8――天界の威信を懸けて 1
*
【天界・軍事作戦司令部】
「報告します!」
天使エンジェルは、司令部の扉を勢いよく開けた。
彼女はこれまで、アークエンジェルが格闘特化に殴り飛ばされ、権天使プリンシパリティが監視特化に撃退された事件を報告してきた。
そのたびに上層部は新たな作戦を立案し、そして失敗してきた。
正直、もう帰りたかった。
しかし、天使に労働基準法はない。
少なくとも、天界にはなかった。
「王国内に、次の標的を確認しました!」
「誰だ?」
軍事部門を統括する能天使パワーが尋ねた。
「腰振りスペシャリストです。現在、主人公の屋敷に滞在しています」
「なるほど。肉体戦闘に特化したヤンデレか」
パワーは腕を組んだ。
「ならば、こちらも圧倒的な武力で制圧する。アークエンジェルのように単独で突撃することはない。プリンシパリティのように電子戦に頼ることもない」
「……それで、今回はどうするのですか?」
エンジェルが恐る恐る尋ねる。
「精鋭軍団を率いて正面から叩き潰す!」
「ですよねええええええっ!!」
エンジェルの悲鳴が司令部に響いた。
「どうして皆さん、前の失敗から学ばないんですか!?」
「安心しろ、エンジェル。今回は数百の兵を率いる。相手がいかに強大であろうと、物量で押し切れる」
「その理屈で勝てる相手なら、私だって安心できるんですけどおおおおっ!」
パワーは拳を握りしめた。
(今回こそは俺が一番乗りだ。アークエンジェルもプリンシパリティも失敗した。ならば、俺がヤンデレ打倒の先陣を切る。天界の武を司る能天使として、この栄誉を誰にも渡さん)
「出撃だ! 全軍、気合を入れろ!」
天使たちが声を揃える。
「おおおおっ!!」
「隊列を確認! 武器を点検! 今日こそ、地上の異常を正すぞ!」
「我ら天界精鋭! 一致団結して勝利を掴む!」
パワーは大剣を掲げ、兵士たちの士気を煽った。
「聞いておくがいい! 我こそがヤンデレ打倒の一番乗りだ! この能天使パワーが、貴様らの鼻を折ってやる!」
(失敗などありえん。数百の兵、天界の武。正面から叩き潰すだけだ。俺の手柄になる)
「出撃だ!!」
「聞いてないいいいいっ!!」
こうして天界の精鋭軍団は、気合と団結を高めた状態で、再び王国へと向かった。
エンジェルも当然、報告係として同行させられた。
彼女に拒否権はなかった。
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