第九十九話「魔神様と狂神様」
1週間程、アジトで家族サービスの真っ最中です!
いや、サービスって言っちゃいけないけど、まぁそんな感じのアレだ。
どうやらキャスカ達はオバ武器と死んだ時と同じ装備と共に生まれたそうだ。
服装は新調したそうだぞ!
おいおい、なんだこの待遇の差は!?
デュークは普通に育ったが、魔石王ってだけあってかなりの数のダンジョンの場所を覚えていたそうだ。
キャスカ達とは違い実力&装備ボーナスはなかったが、時間ボーナスがあった。
まぁ25年って、今の俺が生きたより長いけど、デュークの事だからかなり楽しんだに違いない。
んで、生まれた時から気の仕組みをわかっておりますし?
より長い時間を掛けて培った気量も俺が死んだ時のデュークより多いですし?
技術もそれに平行するだろうし?
元々気の感性が実力の大半ですから?
それに優れたデュークはどうしても俺が死んだ時のデュークよりは強くなっちゃうよね?
あぁ…………これがほんとの鬱展開か。
そういえばデュークの両親はどんな人なんじゃろ?
落ち着いたら聞いてみっか。
「ところで、最近剣士デビューしたキャスカ達はともかく、デュークさんって……神者ギルドから勧誘受けたんですか?」
「あー、そういえば変な制服着た人にそんな話されたねっ」
「んで、どうしたんです?」
「断った後にその人が襲ってきたから斬っちゃったっ」
「あ、はい」
平常運転だわ。
「お兄様、神者ギルドというのはどうやって私たちのレベルを把握してるのでしょう?」
「剣士ギルドと繋がってるからだろうな。
流石にヒューマンカードとかの情報は見れないだろうけど……剣士ギルドにある情報なら見る事が出来るんだと思う」
「師匠、ヒューマンカードの情報が見れないという理由はなんでしょう?」
「そうじゃなきゃとっくにアジトがバレてるはずだからだよ」
「それは、通話する時は暗号や偽名を使っておりますし……」
「ここの位置情報がばれてないだろう?」
「追えるのですか!?」
「少なくとも勇者証明は追えた。
じゃなきゃ死んだ勇者の回収をガイさんとかが出来なかったからな」
「つまりこれだけの密集地帯にある不審なヒューマンカードの位置情報が割れてないのであれば、ヒューマンカードからの情報を得ているとは限らない……と?」
「もちろんさっき言ってた手段はしておいて損はないけどな?
一応皆偽名で登録してるみたいだし……」
「はい、師匠!」
「おう、それ以外に質問や疑問ありますかー?」
「質問があるでござる」
「はい、ファンネルさん!」
「転生してある程度の時間があったデューク様ではなく、転生して間もないテレス様と奥様方は…………剣技を使えるのでござるか?」
「勿論よ、生前まで使えた剣技は全て使えるわ♪」
「もしかして……皆生前気脳全開の修得までいったのか?」
「当然よっ♪」
「私は生きていた期間が長かったので……」
「私は凄くがんばったぞ!」
「私もなのだ!」
「僕も頑張ったよっ」
いや、あなたは最強ですから。
あっれー……やっぱり俺の立ち位置って主人公じゃないような気が……。
まぁ皆が強ければそれだけ皆が死ぬ確率が減るってもんだ。
……がしかしだ、妻や妹を戦場に出したくないのが本音でござる。
「大丈夫だよケント君っ」
「デュークさん……」
「皆斬っちゃえば良いんでしょっ?」
「皆斬っちゃダメです」
「えぇっ、そうなのかいっ!?
あぁ、召喚士は斬っちゃダメなんだよねっ」
「もう、お兄ちゃんったらっ」
狂神のやつめ、俺の心を読んでそれに返事をして、すぐに別の話に切り替えたな?
しかも……周りに気付かせてない。
アークやスンは気づいたかもだが女性陣で気付いてるとしたら、ラーナあたりか?
相変わらずスーパーマンだな。
いや、俺が死んだ後も研鑽を続けたならば、もっとスーパーマンか……。
いつも勉強させてもらってますわ。
「あはははははっ」
お、伝わった伝わった。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、なんか懐かしくてねっ」
「?」
「師匠、質問というより……その、お願いしたい事が……」
「どうした?」
「あの……師匠より任命されたあの「中間管理職」というのが非常に大変でして……。
もしよろしければ簡単な仕事を別の者に任せたいのですが……」
「うーん、しっかりとした雇用体系を作るのであれば…………ケーツとリミなんかどうだ?」
「良いの、パパッ?」
「最初はやめとこうと思ったが、状況が変わった。
最強の嫁さん達が守るアジトなら安心していてもらえるからな」
「レウス、それは誰なのだ!?」
「トゥースとエミーダさんの子孫だよ」
「あら、それは見てみたいわね♪」
「髪があるトゥースと、おどおどしたエミーダさんだ」
「あはははっ、それは見てみたいねっ」
ってわけで呼んでみました!
「「…………」」
「改めて初めまして。
レウス・コンクルードと申します」
「……レウス」
「コンクルード……」
「黙ってて申し訳ありませんでした」
「私のパパよっ♪」
「せ、先日は大変失礼な真似をしてしまい、もももも申し訳ありえれるます!」
あ、噛んじゃった。
「ケーツさん、慣れない言葉は使わなくていいですよ。
それと頭も下げなくて結構です。
俺とトゥースもそんな関係でしたから」
「そ、そうかい!?」
「お、お兄ちゃんっ!」
「で、でもよぉ……」
「その代わり俺もトゥースと同じ感じで喋っちゃうかもしれません」
「やっぱり似てるのかい?」
「髪さえなければ瓜二つね♪」
「ハッハッハッハ、これは髭で作ったカツラなんだぜぃ!」
わろりん。
「レウス、カツラとは何なのだ!?」
「あぁ2000年前はそんな文化なかったな。
人工の髪の毛だ。
ケーツはそれを自分の髭で作ったって事だな」
「何でそんな事をするのだ!?」
「うーん、ハゲてるのを気にしてるからじゃないか?」
「レウス……おめぇそんな奴だったんだな」
「パパはいつでもハッキリキッパリよっ♪」
「ハッハッハ、まぁ俺は気にしてるわけじゃねぇ!
先祖を知ってる奴らが、よく「トゥースが化けて出た」って驚くからだよ」
「へぇ……どれ?」
「しゃあねぇな…………ほれ」
…………トゥースじゃん。
「久しぶりだなトゥース」
「ケーツだっつーの!」
「レウス様……その……」
「リミも気軽に話してくれていいからね」
「そ、そちらの方々は……その……奥様でしょうか?」
「3人の妻……だね」
いやー、流石に申し訳ないけど……出来るだけ傷が浅いうちが良いだろ?
「よ、4人目の募集期間はいつでしょうか!?」
そんな求人広告の問い合わせみたいな聞き方も珍しいな。
さすがエミーダの子孫だわ……。
「あら、レウス相変わらずモテるわねー♪」
「お前、そこは怒るとこだろう」
「私はレウスがいればいいぞ!」
「そうなのだ!」
「妻が他に2人いる時点でレウスを独り占め出来るとは思ってないわよっ♪」
前に似た様なセリフを聞いた様な気がするな?
「……アハハハハハハッ!
トゥースさんにほんとソックリだねっ!」
今頃かお前!
「是非ご検討ください!」
「は、はぁ……」
「ハハハハ、たまにリミは強引なんだ!」
「あははっ、エミーダさんにそっくりだねっ」
「きゅぃー」
「んで、今日は何の用なんだい?
まさかアジトまで来られるとは思ってなかったけどな」
「そもそもケーツ達はゲブラーナから何でエヴァンスまで出て来たのよっ?」
「そりゃ、ラーナさん達の手伝いがしたいからですます」
「それでこの前ユグドラシルの木の近くにいたのか。
しかし、ゲブラーナから来たとしたならあそこはちょっと道から外れてないか?」
「ハッハッハッハ、ありゃリミが道を間違えたんだ!」
ケーツが道を間違えたならまだわかるが、リミかよ……。
「あうぅ……」
「うむ、本日お前達を呼んだのは他でもない。
お前達には私の手伝いをしてもらいたいのだ」
「おぉっ!!」
「本当ですかっ!?」
「師匠の推薦だ」
「「あ、ありがとうございます!」」
「なに、戦闘をしてもらう訳じゃない。
簡単な事務仕事だよ」
「なんでぇ」
「お兄ちゃん!」
「んで、暴走して勝手に戦闘に参加するってのが怖いので、予め戦闘参加の目標値を教えておく」
「「……?」」
「ファンネルさんに傷を付けられたならそれを考えよう」
「マジですか!?」
「マジマジ」
「おーし、頑張るぜぃ!」
「師匠、よいのですか?」
「テンプレを避ける為だ」
「……はぁ?」
「あははははっ、その言葉も懐かしいねっ」
「父上、どういう事でしょう?」
「よくダンジョンに潜った時とかにケント君がその「テンプレ」って言葉を使ってたねっ。
テンプレではあの影から魔物が出て来るとか、テンプレではあの魔物の弱点はコレだ……とかねっ」
「そんな事がわかるのですかっ!?」
「何でも異世界の特殊剣技らしいよっ」
「して、その的中率はっ?」
「ほぼ100%だよっ」
「おぉっ、さすが師匠でありますっ!!」
…………恥ずかしくて死にそう。
皆、俺を見ないでぇっ!!
「レウス、私は何をすればいいんだ!?」
「キャスカはスンと一緒に皆の修行を頼む」
「わかったぞ!」
「ハティー」
「何なのだ!?」
「西の国はやっぱり戦士達はいなかったんだな?」
「あの西の森には動物はいたけど、魔物はいなかったのだ!」
「おし、そんじゃぁハティーはこの近辺の見張りと警護を頼む」
「任せるのだ!」
「ビアンカとテレスもハティーと交代で頼む。
疲れが溜まったら無理は絶対しない事」
「わかったわっ♪」
「わかりましたわお兄様」
そして……。
「ケント君っ、僕はどうしようかっ?」
「ちょっとめんどくさい事頼んでもいいすか?」
「僕にしか出来ない事なんでしょっ?」
「デュークさんだからこそ頼める仕事っす」
「あはははっ、それは楽しみだねっ」
「むぅ……これが魔神と狂神でござるか……」
「パパこわーいっ♪」
って事で俺はゲブラーナまで来ました!
お供は無しでございます!
ゲブラーナ周辺の魔石集め、ジージ探し、西の森の現状をこの目で見たいってのが今回のミッションだ。
ゲブラーナも中小のビルが多数。
一軒家のクオリティも現代の地球にかなり近い感じだ。
でも城壁は相変わらずあるな。
ゲブラーナの現国王はブルウス・ダリス。
最奥から順次探していくか。
まずは西の森だが……ほんと動物しかいねぇな。
ハティーが根城にしてたダンジョンも…………魔物はいなかった。
がしかし、上硬化の魔石を発見!
ハティーはここには来なかったのか。
あいつの場合は俺より嗅覚が鋭いから無駄を省いたのかもしれん。
んー、確かに匂いも残ってないな……。
トゥースとビアンカを鍛えた西の森奥の洞窟ダンジョンは……何も無し。
とりあえずゲブラーナ内も見てみるか。
南の市場……なんてあるはずもなかったぜ。
ガルムの店……なんてあるはずもなかったぜ。
戦士ギルド……が剣士ギルドになってるぜ。
やしうゆ……なんてなかったぜ。
ん、今魔物の「におい」がしたような?
くんかくんか……。
何故だろう…………何故城から魔物の「におい」がするんだろうか……。
あ、やべ兵と目が合った!
めっちゃ凝視されてる!
え、捕まっちゃう!?
「シ、システムコード『ケント』起動!!」
プゥーンッ、プゥーンッ、プゥーンッ、プゥーンッ……。
おい、なんか非常事態のアラート音みたいなのが聞こえるぞ。
ゴゴゴゴゴゴ……。
なんか城門前が変形してくんですけど!?
え、これってSF物だったっけ!?
左右の城門の壁から……金色の俺の像出たー!
門から入口までの石橋が金色の橋にチェンジ!
水に濡れた金色の橋を……あ、そこはモップ掛けなんだ。
場内から『グッド騎士♪』の音楽が!?
これを知ってるのは……くそ、利休の仕業か!
「お待たせして申し訳ありません!」
「さぁ、中へお入りください!」
「あ、はい」
え、一体何が待ってるんですか!?