ライバル宣言撤回
エリスの顔が真っ赤に染まる。
しかし夕菜はおかまいなしで畳みかけた。
「かみも目もキラキラしてるし、ほっぺもすべすべだし、ぷにぷにだし! どんなお洋服をきても似合うし、おべんきょーもできるし、お花とか動物にもやさしいし! あとね、それからそれから――」
「あ、あうう……」
容赦なく続く褒め殺しに、エリスはたじたじになるばかりだった。
最後に夕菜は彼女の顔をのぞき込み、伺うように言う。
「夕菜は、エリスちゃんのことが大好きなの。だから……また仲良くしてくれる?」
「……わたくし、夕菜さんにはひどいことをたくさん言いました」
エリスは声を震わせる。
「それなのに……まだ仲良くしてくれるんですの?」
「当たり前じゃん! エリスちゃんは、夕菜のいちばん大事なおともだちだもん!」
「夕菜さん……」
即答する夕菜の手を、エリスはぎゅうっと握り返した。
そうしてもう片方の手で涙をぬぐって、満面の笑みを浮かべてみせる。
「ふつつかものですが、よろしくお願いいたします」
「? それってどういう意味?」
「仲良くしてください、って意味らしいですわ」
「そっか! それじゃあ、夕菜もよろしくおねがいします!」
「もちろんですわ!」
少女らはにこやかに笑顔を交わす。
険悪だった空気は完全に取り払われ、心から分かり合えた証拠だ。
そんなふたりを温かく見守っていた直哉だが、こそこそと小雪が話しかけてくる。
「ねえねえ、直哉くん。ひょっとして、あの子が物販コーナーに来たのって……」
「ああ。夕菜と仲直りするためにプレゼントを買いに来たんだろうな」
「だからあんなに真剣に選んでたのねえ。いい子じゃない」
小雪もじーんとしたように嘆息する。
意地っ張りのエリスに親近感を抱いていたのか、ふたりが仲直りしたことで心底ホッとしているらしかった。
そこに夕菜がにこにこしながらやってくる。
「ありがとう、小雪ちゃん! おかげでエリスちゃんと仲直りできたよ!」
「よかったわね。でも、それは夕菜ちゃんが勇気を出した結果よ。私はちょっと背中を押しただけだわ」
「小雪ちゃん……」
夕菜は笑みを取り払い、小雪の顔をじーっと見つめる。
その真剣な表情に小雪はすこしうろたえた。
「な、なに? 私の顔に何かついてる?」
「ううん。なんでもなーい」
夕菜は首を横に振る。
そうして先ほど以上に明るい笑顔を浮かべてみせて、にこやかに告げた。
「小雪ちゃん、直哉おにーちゃんとおしあわせにね!」
「へっ……!?」
「直哉おにーちゃんは、小雪ちゃんのこと泣かしちゃダメだよ! そんなことしたら、夕菜がだまってないからね!」
「しないってーの」
直哉が断言すると、夕菜はまたエリスの元に戻っていった。
その後ろ姿に、小雪は首をひねる一方だった。
「どういうこと……? あんなにライバル意識むき出しだったのに」
「認めてくれたってことだろうな」
「そ、そういうものなの……? 私、本当に何もしてないんだけど……」
小雪はなおも不思議そうなままだった。
彼女らの和解に一役買ったというのに、本気で自覚がないらしい。
釈然としないように眉を寄せていたものの、仲良く笑い合う夕菜たちを見て、その表情が一気にゆるんだ。
「ねーねー! 直哉おにーちゃん!」
「うん? なんだ、夕菜」
夕菜がエリスの手を引いて戻ってくる。
もじもじしつつ飛び出したのは、可愛いお願い事だ。
「ばんごはん、おにーちゃんのとこで食べるんだよね? エリスちゃんも呼んでもいい?」
「ああ、別にいいぞ。エリスちゃんも近所だろ、送っていくよ」
「だったらお言葉に甘えて……お願いいたしますわ」
「じゃあお家に連絡しないといけないわね。番号はわかる?」
「えっと、わたくしの携帯に入って――」
エリスから携帯を受け取って、小雪はテキパキと段取りをこなしていく。
しかし携帯電話を操作しようとして、ぴしりと凍り付いた。
そのまま縋るような眼差しを直哉に向けてくる。
「な、直哉くん、その……」
「うん? ああ、知らない家に電話かけるの苦手なんだな。連絡は俺がやるから」
「ううう……ごめんなさい」
「こら! 直哉おにーちゃん、小雪ちゃんをいじめちゃめっ、だよ!」
「そうですわ! 小雪お姉さまに謝ってください!」
「なんで俺が責められてるんだよ」
ちびっ子ふたりにやいやい言われつつも、そのまま全員で食材の買い出しに向かうことになって――日が落ちる時間まで、笹原家にはにぎやかな笑い声がずっと響いていたという。
これにて毎日更新分は終了となります。一ヶ月半、お付き合いいただきましてまことにありがとうございました!
次回更新は未定ですが、ネタは馬鹿みたいにあるのでまたそのうち書きます。
それでは書籍の方もよろしくお願いいたします。
巻末宛先までファンレターいただけると、ここでしか読めない書き下ろしSS冊子プレゼント!詳しくは活動報告まで。






