永遠の選択
ガバも多かったと思いますが、何とか終わらせることが出来て自分的には満足です。
後は人物紹介を適宜更新していこうかと思います。
誰も読まねえだろwと思っていましたが、予想以上に読んでくれていた方がいてビックリしました。
チラ見程度かもしれませんが、どうもありがとうございます。
―そこにいたのか、ノメリア―
あの時、朧気に聞こえたその声は、確かに聞き覚えのある声…ギルバードの声だった。
エリーは自分の顔の前に飛ばされたルナの装備の中から無線機を取り出し、エクスシスへと繋げた。それによって、グングニールは起動され、シャンバラの中心部にある広大な庭園に、そして、その庭園へと落下するギルバードに向けてサテライトキャノン”必中の神槍:グングニール”が放たれた。
「グング…ニール…!!」
彼は天空から迫りくる巨大な光線に対して、咄嗟にシールドを展開する。それは彼が今出せる、全身全霊の力を振り絞ったものであった。その刹那、超高エネルギーのサテライトキャノンとギルバードが展開したシールドが激突する。
「きゃっ…!!!?」
強烈な閃光がエリーの眼へと飛び込んでくる。辺り一面真っ白な世界で、サテライトキャノンを防ごうとするギルバードの姿がそこにあった。それが見えた一瞬、彼は空間に吸い込まれるように消え、耳を射抜くほどの爆音とともに放たれた衝撃波が、エリー、そして、ルナを壁の方へと乱暴に吹き飛ばす。
「ぎゃあああああああ!!!!!!」
それからしばらく経って、エリーとルナは目を覚ます。辺り一面は半壊しており、その中心であるシャンバラの庭園は言うまでもなかった。大きな煙が空へと舞い上がっており、彼女たちは暫し放心し、それをぼんやりと見つめていた。
「……終わったんですね…。」
「…そうね。」
「セブンスさんとアランさんは…。」
暫く経っていたのだが、無線には彼らからの応答は全くなかった。ルナの諦め気味な発言に、上手い返しを思いつかなかったエリーが本部に連絡しようと無線を取った時、セブンスから連絡が入ってきた。
『こちらセブンス!ルナ、生きているか!?』
「セブンスさん!」
『エリーか?ルナはどうした?先ほど、凄まじい閃光と衝撃が走ったが…。』
「ちょっとわけあって、ルナの無線を使ってるわ。ルナも無事よ。」
『そうか、よかった…。ということは、あの人…ギルバードは…。』
「グングニールの一撃で消滅したわ。」
『そうか…。遂に終わったんだな…長官。』
彼のその言葉から少しばかりの哀愁が感じ取られる。
「セブンスさん?」
『…おっと…すまない。少し現実味がなくてね。それはそうと、すまないのだが、そこにはルナもいるよな?先に二人で中央管理室へと向かってくれ。先ほども言ったように最下層にある。案内板があるから、行けば分かるはずだ。』
「アンタは来れないの?」
『アランさんの応急手当てをしています。それが終わり、彼の容態が落ち着いたら向かいます。』
少し落ち着いたのか、セブンスは敬語口調に戻す。アランの無事を聞いたルナは安堵の表情を表した。
「良かった…!」
『加えて、ジェイドとアンバーも無事です。どうやら、黒い九尾が彼女たち目がけて光弾を放ったらしく、直撃はしなかったものの、少し気を失っていたとのことです。』
「皆、無事だったのね!」
「無事ではないけどね…?とりあえず、その中央管理室ってところに向かうけど、セキュリティとかどうすんのよ?」
『その点はあまり心配しなくていいと思います。この状況下で、新たにセキュリティをかけていることはないと考えられます。以前にかかっていたセキュリティについては、無駄な手順を省くために、あの人自身が解除しているはず。』
彼の説明にあまり彼女は納得していない様子だった。
「そんなこと言って、かかっていたらどうすんのよ?」
『その時は、その時です。とりあえず、向かってください。本部への状況報告は私の方でしておきます。』
それを最後に無線は切れる。エリーは肩をすくめて、やれやれといった感じで首を横に振る。
「案外テキトーなのね。」
「ま、まあ…言われた通りに行きましょうか?」
その時、エリーは思い出したかのように非常に嫌な表情をする。
「どうしたんですか?」
「そういえばさ…最下層って、言ってたじゃん?…エレベーターって…動いているのかな?」
「あー…。」
一抹の不安を抱えながら、彼女たちはエレベーター前へと到達する。エリーの不安通りに、先ほどのサテライトキャノンの影響で、エレベーターは使用不可となっていた。
「ざっけんな!!このっポンコツがぁ!!」
悪態をつき、扉に思いきり蹴りを入れるエリーを見て、若干引き気味なルナ。
「仕方ないので、階段で行きましょう。」
そうして彼女たちは最下層まで階段で向かい、道中難なく中央管理室までたどり着く。エリーが心配していたセキュリティの問題はなく、彼女たちはすぐに電力が集中されている区画を発見することができた。
その区画はさらに下の階層にあり、それは秘匿された区画であった。
「ここが最下層じゃないのかよ…ちっ。」
不機嫌そうにエリーは舌打ちをする。
(…この人、無理かも。)
彼女のガラの悪い態度に改めて距離を置くルナ。そうは思いながらも、先に進むために彼女は口を開く。
「このマップだと、エレベーターで繋がっているみたいですね。」
「そうね…。だとしたら、方法は一つね。」
エレベーター前へと到着したエリーはその扉をこじ開ける。そして、発煙筒を点火し、それを落としておおよその距離を測る。発煙筒は10mほどのところで地面に落ち、その仄かな明かりが下層の扉をぼんやりと照らした。
「…それほど深くはないようね。ワイヤーを伝って降りれば…。」
二人はワイヤーを伝って、下へと降り、扉をこじ開けて秘匿された区画へと足を踏み入れる。不思議と他の階層と雰囲気は同様で、これといった違いは特に感じなかった。暫く、廊下を進むと扉が見え、二人がその近くに行くとそれは自動で開いた。
外から見た限りでは、必要最低限の機械が置かれた研究室の様で、奥の方には窓と扉があり、窓の向こうは明かりがついておらず真っ暗だった。二人は念を入れて、警戒しながらその部屋の中へと足を踏み入れる。
「これは…。」
先ほどは死角で見えなかったが、実験机の上に腐敗しかけたリリンの中級種と思われる死体が載せられており、何らかの実験で使用していたのか、それは解剖されていたようだった。
「くっせ…!何なのよ、これ!?」
エリーがその悪臭に悪態をついた時、部屋に機械的な音声が流れる。
『ギルバード・スペンサー様の敗北の様で。』
「誰!?」
二人は銃を構えて部屋の中を見渡す。しかし、そこにはエリーとルナの二人以外存在しておらず、人の気配もない。
『これは失礼いたしました。私、この施設の簡易AIであります。ギルバード・スペンサー様より、貴方方への録音データを賜っております。』
二人は目を見合わせる。
「…録音データですって?」
ルナがAIに返答する。
『そうです。ギルバード・スペンサー様は、貴方方、旧人類との生存競争に敗れた時のために、私に録音データを託しております。いかがなさいますか?』
「…再生して。」
「しょうがないわね。」
二人は警戒を解き、AIが再生したギルバードの録音データに耳を傾ける。
『この録音が再生されているということは、生存競争に私は敗れ、旧人類の君らが勝利を収めたということだろう。まずは、おめでとう。この勝利を誇ると良い。そして、その君らに伝えておきたいことがある。私の話を聞いてくれ。』
「伝えたいこと…?」
「悪い知らせかしらね。」
『“NEO HUMAN PROJECT”…。新人類ホモ・エクセルサスを生み出すための計画。ホモ・エクセルサスである、この私の遺伝子と、母…LILITHの遺伝子を用いて、新たなエクセルサスの種を生み出す。知っての通り、旧人類の君らの遺伝子内には、遥か昔に授かったLILITH遺伝子の痕跡が複数存在している。LILITHは生殖ウイルスを通じて、自身の遺伝子を多種族に感染させ、その種族に大きな進化をもたらす。』
『それは、自身の遺伝子をより長く残すための策略であり、直接的な子を成さない遺伝子の繁栄を意味する。だが、これには制約があり、何度も同じ生物種に遺伝子を組み込むことはできない。感染による遺伝子の組み込みは、既に組み込まれた自身の遺伝子を破壊する恐れもある。そのためか、LILITH遺伝子はある程度感染した宿主種に、自身の生殖ウイルスへの抵抗性を与えてしまう。』
『つまり、人為的な介入がなければ、ホモ・サピエンスを含む、現在の地球上の多く生物種はそもそも、この生殖ウイルスには感染しない。そして、遺伝子は常に、その生存競争にさらされており、環境の変化による不可避の変異、組み換えによって、その存在は揺らいでいる。LILITH遺伝子も例に漏れず他の遺伝子同様に、何かの拍子に遺伝子プール内から消え去る可能性がある。』
『実際に、LILITH遺伝子のいくつかはそれらによって破壊され、イントロン部分に痕跡として残っている。そのため、LILITHとしては、何らかの方法で再感染を起こさせたかったはずだ。しかしながら、彼女の寿命は限界を迎え、時間は多くはなかった。数億年生き延びてきた彼女であっても、残念ながら、死に抗うことはできない。だが、LILITHの遺伝子はより長く生き残るために、新たな手段を生み出した。』
『一つは私の存在…何の偶然か、LILITHの生殖ウイルスは私の実母の生殖細胞に感染し、進化種であるエクセルサスを生み出した。そして、もう一つがウエストハイランド島で起きた風土病。あれは同種間での感染力を高めた生殖ウイルスを産生するための中間体であり、この計画に斬新なアイデアを与えてくれた。まあ、結局のところ、彼女たちは失敗作ではあったのだが。』
『さて、そこで私はより良い方法を考え出した。今いる人類種を掃滅しつつ、我がエクセルサスを生み出す方法を。…それは、感染した対象をエクセルサスの胚を生み出す、母体のような中間的な存在に変えてしまうというものだ。私はそれをNewly Embryo – Organizing Species…N. E. O. Sと名付け、そして、それを生み出す起源種NEO LILITHを作成した。』
『検証実験ではそれは上手く機能した。しかしながら…実際には、この計画は失敗していた。それに気が付いたのは、つい最近の事だったが。』
「…失敗した?どういうこと?」
『ここ最近、ある種の違和感を覚えていた。そのため、私はN. E. O. Sの中級種を捕獲し、その原因を調べ上げた。そして、その違和感の正体が判明した。』
『悠久の時代から遺伝子は、それが発生し今日に至るまで、自身の存在を残そうとあらゆる術を使ってきた。遺伝子は全て利己的で、その存在を残すことにすべてを費やしてきている。…そう、本来N. E. O. Sはエクセルサスを誕生させる中間の存在であったのだが、N. O. E. Sはそれ自身の遺伝子を残すために進化をしたのだ。』
『詰まるところ、N. E. O. Sはエクセルサス誕生の単なる足掛かりではなく、N. E. O. Sという種になったのだ。そして、今や彼らは集い、融合し、新たな体を得るために広大に広がった母体を形成している。あれから何が生まれるのか…それは正直分からないが、私、そして、君らにとってもいいものではないことは確かだ。』
「もしかして…領域“異界”の事?」
「あれから、何かが生まれるって?冗談じゃ…」
二人はそれを聞いて、あることに気付いた。LILITHを目にした時に脳内に届いたあの声の意味を。内にあるLILITHの遺伝子は既にこの事実に気付いていたのだった。
『なので、私も最後の手段を残しておいた。そして、君らは選択をしなければならない。』
「選択…?まだ、何かを隠しているっていうの!?」
すると、部屋の奥の電源が付き、窓の外の景色が露になった。二人は誘われるように窓の近くに歩み寄り、その外を覗く。そこは広い部屋であり、巨大な長方形の棺の様な機器に“生命の樹”が描かれていた。そして、そのセフィラにあたる部分に10基の培養器が配置されており、その中には人型の影が見える。
「なんなのよ…これは…!?」
『“生命の樹”…セフィラにあるそれらは、私が作成したホモ・エクセルサス達だ。万が一、NEO HUMAN PROJECTが失敗したことを想定して、あらかじめ用意をしていた。』
「これ全てが…エクセルサスですって!?」
エリーは狼狽しながら培養器を見下ろす。ギルバードと同様の力を持つと考えられる個体が、その眼下に、それも複数体存在することがとても信じられない様子だった。
『さて…君たちは彼らを殺すか、彼らとの共存を目指すか…選択をしなければならない。どちらを取ろうが、それは責められない。勝者の当然の権利だからな。だが…私だったら、殺してしまうことを選択する。これまでの人類の歴史…そして……カオリ。同族すらをも平気で虐殺する人類が、他種族との共存なんぞ不可能だと、火を見るよりも……。』
「……。」
その声色は明らかに、諦めを含んだ悲しげなものだったが。それから一白置いて、録音が続く。
『いや……違うな。心のどこかでは…願っているのかもしれないな。…あの日の夢を……。』
『……ふっ……我ながら…何とも、馬鹿らしい。』
その言葉を最後に、彼の録音は終了した。
―その後、シャンバラに保管されていたホモ・エクセルサス達は一旦、NRAS本部の保管室に移され、冷凍保存されることとなった。彼らの処遇は、NRAS高官と政府要人の複数の会議の結果により、慎重に判断をされることになる。
あの日を境に、事態は好転していった。今まで通信が途絶えていた各国のRAS研究所と連絡がつき、その状況も判明した。各国共に厳しい状況に陥ってはいたものの、N. E. O. S特攻のウイルス兵器“三天使の護符”により、その状況は打破される見通しである。
そして、本格的に地上を奪還するために、彼らはN. E. O. Sの巣窟となった、広大に広がる領域“異界”へと足を踏み入れる準備に取り掛かっていた。そのため、“三天使の護符”の大量生産を実現させるため、各国は一つとなって研究を進めることとなった。
新人類ホモ・エクセルサスとの生存競争はギルバードの死と共に終結を迎えたが、新たな生物種となったN. E. O. Sとの生存競争が休むことなく人類に降りかかる。彼らは彼らの遺伝子を残すために、この星に拡大したLILITHの遺伝子、そして、それを持つ人類を駆逐するために新たな体を纏って動き出す。
この星の悠久の歴史の中で、幾度となく行われてきた生存競争。その競争の勝者が誰であろうとも、敗者が惨めに消えゆくとしても、この星は絶えず変わりなく回り続ける。そこに憂いも、情けも何もない。ただ、有限の大地と海を与えるだけ。
そこに残り続けるために、遺伝子は、生物たちは長き時代に多くの選択をし、ある種は繁栄し、ある種は滅びた。そして、その選択は続いていく。これからも、遺伝子が残り続ける限り、永遠に。
暇になったら自作も書くかも。




