0601 君のポケットに入りたい
とある大学のとある研究室。
現在の小暮博人の身長は15センチ程。人の掌と同じくらいのサイズの小人になった。
「んじゃ、小人実験を始めよう。
今回は小人になった上でどういう運び方をされると快適に移動できるかを小暮君、大崎ちゃんペアで実際にやりながら探っていこう」
小人になったせいか物凄い声量で聞こえる博士の声。
「小暮君まずはどれからやりたい?」
「人の頭の上ってのやりたい!
どっかのアニメで見た事あるやつ!」
俺の声もかなり小さくなっているので叫びながら答えれば大崎が俺の服の首元を掴み持ち上げた。
犬猫を掴むような持ち方で急に持ち上げられ少しの恐怖で体がすくむ。
だがそれも一瞬のことで大崎の頭が近づいてきた。
ーーー鼻を刺す刺激臭。
「あ!ちょいタイム。
戻して」
叫んで大崎に伝えれば言われるまま彼は机に戻してくれた。
「いきなりどうしたんだい、小暮君」
「すまん。大崎の頭が匂った。
これ最後に回していい?」
「ちょっと待って私臭い!?」
「興奮すんな馬鹿、耳に響く。
多分そういう事じゃなくて小人になったせいで匂いに敏感になったんだよ」
「敏感?
―――あ。身長が縮んだから物理的に体との距離が近づいて普段気にならない匂いが気になったのか」
「「あー…」」
博士の推測に納得がいき二人で思わずなっとくしてしまう。
「肌との物理的な距離で不快になったか。
なら次は掌の上で実験してみよう」
博士の提案で俺は大崎の掌に乗った。
大崎の掌は思ったよりもふかふかで立ちにくい。
「博士。これ結構重いね」
「まぁ250のペットボトルぐらいの重さだからね。
小暮君の方はどうだい?」
「掌の上の肉が思ったより柔らかくて立ちにくいな。
すわっていい?」
「お好きに」
俺は大崎の掌に立て膝を―――辞めた。
「なんかこいつの手汗が気持ち悪いわ」
「さっきからちょっと言い方にトゲがあるよね。小暮君」
「あぁ、悪い。悪気はないから許せ」
「大崎ちゃん、今回は実験だし片手にホットカイロを抱えているようなものだし汗をかくのは仕方ないから気にしちゃいけないよ」
「博士。これ直接触らない方が良いんじゃないですか?」
「うーん…そうだね。
じゃあ次は道具を使おうか」
「お、やっとアレの出番か」
実験の為に持参し、テーブルの上に置いていた犬用の籠に体を入れた。
犬より小柄ではあるがこれが犬視点。
大崎が籠を持って歩き始める。
俺は籠の格子につかまり振り動かされないようにするが―――思ったより安定している。
「これ結構乗り心地良いっすね。
犬が静かにしている理由も納得がいきますわ」
「なるほど、上々と。
んじゃ、終わり」
犬用の籠がテーブルの上に着陸し、俺は格子の外に出た。
これで実験三つ目。
小人化の前に出した案の中で残っているのはあと一つ。
「じゃあ最後ポケット行ってみるか」
「はい、行くよ」
再びつままれ今度は大崎のジャケットの右お腹前のポケットにイン。
ポケットの底に足が着くが布が前に倒れるのに対し足場が後ろにずれていくので立ちにくい。
大崎に歩き回ってもらった上で感想。
「さっきの犬籠の方が乗りやすいな。
アスレチックに乗ってる感じで少しは良いけど長時間は向かない。
後このポケット結構余裕あるのが余計足場を悪くしているからタイトなポケットで試したい」
「タイト?
尻ポケットにでも入れる?」
「チョっ!小暮君にお尻触らせるんですか!?
嫌ですよ」
「んー…あ、その胸ポケットに入れてみたら?」
「あ、それ良いかも」
「小暮君のエッチ!」
「ウッ!耳いてぇわ!!」