ」
「ソージさん、そろそろ夜も遅いっすけどどうするんすか?」
「使えないお前を俺が鍛える事になってんだよ。
野外研修行くぞおら」
剣士編改めこれがパシリ編か。
任せろ、復讐編は先になるだろうが必ずあるはずだ。
はい、エヴァンス北西の荒野でございます。
「ここら辺にトップレベルの魔物「ローズクリスタル」の出現報告があがってきている」
ほぉ、ローズクリスタルっていったらフォースレベルだった奴だな。
前のキマイラヒドラの件もあるが、やはり色々変わってるって事か。
ローズクリスタル……中央にクリスタルの核があり、それを無数の茨で囲ってるバラの食人花だ。
頭と思われる中央の一番上にでかい赤いバラがあるわけだ。
一番外側の花びらが特にでかくて、弱い人間ならあっという間にソレでぱっくんちょだ。
俺の話を聞かない人格のない魔物でもあるな。
因みに核のクリスタルは地味に高く売れる。
西に100メートルあたりに発見。
……大きさは3メートル位か。
「おーし発見、核のクリスタルを傷つけず倒してこいよ」
研修なのにいきなり本番かよ。
「了解しました!」
戦闘開了!!!
「終わりやした!」
「お、おう……なかなかやるじゃねーか」
「恐縮であります!」
「おし、そのクリスタルをよこしな」
「はぁ……」
「さっさと渡しゃいいんだよ!」
「へい」
ほぉほぉ、こういうのも横行してるのか。
まぁ今回は研修だしいいか。
クリスタルは大体50万~100万位で取引されてるはずだから……良い小遣い稼ぎにはなるわな。
それにこいつがローズクリスタルの情報を握ってたんだから、これはこれで別に良いのか。
「おーし次は巡回だ」
またエヴァンスの町に戻りました!
人気のないところをうろうろしておりやす!
「ソ、ソージさんじゃないっすかっ。
あ、あのこれで見逃してください」
「あぁん、これだけかよ!?」
「で、ではこれくらいで」
「へん、わかってんじゃねーか」
…………。
「ソージさん、今月分の金と魔石っす!」
「ターコ、でけぇ声でそういう事言うんじゃねぇよ」
「す、すみません」
…………。
「ソ、ソージさん困りますよっ」
「今斬られるのと後で斬られるのどっちが良いんだよ、あぁん?」
……え、これ何の研修?
ソージの小物臭がやばいけど、基本こいつはクズだって事がわかったぞ☆
その他、店のタダ飲み、女を脅す等ベタなやり口が多いな。
あ、女性に関してはうまい事助けておいたぞ。
なるほど、これが治安維持か……何を維持してるのかわからんな。
今はあまり出来ないが、ここら辺は改善した方が良さそうだな。
はい翌日です。
チーン!
《件名:何やってんだてめぇ!》
《神者ギルドに入ったら1日1回は本部に顔出せや!
てめぇがトロいと俺の評価に関わるんだよ、バカたれ!》
最初にそういうのを教えろや……。
しかもまだ朝5時だぜ?
ムカつくが一応顔を立てておくか。
《件名:すぐ向かいます!》
《バカで申し訳ありません!
かっとばして向かいますね!
やっぱり先輩は頼りになりますね!
6時頃着くと思います!
うち結構遠いんで!》
とりあえず縦読みでささやかな仕返しをしておいたぞ。
気付かれたら気付かれただな。
チーン!
《件名:わかりゃ良いんだよ!》
《途中でメロンパンとイチゴ牛乳買って来いよな!》
メロンパン好きなんだな。
《件名:はい!》
《あさはやっぱりメロンパンですよね!
ほうこうが逆ですが、ソージさんの為に頑張ります!》
これでよし。
昼になりました!
レッドの部屋に呼ばれましたよ!
「どうだドン、慣れたか?」
「まぁそれなりには慣れましたかね?
と言ってもまだ初日みたいなものですし、わからない事だらけですけど」
「ソージは……しっかり教えてるか?」
「指導……という面ではしっかりとしてるのでは?」
「所詮は実力主義の烏合の衆だ……許せよ」
「何だ、知ってたんすか」
「ある程度はな」
「威をかざしてのやりたい放題は、神者ギルドの評価に関わるのでは?」
「その為の第9剣士部隊だ」
「…………神者ギルド内の取り締まりでもやらせる気ですか?」
「ほぉ、流石だな」
なるほど、日本でいう公安か。
しかしそれを作ったら、リュウリュウが困るんじゃないのか?
むぅ、まだまだわからんな。
「しかし俺にそんな実力があるとは思えませんが?」
「お前はまだ若い。
その年でその実力ならば、時間と共に強くなるのは明白だ。
手に負えない場合は他の剣士達も手を貸すさ」
「今更ですけど、俺は第9剣士の候補って事でいいんですかね?」
「不服か?」
「他に候補いないんすか?」
「ソージがそうなんだが……人格に難があるからな」
「ソージさんには言ってあるんすか?」
「ソージが候補だという事は伝えてる。
しかしドンも候補だという事は伝えてない」
…………。
言ってなくてあんな当たり強いのかよ。
「……そういえば、この件でグリードさんって人は何か言ってましたか?」
「ふふふ、察しが良いというかなんというか……」
「やはり納得頂けなかったみたいですね。
呼ばれた理由はそれがメインすか……」
「簡単な話だ、実力で納得させればいい」
「簡単に言いますねぇ……」
はい、エヴァンス中央区にあるドーム状のコロセウムです。
え、こんなのあったの?
マウンドにあがるのは3番パシリ、レウス。
そして4番ヤッカミ、グリード。
4番ヤッカミ、グリード。
身長およそ185センチ、体重およそ80キロ。
ハーフエルフの450~500歳程でクレイモア持ちの右打ち。
あ、ちょっとよくわかんなくなってきたからやめるわ。
薄紫色の短髪だが、襟足だけ長く三つ編みにしている。
通常の制服だが、赤いマントを更につけてるな。
やや褐色の肌、太い首、太い眉、キツめの目、耳にはピアスが多数。
いかにも軍人風かつ堅物風の大男。
実力としては……んー、20位前後か?
が、しかしですよ!
今回……というか神者ギルドの人達がいる前では、自己再生、自動回復、浸透回復が使えないのです!
油断無くいきたいと思います!
「この度は勝負を受けて頂き感謝する」
「……この勝負、断れたんですか?」
「……それは無理だ」
じゃあ社交辞令でも言葉選べよ……。
「グリードさーん、頑張ってくださーい!」
外野から優男の応援が聞こえますね。
きっと内心は「ぶっ潰しちまえ!」とか思ってるんでしょう。
いや、「斬って刻んですり潰して埋めてその上から小便でもかけちまえ!」のが近いだろうか。
いや――
「いくぞ!」
戦闘開始!!!
あ、やべ……気脳全開・猛烈剣を発動!!
「引き裂け、空気の斬撃!!」
ヒュヒュヒュヒュヒュッ……。
カマイタチみたいなもんか!
魔術があまり使えないと知ってても、俺もあんなカッコよく技を出してみたいぞ!
よし、ちょっと真似してみよう!
「受けきれ、剣の障壁!!」
キキキキキィンッ!
むぅ、剣1本は久しぶりだなぁ……。
え、ただの受けですよ?
「食らえ、重剛飛剣!」
「食らえない、右側に避ける!」
「貴様、ふざけてるのかっ!」
「こっちはいたって真剣です!」
まったく、無言で戦えたらどれだけ楽だと思ってるんだ。
「……おのれ、重剛連飛剣!」
重そうだが……まぁいけんべ!
竜爪!
ギギィン、シュィイイインッ!
「なっ、何だその技はっ!?」
「ほぉ、あの剣技は……」
ギィインッ!
「くっ、重い!」
やべぇ、なんかレッドが知ってる感じだったぞ!
俺が使える技のほとんどが使えないんじゃないか!?
仕方ない……あいつが使った技とか、基本的な技で攻めるか。
いくぜ、重剛飛剣!
ビュゥッ!
「くっ、貴様も使えたのか!?」
からの連剣!
「なっ、連続だとっ!?」
からの遠隔操作!
操重剛連飛剣!
技名が長いし、言いにくいわボケッ!
「ばかなっ!?」
ギギギギギギッ!
「ぬぅううううっ!」
しっかり受けるあたり、流石第6剣士部隊の序列元3位だな。
だがしかし、もう一発が重なると?
バチィイン!
あら、レッド様の乱入だわ。
「……それまでだ」
「がっ、はぁ、はぁはぁ……はぁはぁ」
「俺の勝ちってことで?」
「グリード、問題は?」
「はぁはぁ……あ、ありません」
戦闘終了!!!
「グリードさーん、どんまいでーす!」
きっと「使えねぇクソだな」とか思ってるんだろう。
はい、久しぶりのアジトです。
「――って事があったんだよ」
「もう神者ギルドに入れたのね、さすが私のレウスッ♪」
「私のレウスでもあるんだぞ!」
「むしろ私のレウスなのだ!」
「えっと、奥さん方聞いてます?」
「あはははっ、全く聞いてないねっ」
「しかし師匠を第9剣士に……」
「なー、笑っちゃうだろ?」
「神者ギルド……見る目はあるみたいですねっ」
「…………」
「しかし、リュウリュウの利益は何なのでござろう?」
「ケント君を配下置く自信があるって事かなっ?」
「こんな捻くれたパパを?」
どうも捻くれて捻れてるレウスです。
しかし、第9剣士の役目か……他の剣士を取り締まる?
他の剣士……派閥…………あぁ、そういう事か。
「うん、是非聞かせて欲しいねっ」
「………………」
「流石師匠、あのリュウリュウも真っ青な捻くれ具合ですねっ!」
「……まだ何も言ってねーし」
「で、レウス、どういう事なのっ♪」
「んー、おそらくガディス、レッド、ザーボンを嵌める算段があるんじゃねーか?」
「む、というと……レウス殿にその3名を取り締まらせる……という事でござるか?」
「それならば辻褄が合いますね。
ガディス達の信用の失墜、そして解散まで追い込めれば、それはリュウリュウの天下に繋がる……」
「最後にケント君も殺しちゃえば後は簡単だねっ」
「レウスはまた死んでしまうのか!?」
「勝手に死ぬのは困るのだ!」
「せめて人間分位は生きさせてくれ」
「きゅぃいい……」
「あ、はい、頑張って生きます」
「きゅいー♪」
「それじゃぁ第9剣士部隊が出来たら呼んでねっ」
「デュークさんを?」
「私も参加するぞ!」
「勿論私もよ♪」
「私もなのだ!」
「うーむ……それは最強部隊になるな……。
ハティーは難しいかもだがな」
「なんでなのだ!」
「耳はともかく尻尾が問題だ」
「うぅー……尻尾だな!?
なんとかしてみるのだ!」
ハイ、なんとかなるフラグが立ちました。