第九十二話「色々ビックリ」
くそっ、俺が今までステータスの職業欄に付けてた「魔物使い(剣士)」はただの俺の自己満足だったってか!?
何が戦士が剣士になっただ!
俺にはただのご都合にしか聞こえないってんだ!
そりゃ剣士とかタイトルにあって、呼び方が勇者って事で違和感とかはありましたよ?
えぇ、ありましたとも!
あぁ面白くない!
早く帰りたいもんだぜ……。
あ、剣士編スタートです。
今後共レウス君を宜しくお願いします。
「ところであなたのお名前は?」
「あぁ俺、レウスっていいます」
「なっ!?」
「へ?」
「何て名前を付ける両親ですか!?」
「へ?」
「世界の「大犯罪者レウス・コンクルード」と同じ名前ですよそれっ!!」
大犯罪者デビューしましたレウスです、こんにちは。
どういう事だ?
俺の活動はたった数年だぞ?
「人里離れてるせいと……お、親が変な人だったので……旅をしてる時はケ、ケントと名乗っています」
「ふむ、そういう理由ならば仕方ないですね」
ちょっと抜けててマジ良い人発見☆☆☆
「ところで……あなたのお名前は?」
「あぁ申し訳ありません、私「ハッチール」と申します」
可愛い名前だなおい。
「宜しければエヴァンスまでご案内致しますが?」
「是非お願いします」
「ではこちらです…………しかし大変なお名前をお持ちですねぇ」
そういえば、この時代の他の奴らは大丈夫なのか?
「すみません情報に疎くて」
「レウスと言えば、世界戦争の引き金となった大物ですからねぇ」
どうも世界戦争を引き起こした張本人だそうです。
「へー、そうなんですね。
他に注意した方がいい事とかありますか?」
「その他の大犯罪者となると……「大魔王スン」、その右腕「剣皇骨リボーン」が有名でしょうか」
やだスンったら成長しちゃってからに。
リボーンはなんて名前をもらってんだ……。
「しかし今一番の悪党となると……その魔物を束ねるボス、「天老アーク」が最大の敵と言えるでしょう」
わお。
んー……一体なにがどうなってんだ?
……あれ、てゆーか誰が狙ってるんだ?
「因みにそれを追ってるのは……?」
「えぇっ、神者ギルドをご存知ないんですかっ!?」
…………デスヨネー。
くそっ、子孫か、子孫なのかっ!?
時間が情報を歪めれば……俺達が悪人にされる可能性は非常に高いな。
この時代はともかく、元の時代に戻ったら緊急会議だわ。
いや、俺のせいでこうなってるのだから……この時代も……。
難しいよなぁ……。
んー、実力と装備さえ整えば……しかし世間にどう伝える?
世間が神者ギルドを悪だと認めるか?
くそっ、胃に穴空きそうだぜ。
……空いたら回復しよう。
「剣士ギルドで功績を積むと、神者ギルドからの誘いがあるそうですよ」
「そうなんですか……」
剣士ギルドで金を稼ぐにしても、目立たず行動をした方が良いな。
偽名を考えるか。
ケントじゃ危ない可能性があるからな。
あれチャッピーやマカオ……四神達やバティラ、ガラードはどうしてんだ?
チャッピーは寿命で死んでてもおかしくはないかもしれんが、ガラードやバティラは生きてるだろう?
……殺されたのか?
「因みにそれ以外の魔物とかはどうなってるんです?」
「んー、戦争の時にある程度処分したそうですが、詳しい話は私の身分ではわからないですねぇ」
「そうですか……」
それ以外死んだ……?
いや、あいつらはそう簡単に死ぬ奴らじゃない……。
絶対生きてるだろう。
んお、何か遠くに見えてきた。
……すげぇ、都会って感じの街がある。
ビルビルビルって感じだ。
大きさもかなり……ゲブラーナ位あるんじゃないか?
しかも…………壁に囲まれてない。
「あれがストレンジワールドの「首都エヴァンス」です」
なんだって?
いや、俺が悪人となってるなら中央国が世界戦争の時に滅びた可能性もあるか……。
「では、私は警備の仕事に戻ります。
……これが私のヒューマンコードですので、何かご不便等ありましたらいつでもご連絡ください」
「……あぁはい」
「では失礼します」
「あ、ありがとうございましたっ」
「ははは、困ったときはお互い様ですよ……では」
うん、絶対お礼をしよう。
しかし……この紙に書いてるヒューマンコード?
この「511G72Eの8」ってのがそうなんだろうな。
メールアドレスみたいなもんなのかしら?
一般人も「ご連絡ください」とか言ってたから連絡が出来るんだろう。
さて、まずは色々情報を集めなくちゃだな!
はい、お待たせ。
色々情報収集してきましたよ!
とりあえずゲットしました「ヒューマンカード」。
勇者証明みたいな携帯型タブレットみたいなもんだ。
外装の色が銀色で一緒だから多分アレの進化型みたいなもんだろう。
色々便利だぞこれ。
剣士ギルドで名前登録するだけでもらえたわ。
追って色々話すからちょっと待っててくれな。
まずヒューマンカードは簡単な身分証明書みたいなもんだが、端末にお金を溜められる仕様だ。
地球の電子マネーみたいなもんだな。
ほぼ全ての場所に端末精算の機械が設置されてるのでICカードみたいに「ピッ」で精算が出来るんだ。
ゲームみたいにアイテムもぶっ込めたら最高なんだろうが、そこまでの文明にはなってない。
だがしかし、魔石は入れられるそうだ。
んで、故障は基本的にしないそうだ。
半永久的に反射の気を発するそうで、衝撃には非常に強い。
まぁこれは勇者証明も一緒みたいだけどな。
お金の単位とかは流石に変わってなかった。
魔石がかなり普及してるみたいで生活用の火の魔石、光の魔石は普通に売ってた。
大体3万レンジ位が相場みたいだ。
しかし戦闘用の魔石が…………超高ぇ……。
なんだよスピードストーンが98万レンジって……。
ハイスピードストーンが530万レンジだったぞ?
マスター系の魔石なんて、どこ探してもありませんでしたわ。
店員に聞いたら、俺のみすぼらしい姿をしかめたツラで見ながら「お客様、冷やかしでしたらお帰りください」って言われたぜ。
仕方ないから「ヒューマンカード」の「フレンドリスト」に一般人の「ヒューマンコード」を入力して、コールしてみたら…………電話的な通話が出来た。
聞いてみたら……マスター系は安くて2500万レンジするそうだ。
超高ぇよ……。
神系なんてそれの5倍……1億以上はするって事だろ?
だがしかし、そんな私への救済措置が!
スピードストーン5個でハイスピードストーンへの変換出来るそうだ。
ハイスピードからスピードマスターへの変換も可能だから……結構未来は明るい……と、思いきや!
剣士ギルドへ行っても……ダンジョン情報がなかった。
どうやら情報に関しては神者ギルドで独占してるそうだ。
もちろん自分が見つけたならば、自分で攻略する事はOKなんだそうだ。
という訳で、しばらくダンジョン探しをしようかなと。
俺が昔攻略したダンジョンならある程度覚えてるから……そこら辺に行ってみよう。
今まで説明した事がなかったが、攻略されたダンジョンは約5年程で新しい魔石を生み出すんだ。
そこにまた魔物が住みつき、ダンジョンになるって寸法だ。
あぁ、ヘル・デス……利休の魔物生産が終わっても、人間を敵視する魔物はいなくならなかったんだ。
独自の生態系を築いてるから全滅ってのも難しい。
んで、何か調達出来ないかと思い出の場所に来てみたんだが…………なんだいこりゃ……。
ユグドラシルの木が…………枯れてる?
枝もボロボロだわ…………。
クレーターが多数あるから大きな戦闘があったんだろう。
くそぉ、人間辞退を枝に向かって何発かぶち込めば、ユグ枝を何本かゲット出来ると思ったんだが……。
まぁとりあえずユグドラシルのダンジョンに潜るか……。
あそこは明るいからな。
ハイ、ビックリー。
セカンドレベル、サードレベル、フォースレベルの魔物が沢山いますー。
なにこのモンスターハウス?
しかし武器の素材に出来そうな魔物はいないな……。
まぁ倒せない魔物はいませんけどね?
18歳のレウスを舐めるなよ?
あ、因みに俺の偽名は……「ドン」だ。
ダイムとかデュークとか考えたけどどれも過去、問題になってる可能性が高いからな。
流石に俺の養父は大丈――
「誰かぁああああっ!!」
「はい?」
「誰かいないかぁああっ!?」
「誰か助けて!!」
助けを求める声だな。
え、放置?
いや、するわけないだろう。
声は入口の方から……何匹か俺から逃げてったからそいつらが襲ったんだろう。
はい、入口です。
入口付近には剣を構えた髪の毛がフサフサなトゥース似の男(人間?)と、エミーダそっくりの……人間? が震えながら立っていました。
んで襲ってるのはフォースレベルの魔物「キマイラヒドラ」。
キマイラだが、付いてる動物は3つともヒドラのドラゴンみたいな顔……そんな魔物です。
色は青がかった緑で、大きさはガラードより少し小さい……4メートル位かな?
逃げた魔物じゃねーなこいつ。
ダンジョンに入らねーわ。
「大丈夫か!」
「おぉ!?」
「うし、女を守りながら後退!」
「お、おぉっ!」
戦闘開――終了!!
「なっ!?」
これくらいならすぐですよ。
トップレベルだと手こずるだろうけどな。
オーバートップレベルなんて出てきたら死を覚悟するだろうな。
まぁオーバートップレベルになると結構話せる奴が多いけど……。
「あ、ありがとうございました!」
「お、おぉ、助かったぜ兄ちゃん!」
「どういたしまして」
「トップレベルの魔物を瞬殺なんてすげぇなおい」
ん、基準が変わったのか?
「まぁ問題ないですよ。
それよりも怪我はないですか?」
「あぁ、妹が少し……」
「回復は使える?」
「あ、あんな高価なもん買えねぇよ!」
ほぉ、剣技も買える時代なのか?
商売出来るかもしれないな……。
「んじゃ傷見せてください」
「こ、ここです……」
あら素敵な脹脛……はい、すみません。
……ィイイイン
「すげぇ……」
「ほら、もう動けるでしょう?」
「あ……ありがとうございますっ!」
うん、とても頬が赤い……いや紅い。
フラグ立っちゃった?
魔物の表情も読み取れますからね?
自意識過剰じゃないとは……思いたい。
「俺はケーツってんだ!」
…………。
あの時のフラグをここで回収しに来たか。
「リ、リミと申しますっ!」
「ドンです、初めまして」
「ハッハッハッハ、なんかドンって感じの顔じゃねーな!」
「ちょっとお兄ちゃん、助けてもらった人に酷いよ!」
■ケーツ
髪の毛フサフサでやや色黒のトゥース。
因みに髪の毛の色は黒で
剣は……おぉ、双剣でしかもダガータイプだ。
これはエミーダのを受け継いだのかしら?
服装に変化が見られない……。
■リミ
おどおどしたエミーダ。
しかしハーフエルフじゃないせいか、やや柔らかい雰囲気。
クリーム色のローブを着ている。
服の文化はあまり進んでないのかしら?
実際エヴァンスの町もそこまで変化はなかったからそういう事なんだろう。
「いや、構わないですよ」
「ホントすみません……」
「慣れてますから」
「え?」
「いや、なんでも……んじゃ俺はダンジョン攻略の途中なので、ここで失礼します」
「あっ……」
すっげぇシュンとされたわ。
「おいおいおい、命を助けてもらったんだ。
何か礼くらいさせてくれよ?」
いきなり先祖の話を振るとか……さすがに変だよな?
まぁ「何言ってんだこいつ?」ってなるだろう。
礼か……何か貰った方が相手も納得するか?
ちょっと強引だが終わらせてしまえばいいだろう。
「先日追い剥ぎに会いましてね、見た通りボロボロの物しか持ってないので何か旅やダンジョン攻略に役立つ物があれば…………位ですかね?」
「とんでもなく強い追い剥ぎもいたもんだな」
あ、こいつらよ目の前でキマイラヒドラ倒して何言ってんだ俺……。
「実は寝てる間に……」
「ほぉ、そいつは大変だったな!」
「……可哀想」
「そんじゃこいつをやるよ!」
「これは……」
「先祖が使ってた光の魔石入りのカンテラだぜ!」
…………カンテラの裏にボロボロだが「チャッピー」って書いてあるわ。
むしろ俺のだわ。
「だ、大事な物なんじゃないんですか?」
「命より大事なもんはねぇよ」
相変わらず良い奴だな。
「あの…………これ……」
「ヒューマンコード?」
「あぁ、俺のも……………………ほれ、これだ」
「……では後程申請しておきます」
「あぁ、それじゃあな!」
「……ぜ、絶対連絡くださいね!」
「…………………………行ったか」
さて、ダンジョンダンジョン………………ハズレだったわ。
マカオに会ったダンジョンでも寄って帰るか…………。
ダンジョン内は、やはりそれなりの強さの魔物が多かったが、剣無しでも俺の敵じゃ無かった。
…………おし、ハイスピードの魔石ゲット!
あ……そういや金が無いんだった。
どなたかお金ください。