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番外編10 かぐや姫になった俺、ヤンデレ10人に月から連れ戻される

主人公は考えていた。


どうすれば、ヤンデレたちから逃げられるのか。


これまで数々の童話を再現させられ、地獄のような試練を乗り越えてきた。だが、どれだけ逃げても、どれだけ抵抗しても、ヤンデレたちは追いかけてくる。


もはや地上に逃げ場はない。


そこで主人公は、あることを思いついた。


「そうだ。月に逃げよう」


幸いにも、主人公には『シンデレラと秘密の舞踏会』で獲得した瞬間移動の能力がある。惑星間の移動も可能なのだ。


主人公は即座に月へと瞬間移動した。


「これなら、さすがのあいつらも追ってこられないだろう」


月面に降り立った主人公は、ようやく安堵のため息をついた。


ところが、月には月で問題があった。


怪物が出現したのである。


主人公は怪物たちを次々と撃退した。圧倒的な戦闘力によって月の平和を守り、いつしか月の住人たちから英雄として称えられるようになった。


そして、月の姫たちから求婚されるまでになった。


「あなたこそ、私たちの理想の殿方です!」


「ぜひ、私たちと結婚してください!」


主人公は戸惑いながらも、久しぶりに穏やかな時間を過ごしていた。


しかし、その頃。


地球では、十人のヤンデレたちが一斉に顔を上げていた。


「……主人公が、ほかの女性たちと仲良くしている?」


森羅万象のヤンデレは、遠く離れた惑星であろうと、異次元であろうと、主人公が女性と親しくしていることを察知できる。


そして、彼女たちは全員、主人公を心から愛していた。


「まあ。月に逃げていたのですね」


「しかも、月のお姫様たちに求婚されているなんて……」


「いけませんわ。すぐに迎えに行きましょう」


十人のヤンデレたちは、怒りと嫉妬に燃えていた。


森羅万象のヤンデレが手を掲げる。


すると、月全体に重力の異常が発生した。


「えっ、なんだ!?」


月面にいた主人公の体が、突然、地球に向かって引っ張られた。


「ま、待て! 俺は帰らないぞ! せっかく自由になれたんだ!」


抵抗もむなしく、主人公の体は地球へと引き戻されていった。


「おかえりなさいませ、主人公!」


地球に戻された主人公を、十人のヤンデレたちが笑顔で出迎えた。


主人公は絶望した。


「……なんでお前ら、月にまで干渉できるんだよ」


「愛の力ですわ!」


「そんな力、いらねえよ!!」


こうして、主人公のかぐや姫生活が始まった。


## 竹の中の主人公


ヤンデレたちは、竹取物語を再現することにした。


まずは主人公を竹の中に入れる必要がある。


魔導のヤンデレが魔法を使い、巨大な竹を出現させた。そして主人公をその中へ押し込んだ。


「おい、待て! 俺をどうするつもりだ!」


「かぐや姫は竹の中から発見されるものですわ」


「いや、俺は発見される側じゃなくて、今まさに閉じ込められてる側なんだが!?」


そこへ、竹取の翁役を担当するヤンデレが斧を持って現れた。


「それでは、竹を切りましょうね」


「おい、その斧、本気で振ってないか!?」


「もちろんですわ。竹を切るのですもの」


ヤンデレは、斧を振り下ろした。


主人公は瞬間移動で回避した。


斧が竹に食い込む。


「危ねえええええええ!!」


再び斧が振り下ろされる。


主人公は瞬間移動。


さらに斧が振り下ろされる。


またも瞬間移動。


竹の中で、主人公は必死に斧を避け続けた。


外から見れば、竹が激しく揺れ、斧を振るうたびに不自然な動きをしている。


ヤンデレたちは感心した。


「まあ! 竹の中で元気に動いていますわ!」


「さすが主人公。かぐや姫の役作りも完璧です!」


「違うだろうがああああああ!! 俺は斧を避けてるんだよ!!」


だが、主人公の叫びは届かなかった。


しばらくして、魔導のヤンデレが魔法を発動した。


「竹の中では狭いですものね。大きくして差し上げますわ!」


主人公の体が急激に成長し、竹を突き破った。


「やっと出られた……!」


主人公は地面に転がり、息を整えた。


しかし、ヤンデレたちは満足していなかった。


「せっかく大きくなったのですから、次の段階に進みましょう!」


「……次の段階?」


森羅万象のヤンデレが指を鳴らした。


その瞬間、主人公の体が重力によって地面に固定された。


「な、なんだ!? 体が動かねえ!」


「急激に成長した体には、適切な鍛錬が必要ですわ」


魔導のヤンデレが笑顔で告げる。


「さあ、ビリーズブートキャンプを始めましょう!」


「なんでだよおおおおおお!!」


## 地獄のビリーズブートキャンプ


主人公の地獄が始まった。


スクワット。


腹筋。


腕立て伏せ。


休憩を申し出ても、森羅万象のヤンデレが重力を操作して姿勢を維持させる。


「もう無理だ! 休ませてくれ!」


「あと十回ですわ!」


「さっきも十回って言っただろうが!」


「今回は本当に十回ですわ!」


その言葉を信じた主人公が十回を終えると、今度は別のヤンデレが声を上げた。


「素晴らしいですわ! では、次のメニューに参りましょう!」


「終わりじゃねえのかよ!!」


こうして主人公は、延々と筋力トレーニングを強制された。


やがて、その肉体は以前とは比較にならないほど鍛え上げられていった。


肩は大きく張り出し、胸板は厚くなり、腕には筋肉の塊が浮かび上がる。


ヤンデレたちは、主人公の肉体をうっとりと眺めた。


「まあ……なんて素晴らしい筋肉なのでしょう」


「努力の結晶ですわね」


「この筋肉を、もっと多くの方に見ていただきたいですわ!」


主人公は嫌な予感を覚えた。


「おい、まさか……」


森羅万象のヤンデレが手を掲げる。


すると、巨大な会場が出現した。


中央には、巨大な看板が掲げられていた。


月例ボディービルダーコンテスト


「なんでだよおおおおおお!!」


## 月例ボディービルダーコンテスト


主人公は強制的にステージへと押し出された。


会場には大勢の観客が集まり、審査員たちが真剣な表情で座っていた。


「それでは、選手の皆様。ポージングをお願いします!」


主人公は、周囲の圧力に耐えながらポーズを取った。


フロントダブルバイセップス。


サイドチェスト。


バックダブルバイセップス。


鍛え上げられた筋肉が、照明の下で浮かび上がる。


観客席から歓声が上がった。


「素晴らしい筋量だ!」


「左右のバランスも見事!」


「コンディションも申し分ない!」


審査員たちも、主人公の肉体を高く評価した。


そして、結果発表。


「優勝は……主人公選手です!」


会場は歓声に包まれた。


ヤンデレたちは大喜びだった。


「おめでとうございます、主人公!」


「私たちの鍛錬が実を結びましたわ!」


主人公は優勝トロフィーを手にしながら、遠い目をした。


「……俺、かぐや姫だよな?」


「もちろんですわ!」


「だったら、もう少し竹取物語らしくやってくれ!!」


こうして主人公は、かぐや姫としての名声より先に、月例ボディービルダーコンテストの優勝者として名を残した。


## 十人の求婚者


ボディービルダーコンテストが終わると、ヤンデレたちは新たな計画を発表した。


「さて、次は求婚の場面ですわね」


「竹取物語では、かぐや姫に求婚する殿方が登場しますもの」


「というわけで、私たち十人が求婚者になります!」


「……十人?」


主人公は眉をひそめた。


「原作では五人だっただろうが」


「細かいことは気にしないでくださいませ」


「細かくねえよ!」


ヤンデレたちは一斉に主人公の前に並び、恭しく頭を下げた。


「主人公。私たちと結婚してくださいませ」


「お断りだ!」


「まあ。残念ですわ」


ヤンデレたちは、少しも残念そうではなかった。


「もちろん、無理強いはいたしませんわ?」


主人公は警戒した。


この連中が「無理強いはしない」と言うときほど、信用できないものはない。


案の定、ヤンデレたちは続けた。


「ただし、私たちが用意した求婚の試練を、すべて受けていただきますわ!」


「それを無理強いって言うんだよ!!」


こうして、主人公は十人の求婚者による五つの試練に挑むことになった。


## 第一の試練――主人公の像


最初の試練は、三日以内に主人公の等身大の像を十体作ることだった。


「……自分の像を十体?」


「はい。細部まで忠実に再現してくださいませ」


主人公は困惑した。


しかし、これまでの試練に比べれば、まだまともに思えた。


主人公は三日間、黙々と作業を続けた。


そして期限内に、十体の像を完成させた。


ヤンデレたちは大喜びだった。


「まあ! 素晴らしい出来栄えですわ!」


「本物の主人公が十一人いるようです!」


「いや、俺は一人でいいだろ……」


## 第二の試練――ヤンデレたちの像


第二の試練は、三日以内にヤンデレたちの等身大の像を十体作ることだった。


しかも、注文が細かい。


「髪の流れは、こちらの角度から見たときのものを再現してくださいませ」


「衣装の刺繍も、一つ残らず再現していただきたいですわ」


「表情は、主人公を見つめているときの私でお願いします」


「……十体全部、別人なんだから当然だろ」


主人公は作業を続けた。


細部を整え、衣装を彫り、表情を再現する。


三日後、十体の像は完成した。


ヤンデレたちは感激した。


「私たちのことを、こんなにも深く理解してくださっていたなんて!」


「違う! 理解じゃなくて、注文どおりに作っただけだ!」


しかし、彼女たちは聞いていなかった。


## 第三の試練――火鼠の皮衣


第三の試練は、火鼠の皮衣を手に入れることだった。


主人公は、ようやく竹取物語らしい試練が来たと安堵した。


「よし。今度こそ、まともな試練だな」


ところが、ヤンデレたちは相談を始めた。


「火に耐えられるかどうか、確かめる必要がありますわね」


「それなら、ちょうどよい道具がありますわ」


森羅万象のヤンデレが用意したのは、ファラリスの雄牛だった。


「……おい」


「火鼠の皮衣を手に入れるには、火に耐える必要がありますもの」


「いや、そういう話じゃないだろ!」


主人公は雄牛の中に押し込まれた。


扉が閉まる。


そして、火が放たれた。


「お前らあああああああ!!」


猛烈な熱が雄牛を包み込む。


主人公は必死に耐えた。


鍛え上げた肉体と、これまでの数々の試練で培った耐久力を総動員し、なんとか生き延びた。


やがて火が消え、扉が開いた。


主人公は煙を上げながら転がり出てきた。


「……もう、嫌だ……」


慈愛のヤンデレがすぐさま主人公を完全に回復させた。


その後、ヤンデレたちは火鼠の皮衣を主人公に渡した。


「おめでとうございます。第三の試練、達成ですわ!」


「達成じゃねえよ! 何をさせられたか分かってるのか!?」


## 第四の試練――阿修羅との格闘


第四の試練は、阿修羅を倒すことだった。


魔導のヤンデレは、阿修羅の像を触媒として、本物の阿修羅を召喚した。


巨大な三面六臂の怪物が、主人公の前に現れる。


「……本物を呼んだのか?」


「もちろんですわ」


「武器や魔法は使わず、格闘だけで勝ってくださいませ」


主人公は拳を握り締めた。


これまでのビリーズブートキャンプ、ボディービルダーコンテスト、そして数々の試練。


すべての経験を生かすときが来たのだ。


主人公は阿修羅に突撃した。


拳を叩き込む。


しかし、阿修羅はびくともしない。


反撃が飛んでくる。


主人公は吹き飛ばされた。


立ち上がり、再び挑む。


殴られる。


吹き飛ばされる。


それでも立ち上がる。


しかし、実力差は歴然だった。


主人公は阿修羅に一方的に打ちのめされていった。


やがて、阿修羅を維持する召喚魔法の力が尽きた。


阿修羅は消滅した。


主人公は地面に倒れ込んだ。


「……俺は、勝ってない……」


慈愛のヤンデレが駆け寄り、主人公を完全に回復させた。


ヤンデレたちは満足そうに頷いた。


「素晴らしい格闘訓練でしたわ!」


「阿修羅を相手に、あれだけ戦えるなんて!」


「だから、俺は負けたんだよ!!」


## 第五の試練――八岐大蛇


第五の試練は、八岐大蛇を倒すことだった。


魔導のヤンデレが召喚魔法を発動する。


巨大な八つの頭を持つ大蛇が、地響きを立てて出現した。


「……また、本物か?」


「はい!」


主人公は剣を握り、八岐大蛇へと突撃した。


戦いは苛烈を極めた。


八つの頭から繰り出される攻撃を避け、隙を見つけて斬りつける。


一つの頭を抑えれば、別の頭が襲ってくる。


主人公は傷つきながらも戦い続けた。


一日目。


二日目。


三日目。


戦いは十日間に及んだ。


その間、ヤンデレたちは近くで優雅にお茶会を楽しんでいた。


「主人公、頑張っていますわね」


「ええ。とても素敵ですわ」


「ところで、このお菓子はいかがですか?」


戦場の隣で、のんびりと紅茶を飲む十人。


八岐大蛇の攻撃によって周囲の地形が破壊されるたび、森羅万象のヤンデレが何気なく元に戻していた。


十日目の夜。


主人公は満身創痍になっていた。


「くそ……。あと少しなのに……!」


しかし、八岐大蛇は倒れない。


そして十一日目。


森羅万象のヤンデレが、ようやく立ち上がった。


「そろそろ、お茶会も終わりにしましょうか」


彼女は八岐大蛇に向かって、軽く手を振った。


次の瞬間。


八岐大蛇は消し飛んだ。


一瞬だった。


主人公が十日間かけても倒せなかった怪物が、彼女の一動作で跡形もなく消滅したのだ。


主人公は呆然と立ち尽くした。


そして、叫んだ。


「最初からお前が倒せばよかっただろうがあああああ!!」


ヤンデレたちは顔を見合わせた。


「何をおっしゃいますの?」


「主人公の成長のためですわ!」


「これも大切な鍛錬ですもの!」


主人公はその場に崩れ落ちた。


## 最終試練――大陸全土を相手にした戦い


五つの試練を終えた主人公に、ヤンデレたちは最後の試練を告げた。


「それでは、最後の試練ですわ!」


森羅万象のヤンデレが手を掲げる。


大陸全土に、巨大な戦場が広がった。


そこには、ヤンデレたちを信奉する大勢の人々が集結していた。


まるで、ファイアーエムブレムの最終マップのような光景だった。


「主人公には、この大陸の人々全員と戦っていただきますわ」


「……全員?」


「はい。ただし、誰一人として殺してはいけません」


主人公は絶句した。


「それで、俺が失敗したらどうなる?」


ヤンデレたちは、笑顔で答えた。


「もちろん、私たちとの結婚生活は終わりですわ!」


その瞬間。


主人公の目が輝いた。


「……本当か?」


「ええ!」


「失敗すれば、お前らとの結婚生活が終わるんだな?」


「もちろんですわ!」


主人公は、これまでの人生で初めて、心の底から希望を感じていた。


ようやく。


ようやく、逃げられるかもしれない。


大陸全土を相手にした戦いで、誰も殺さずに勝つなど不可能だ。


ならば、わざと負ければいい。


一般人の攻撃を受け、適当なところで気絶したふりをすればいい。


これで終わりだ。


主人公は笑顔を浮かべた。


「……よし。やってやる」


ところが、その笑顔を見たヤンデレたちは、違和感を覚えた。


「……主人公?」


「なぜ、そんなに嬉しそうなのですか?」


「いや、別に?」


主人公は慌てて表情を戻した。


しかし、もう遅かった。


ヤンデレたちは気づき始めていた。


主人公は、自分たちとの結婚生活が終わることを喜んでいる。


その事実が、彼女たちの心に火をつけた。


「……主人公」


「私たちとの生活が、そんなに嫌なのですか?」


「いや、そういうわけじゃ……」


「そうですか」


ヤンデレたちは、静かに頷いた。


「それなら、きちんと試練を受けていただきましょうね」


主人公は冷や汗を流した。


## 気絶したふり


戦いが始まった。


大陸全土から集まった人々が、主人公へと押し寄せる。


主人公は戦場を見渡した。


一般人相手なら、手加減して戦うこともできる。


しかし、相手は大勢だ。


長期戦になれば、いずれ隙が生まれる。


その瞬間を待つ。


そして主人公は、作戦を実行した。


わざと攻撃を受ける。


「ぐあっ!」


地面に倒れ込む。


動かない。


呼吸を整え、目を閉じる。


完璧な気絶の演技だった。


これで終わりだ。


主人公は心の中で歓喜した。


もう、ヤンデレたちの相手をしなくていい。


もう、無理難題を押しつけられることもない。


もう、童話の再現という名目で地獄を味わわされることもない。


静かな生活が戻ってくる。


主人公は、その未来を夢見ていた。


しかし。


「……これは、気絶したふりですわね」


慈愛のヤンデレが、静かに言った。


主人公の心臓が跳ねた。


「起きてください、主人公」


反応しない。


「主人公?」


反応しない。


「……起きなさい」


それでも主人公は動かなかった。


完璧な演技を続ける。


頼む。


騙されてくれ。


これで終わりにしてくれ。


ヤンデレたちは、主人公をじっと見つめていた。


そして、魔導のヤンデレが一歩前に出た。


「……そうですか」


彼女は杖を掲げた。


「そこまでして、私たちとの結婚生活を終わらせたいのですね」


主人公は、内心で悲鳴を上げた。


まずい。


これは、まずい。


魔導のヤンデレが詠唱を始める。


「それならば……」


空間が歪んだ。


巨大な影が、大陸全土を覆った。


現れたのは、白亜の装甲を持つ巨大なモビルスーツ。


キュベレイだった。


主人公は目を閉じたまま、背筋が凍るのを感じた。


「……まさか、あれを使うのか?」


次の瞬間。


キュベレイの肩部バインダーが展開した。


ファンネルが射出される。


無数の小型兵器が空中に散開し、倒れた主人公へ照準を合わせた。


「――っ!」


ビームが一斉に放たれた。


主人公は、着弾する寸前に瞬間移動した。


直後、地面が爆発した。


轟音が大陸に響き渡る。


土煙が舞い上がり、主人公が倒れていた場所には巨大なクレーターが生まれていた。


主人公は離れた場所に出現し、荒い息を吐いた。


「……おい」


ヤンデレたちは、笑っていなかった。


「やはり、気絶したふりでしたのね」


「主人公。私たちとの結婚生活を終わらせたいだなんて……」


「そんなに、私たちが嫌いなのですか?」


主人公は叫んだ。


「いや、今のは普通に死ぬだろうが!!」


森羅万象のヤンデレが静かに告げる。


「それでは、最終試練の内容を変更しましょう」


魔導のヤンデレが、キュベレイを指し示した。


「今からあなたには、あのキュベレイを倒していただきます」


主人公は、目の前の巨大な機体を見上げた。


「……は?」


「勝てば、試練は終了ですわ」


「負けたら?」


ヤンデレたちは、揃って答えた。


「私たちとの結婚生活は終わりですわ!」


主人公は、頭を抱えた。


「結局、どっちに転んでもお前らとの結婚生活が終わるのかよ!!」


しかし、ヤンデレたちは本気だった。


キュベレイのファンネルが、再び展開する。


今度は主人公の逃げ道を塞ぐように、周囲を取り囲んだ。


戦いが始まった。


## キュベレイとの死闘


ファンネルが一斉に動いた。


四方八方から、ビームが主人公を襲う。


主人公は瞬間移動を繰り返し、紙一重で攻撃を回避した。


一つ避ければ、次のビームが飛んでくる。


二つ避ければ、別の角度からファンネルが迫る。


キュベレイは主人公の移動先を予測するかのように、絶え間なく攻撃を続けた。


「くそっ! 数が多すぎる!」


主人公は地面を蹴り、空中へと跳び上がった。


しかし、ファンネルが追尾してくる。


主人公は空中で瞬間移動し、背後に回り込んだ。


そして、キュベレイの背後から拳を叩き込んだ。


ドゴォン!!


金属装甲がへこんだ。


「……入った!」


主人公は驚いた。


鍛え上げた肉体による一撃が、モビルスーツの装甲を変形させたのだ。


だが、キュベレイは倒れない。


機体が旋回し、主人公へと腕を振るう。


主人公は瞬間移動で回避した。


次の瞬間、キュベレイの側面に出現する。


拳を叩き込む。


ガギィン!!


再び装甲がへこんだ。


主人公は、拳の痛みに顔をしかめながらも攻撃を続けた。


「俺は……!」


ファンネルが襲いかかる。


主人公はそれを避け、キュベレイの懐に潜り込んだ。


「俺は、こんなところで終わるわけにはいかないんだよ!!」


拳を突き出す。


ドゴォォン!!


キュベレイの胸部装甲が歪んだ。


ヤンデレたちは、息を呑んで見守っていた。


「まあ……!」


「主人公の筋肉が、モビルスーツの装甲をへこませていますわ!」


「ビリーズブートキャンプの成果が、こんなところで……!」


「違うだろうが! 今は感動してる場合じゃねえ!!」


キュベレイのファンネルが再び集結した。


主人公は瞬間移動で上空へと逃れた。


しかし、キュベレイも機体を上昇させ、追撃を仕掛けてくる。


主人公は空中で体をひねり、機体の頭部へと飛び込んだ。


「おおおおおおおお!!」


渾身の拳が、キュベレイの頭部に叩き込まれた。


ガァァン!!


頭部装甲がへこむ。


キュベレイの姿勢が崩れた。


主人公はその隙を逃さなかった。


瞬間移動で機体の背後に回り、肩部バインダーへと拳を叩き込む。


ドゴォン!!


バインダーが歪んだ。


ファンネルの動きが乱れる。


一機、また一機と、ファンネルが地面へ落下していった。


「よし……!」


主人公は、ようやく勝機を見いだした。


だが、キュベレイは最後の抵抗を見せた。


残ったファンネルが主人公を包囲する。


一斉射撃。


主人公は瞬間移動で回避した。


しかし、その先にもビームが待ち構えていた。


「しまっ――!」


主人公は身をひねり、間一髪で回避したものの、衝撃で地面へと叩きつけられた。


大地に亀裂が走る。


主人公は片膝をついた。


息が切れていた。


全身が痛む。


筋肉は限界に近づいていた。


それでも、主人公は立ち上がった。


「……まだだ」


目の前には、傷ついたキュベレイ。


その背後には、十人のヤンデレたち。


ここで負ければ、結婚生活が終わる。


それは、本来なら望んでいた結末のはずだった。


しかし、今の主人公にとっては、目の前のキュベレイに殺されないことが最優先だった。


「生きて帰る……!」


主人公は拳を握り締めた。


そして、構えた。


その姿は、まるで東方不敗のようだった。


鍛え上げた肉体。


恐れを知らぬ闘志。


そして、モビルスーツを相手に素手で立ち向かうという、常識外れの戦闘スタイル。


主人公は、最後の突撃を開始した。


## 必殺――ムスコクラッシュ!!


キュベレイが、残されたファンネルを展開した。


主人公は、それを見据えた。


「……これで、終わりだ」


主人公は地面を蹴った。


ファンネルのビームが迫る。


主人公は瞬間移動で次々と攻撃を回避し、キュベレイの正面へと迫った。


そして、全身の筋肉を総動員して跳躍した。


「必殺――」


主人公は空中で体勢を整えた。


「ムスコクラッシュ!!」


次の瞬間。


主人公の股間が、キュベレイの装甲へと激突した。


ドゴォォォォォン!!


凄まじい衝撃が走った。


キュベレイの機体が大きく吹き飛ばされ、地面を転がった。


装甲が砕け、肩部バインダーが無残にひしゃげる。


残っていたファンネルが次々と落下し、地面に散らばった。


キュベレイは、ついに動きを止めた。


静寂が訪れた。


主人公は、ゆっくりと着地した。


「……まだだ」


彼は、最後の力を振り絞った。


全身の筋肉に力を込める。


そして、股間にすべてのエネルギーを集中させた。


「これが……俺の最後の一撃だ!!」


主人公は叫んだ。


「ムスコエナジー!!」


股間から放たれたエネルギー波が、動きを止めたキュベレイへと直撃した。


ドゴォォォォォォォン!!


大爆発が起きた。


爆炎が空を覆い、衝撃波が大陸全土を駆け抜けた。


やがて煙が晴れたとき、そこには完全に破壊されたキュベレイの残骸が横たわっていた。


主人公は、荒い息を吐きながら立ち尽くしていた。


勝った。


ついに、勝ったのだ。


これで試練は終わりだ。


これで、ようやく自由になれる。


主人公は、安堵の表情を浮かべた。


しかし。


ヤンデレたちは、感動に震えていた。


「主人公……!」


「そこまで私たちとの結婚を望んでいらしたなんて……!」


「ええ。あの必殺技……私たちへの愛が、あれほどの力を生み出したのですね!」


主人公は振り返った。


「違うだろうがああああああああ!!」


## 最高の股間


ヤンデレたちは、互いに手を取り合った。


「ブートキャンプでの鍛錬、数々の試練、そしてボディービルダーコンテスト……」


「すべては、この日のためだったのですね!」


「ええ! 私たちは、ついに成し遂げたのです!」


十人は、主人公の方を見つめた。


彼女たちが目指していたもの。


それは、どんな困難にも耐え、どんな敵にも立ち向かい、ついにはモビルスーツの装甲すら破壊できる肉体だった。


その象徴こそ、主人公の股間だったのである。


「素晴らしいですわ……!」


「これなら、今まで以上に私たちの愛を受け止めていただけますわね!」


主人公は、頭を抱えた。


「何を言ってるんだ、お前ら……」


ヤンデレたちは、満面の笑みを浮かべていた。


こうしてヤンデレたちは、長年の試練と鍛錬の末、最高の股間を作ることに成功したのだった。


「違うだろうがああああああああ!!」


主人公の絶叫が、大陸全土に響き渡った。


これでヤンデレたちは、今まで以上に夜の生活を楽しめることになった。

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