一通目 帰郷の決意
ある蒸し暑い夏の日、僕のもとに一通の手紙が届いた。
差出人の名前は無かったので、開けてみると便箋が何枚か入っていた。
『拝啓、三好璟さま──』
一枚目の書き出しはこうだった。
『お元気でしょうか。私は元気です。
というか、私のことを覚えているでしょうか?鞠萌です。昔はよく遊んだよね。もうかれこれ10年以上音信不通になっちゃったね。一度も帰省していないんでしょう?いつも絢ちゃんがよく会いたがっているよ。メールのやり取りもしていないんだって?いろいろ気まずいかもだけれど、たまには会ってあげたら?
この手紙にも特に意味はないんだけれどね・・・ふと、元気にしているかなーって気になったから、古風だけど手紙を書いてみました。連絡先も知らないしね。会いたいな。お互いの近況をカフェなんかで話したり・・・なんてね。信じられる?私たちが高校生だった頃にはにはなかったようなカフェとかが今はあるんだよ。
あと、美嘉も!高校時代は私と璟くん、絢ちゃんと美嘉でよくつるんでたよね。美嘉は結婚して、男の子を二人授かったんだって。可愛かったよ。相手は誰だと思う?岡野くんだって。美嘉、高校時代はあんなに岡野くんと喧嘩していたのに・・・!美嘉も会いたがっていたから、皆んなで集まりたいなあ。
まあ、とにかく!思い切って帰省してみて下さい。私たち皆んな、待ってます。
大森鞠萌』
鞠萌、か。手紙を読み終えて封筒に仕舞い、ふうっとため息をつく。
俺と鞠萌と美嘉は幼馴染だ。地元は小さな町だったから、幼稚園も小学校も中学校も、高校も一緒。よく、妹の絢も交えて遊んでいた。
俺は東京の大学に進学し、それから一度も帰省していないから、あいつらともそれ以来だ。でも、鞠萌とは何となく気まずくなってしまって、高校に入学した頃からギクシャクしていた。せいぜい挨拶を交わす程度。妹と鞠萌はずっと仲が良かったのを覚えている。
美嘉とは、ずっと仲が良かった。別に、特別な意味はなく、男友達のように──気軽の話せる、さっぱりとした奴だった。学級委員長の岡野と仲が悪くて、いつもいがみあっていたけれど、そうか、あいつらは結婚したのか。
俺があの町を離れてもう15年。両親はその間にこの世を去ったが、墓参りも出来ずにいる。それは色々タイミングが悪かったからなのだが、それがきっかけで妹と仲が悪くなってしまった。祖母はまだ生きているんだろうか。
と、色々思いを馳せてみると久々に皆に会いたくなってきた。合わせる顔は無いかもしれないけれど。
「・・・帰ってみるか」と誰に言うでもなく呟く。
ちょうどお盆だから、会社も休みだ。この手紙はいい機会かもしれない。
──この時俺は、これがきっかけで人生が変わることになるとは思ってもみなかった。
鞠萌の手紙には嘘がいくつかあります。
ぜひ考えてコメントしてみて下さい!




