序章 邂逅の時
新章突入です。
私は、業火の中にいた。
肌を刺すような熱気、眼の底を衝くような炎の紅。
眼前に広がる光景に、私はただただ息を呑んだ。
圧倒的だった。
絶対的だった。
私に降りかかるありとあらゆる理不尽を、彼はたった一人でねじ伏せたのだから。
「……どう、して……?」
そんな光景を前にして、私の口を衝いて出たのは感謝でも驚嘆でもなく、疑問だけだった。
ずっと奪われ、虐げられてきた。
私が弱いから、誰も、私を人として見たことはなかったのに。
今までの私は、こんな風に助けられたことなんてなかったから。
「――友だちを、助けたいって思ったんだよ」
気恥ずかしそうに、彼は言った。
友だち、と。
彼は私を対等の存在だと、そう言ってくれたのだ。
「とも、だち……?」
「そう。今日、いまこの瞬間から、俺はお前の友だちだ。――イヤか?」
私は慌てて首をぶんぶんと横に振ると、彼は笑って私に手を差し伸べてくれた。
そのぬくもりがその手を伝って、私の胸へと広がっていく。
「……あり、がとう……。東城くん……」
「大輝、って呼んでくれよ。友だちは苗字じゃなくて、下の名前で呼ぶんだって。外に出たときに出来た友達が教えてくれたんだ。――というわけで。よろしく、美里」
生まれて初めて、私は自分の名を呼んでもらえた。
熱い鼓動が胸に溜まった冷たい泥を溶かしていくような感覚があった。
その瞬間が、きっと、私の生まれたときなのだろう。
そんな確信があった。
「――ふぇ……。うっ……ひっく……。うえぇぇ……」
子供らしい嗚咽を漏らして、みっともないとか何も思う間もなく、私は泣いた。
恐怖はなくて、ただあたたかい涙を。
そんな私を見かねたのか、彼は苦笑交じりに言ってくれた。
「――護ってやるよ。お前が泣くのなら何度でも、何度でも」
慰めるように、私の頭をぽんぽんと叩いてくれる。
「だから今はもう泣かなくていいだろ、美里」
その温もりを、その優しさを感じた瞬間に、私の瞳からはもっとあったかい滴が零れて止まらなくなった。
いらずらっぽく笑いながら、それでもあらゆる理不尽を焼き尽くすその姿に、気付けば私は心魅かれていた。
いつかその横に立って彼を護りたいと願ったのは、たぶん、そのときが初めてだった。
評価、感想を心よりお待ちしております。




