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魔王に恥をかかせるとは  作者: 追憶のかけら
1/1

俺たちの戦いはこれからだ

魔王城そこには最悪をもたらす魔王がいるという噂がある。

しかし今代の魔王の実力を知るものは一人として存在しない。

魔王が強いのか、はたまた弱いのか。知るすべは何もない。

その状況を見かねて各国の王族は腕利きの兵や冒険者を集め、大規模な会議を行なった。

勇者たちが戦いに敗れれば魔王を倒せるものはいなくなる。

それならば魔王がどれくらい強いのか調査をするのはどうだろうか?


このような意見が出てきた。しかしこれにはいくつもの修羅場を潜り抜けてきた兵や冒険者達でさえ、色良い返事をしなかった。

理由は単純だ。その案を飲んでしまえば自分たちが魔王城に向かうことになってしまう。

もしそうなれば、魔王城にたどり着けたところで死ぬことは確定事項になり、

そもそも大半はたどり着く前に息絶えてしまうだろう。

そんな条件は到底飲むことはできない。


当然の如く兵や冒険者達は猛烈に抗議をしたが

「もし調査不足の結果勇者達が負ければ、自分たちも死んでしまう。ならば、死ぬのが遅いか早いかの違いではないか。それに、勇者たちは自分の命を危険に晒してまで魔王討伐に尽力してくれている。

勇者たちが命を張っているのに我々が、ただひたすらに魔王が討伐されるのを待ち続け、安全圏で高みの見物等出来ようものか!」

との言葉を受け、皆一様に口ごもってしまう。


更にその現状に発破をかけるように一人の王の発言が皆の胸に深く突き刺さった。

「死ぬことが怖いから、この案を飲みたくないと見えるが甘ったれるな!

勇者の力になることで、多くの民、人類が生き残るのであれば私ならば魔王城でも迷うことなく向かうだろう。その結果この命尽きようとも、私は本望だ。[言うは易し、行うは難し]との言葉通り、我々がただ言うだけでは皆も納得しないだろう。であれば私も魔王城に向かおう。しかし、私には戦闘能力がない。そこで私の護衛として何人か付いて来てほしい。

魔王城につけたら、その場で帰っても構わない。我はその者たちを責めない上、引き留めもしない!」


この一人の王の覚悟を見てからは、抗議を行うものはなく。スムーズに会議が終了した。


会議後から長い時間をかけて険しい路を歩み続けた結果、一行はとうとう魔王城にたどり着き、今まさに魔王がいるであろう最後の扉をくぐろうとしている。


バン

大きな音とともに扉が開かれ、目の前には凶悪な魔王が……あれ?いないな


「おかしいぞ魔王がどこにもいない!?」「どこか別の場所にでもいるのか!?」

「いや、この部屋のどこかにはいるはずだ!」

本来であればいるはずの魔王がいなかったことによって冒険者たちは取り乱してしまった。

そんな喧噪の中この場には似つかわしくない音がどこからともなく聞こえてくる。


じゃ~~

ふきふき

「ふ~すっきりした最近腹の調子がおかしいんだよな~……」


あやつが魔王か、あの仕草は我々を油断させるためにわざと見せているのか?

そうだとすれば我々のことなど眼中にないと見えるな。


「よいしょっと、あぁ~腰いてぇ、大きく伸びでもしようかなぁ、

ん~ん」


この行動は!?間違いない。我らのことなど所詮は道端の小石程度にしか思っていないようだ。

しかし、そうであるのならば、交戦をすることなく、情報だけを持ち帰ることも可能かもしれない。

あまりに弱すぎるものに魔王が興味を示した例は今だかつてないはずだ。

そんなことを考えていると凄まじい威圧とともに魔王の声が聞こえてきた。


「ふははっよく来たな勇者どもよ、我が名はユベルディー・ルラエルド・イゴーズ・ミレリオス・ミルジオ、我に倒されに来るとは愚かな者どもよ。」


少し魔王SIDE

じゃ~~

ふきふき

「ふ~すっきりした最近腹の調子がおかしいんだよな~……」


そういえばさっき俺の部屋に誰か入ってきたような気がするな。

もしかしたらシャリエルが帰って来たのか?お使いを頼んでいたし、

まぁいいや、とりあえず玉座に座るとするか。


「よいしょっと、あぁ~腰いてぇ、大きく伸びでもしようかなぁ、

ん~ん」

あぁ伸びた~さて誰が入って来たのか確認を

人間か…あれ?いつからいたんだこいつら?そういえばさっきトイレにいたときに扉が開いた音が聞こえたな、その時に来たのか、うむ。……待てよということはトイレから出てきて今までの行動を全て見られていたということか?大きく背伸びするところまでバッチリ?うわ、恥ずかしい、超恥ずかしい。どうしよう。ここに来たということは勇者たちだよな、装備も立派だし、今からじゃ遅いかもだけど、少し威厳を出してみようか。

俺は急いで強大な魔力を放出し、勇者どもに威圧をかける。


「ふははっよく来たな勇者どもよ、我が名はユベルディー・ルラエルド・イゴーズ・ミレリオス・ミルジオ、我に倒されに来るとは愚かな者どもよ。」


SIDE OUT



!?なんだこの威圧感は、立っているのがやっとではないか、どうやら、少し前の段階では我々には気づいていないだけのようだった。くっ!あの間に逃げておけば…外見などの情報だけでも直接持ち帰ることが出来たものを

…後悔の念が頭を何度も巡るが今はそんなことを考えている場合じゃない。それにまだ希望がなくなったわけではない。先ほど魔王は勇者どもと言った。ならばその誤解を解くことができれば、情報を持って帰れるかもしれない。そう考えた王は怯えながらも、表情には出さず、堂々と魔王の言葉を訂正した。


「いえ私達は勇者ではありません。魔王城引いては魔王についての情報をできる限り集め城に持って帰るための捨て駒部隊です。私は魔王とは強いものとの戦いを好むと考えています。もしここで私たちを見逃していただけるのであれば、そして、どのくらいの実力がある状態で、挑んできてほしいのかを少し教えていただければ、勇者たちに直接伝えましょう。さすれば貴方は近い内に求める強者と戦うことが出来るでしょう。いかがでしょうか悪い条件ではないはずですが。」


私は言い終わった後魔王の顔を見て、焦ったと同時に嫌な予感がした。魔王の顔はみるみる赤くなっていき、何か相手を怒らせることをしてしまっただろうか?その場合どうにか私以外の皆、もしくは一人だけでも見逃してもらえるように交渉してみよう。と色々な考えが頭の中を駆け巡った。

思考の渦に陥りそうになっていると、魔王から予想外な残酷な言葉がかけられた。


「お前たちは勇者ではないのだな、先ほどの提案だが、我には全くメリットが見当たらないのでな、悪いが全員ここで消えてもらおう。我の誇る魔法であの世に送ってやる、ミレイスインパクト!」


言葉を発する余裕もなく、捨て駒部隊は全滅した。しかし、捨て駒部隊には、映像を送ることが出来る魔道具を持っているものがいたので、どうにか各国に情報を提供するという目的は果たせた。

そして、送られてきた映像には、魔王の強さと、イメージと180度違う魔王の姿が映っていたとか。


魔王SIDE


「いえ私達は勇者ではありません。魔王城引いては魔王についての情報をできる限り集め城に持って帰るための捨て駒部隊です。私は魔王とは強いものとの戦いを好むと考えています。もしここで私たちを見逃していただけるのであれば、そして、どのくらいの実力がある状態で、挑んできてほしいのかを少し教えていただければ、勇者たちに直接伝えましょう。さすれば貴方は近い内に求める強者と戦うことが出来るでしょう。いかがでしょうか悪い条件ではないはずですが。」


我はみるみる顔が赤くなっていった。こいつらのこと勇者とか言っちゃったよ言っちゃったよ、うわぁ恥ずかしい。

戦いとか正直めんどくさいし、全然好きじゃないし、べっ別にいいわけとかじゃないから、うん。

でもこれ、こいつら見逃したら、俺の恥ずかしい思い出が人間の国に記録として残るんだろう?

最悪だ~!!黒歴史だ黒歴史すぎる。こんなの、配下の誰かに見られるだけでも恥ずかしくて死にそうなのに、それを不特定多数の人間に見られるなんて耐えられない。こいつらは絶対に生きて返すわけにはいかない。そうだ、問答無用で消し去ればいい、うんそれがいい。辱めを受けさせた仕返しとして跡形も残らないようにしよう。そうしよう、そうしないと我の精神的ダメージが凄いことになる。

嫌なことを考えさせてくれた人間どもに我は努めて冷静に無慈悲な言葉を放つ。


「お前たちは勇者ではないのだな、先ほどの提案だが、我には全くメリットが見当たらないのでな、悪いが全員ここで消えてもらおう。我の誇る魔法であの世に送ってやる、ミレイスインパクト!」


その結果、人間どもは跡形もなく消し飛んだ。

多少の怒りを込めていたが、少しやりすぎたか我の部屋が半壊してしまったな。

でも我は後悔はしていない。あんな記録残されてたまるか!

おのれ人間どもめ、許さんぞ、魔王に恥をかかせるとは!

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