9話
朝になって、私の拘束は解かれた。
拓郎は全て自供したそうだ。
親父さんのことについては、私の証言もあったのか過失がつくらしい。
問題は、おふくろさんだ。
明け方、おそらく拓郎が話をしたからだろう。
数人の警官がバタバタと走り回りはじめた。
浜にでも向かったのだろうか。
拓郎に会えるかと訊ねたところ、それはできないと言われた。
お世話になりましたと伝え、駅に向かって歩き出す。
犯罪者にでもなった気分だ。
色んな汗をかいたシャツが、体が、不快で仕方ない。
電車に乗ってもまだ、憂鬱な気分が拭えない。
電車を降りる。
早々と店を開けた団子屋が目に入った。
直子に団子でも買ってやろうと思った。
みたらしとあんこの串を買い、再び歩き出す。
この先の角を曲がれば直子に会える。
自然と早足になる。
角を折れた所で、庭先にホウキをかける妻が目に入った。
思わず駆け出した。
直子がバタバタと情けなく走る足音に気が付き、振り返った。
「おかえりなさい」
妻の笑顔を見た途端に堪えきれなくなり、転びそうになったそのままの勢いで抱きついた。
「あらあら、どうしたんです?」
言いながら、私の背中に腕が回る。
私は安堵した。
「ただいま」
やっとの思いで一言絞り出した。
「頑張りましたね」
ポンポンと背中を叩かれ、子供のようにあやされる。
私は日常に帰った。
-完-




