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13 自覚

13 自覚




50年の差異を埋めるかのように、オレは色々と活動した。

あちらに負けるかと、金を稼いで色々買いあさったりもしてみた。

かつて、珪素土の関連で出た金80トンを売ったのだ。


グラム5200円にまでなっていた金は、80トンで派手な資金になった。

4160億もあれば、相当な物が色々と大量に買えた。

もちろん一気に換金した訳じゃない。

使っては換金、使っては換金の繰り返しで、見事に使い切っただけだ。

もっとも小銭は残っているが、億の単位はもうない。


女の品も男の品も大量に買った。

かつて、自作したのがまだあるが、性能において雲泥の差なのは改めて分かった。

だがあれはあれでいい。

だから女のほうを余計に仕入れたんだが、資金の半分はやり過ぎたかも知れない。

4億袋、24枚入り、こんなの使い切れるかよ。

ああ、世界の女性の皆さん、品切れはオレのせいです、ごめんなさい、くくくっ。


後は紙おむつを始めとした、ベビー用品も大量だな。

10万の赤子育成分ぐらいはボックスに入れてある。

紙おむつは大人用も買ってある。

老人対策には有用っぽいし。

それにあれは高分子吸収シートがあるからな、ああいうのも向こうには無い品。

とにかく理解すれば構築も可能ってんだから、ありとあらゆる品を買って突っ込んだんだ。


もちろん、この世界群から抜けたらスキルは終わりになるかも知れないが、そうじゃなければと思ってな。

将来的に全てを構築するなら、その資料は必要だ。

だからこそと思っているが、果たしてどうなるかな。


     ☆


ハモンと過ごすようになり、かれこれ10年が経過した。

オレは時々解くから18才の見てくれのまま、ハモンだけがおじさんに・・


「おっさん」

「くそ、ずるいぞ」

「んなもん、暗示で別の分家になりゃ良いだけだろ」

「適当なのが居ねぇんだよ」

「ならもう止めちまいなよ」

「そう簡単に言うなよな、折角作った立ち位置なんだからよ」

「旅行行こうぜ、旅行によ」

「何処に行くんだ」

「お前も残り少ないし、オレも怪しくなっている。下手に10万切ったら戻れねぇからよ、ここらで補填しに戻ろうかと思ってんだ」

「そうか、そうだな。オレも確かに残量僅か。頼めるか」

「準備は良いか」

「もう良いのかよ」

「現在、12万と少し。余裕は2万しかないんでな」

「かなりギリギリだな」

「さて、行くぞ」

「おし、来い」


【世界間転移】


「うお、落ちる」


【ひしょう】


「うっくっ、悪いな」

「なんの、そういう設定なら仕方無いさ」

「やれやれ、お前にはもう隠せんな」


最寄の街に到達し、入街税を支払ってそのまま宿に。

金貨1枚の宿なのでやたら豪華である。


「おいおい、こんな宿とか、高級過ぎねぇか」

「仮で入るような奴は、普通なら安宿に泊まる。ところがオレ達はそうじゃない。つまり、訳ありだ」

「何か意味があるんだな」

「貴族のぼっちゃんとかがな、そんな訳ありを使うんだよ。金だけはあるからな」

「さすがに慣れてるな」

「よし、今夜は楽しませてくれよ」

「今夜も、じゃないのか」

「なんだ、不服か」

「ふふふ、そんな事は無いさ」


     ☆


すっかりリフレッシュして翌日、オレは6割ハモンは1割。


「どんだけ隠してる。たった20万やそこらじゃないだろ」

「まあな、しかし、見せるのは拙いのは分かるだろ」

「山さんにか」

「また微妙な符丁を使うな。ああそうだ」

「まあ、分かるよな、普通。40万のオレが6割回復すんのに、1割とか言われたら」

「1ヶ月あれば回復するはずだ。それまで頼むな」

「よし、旦那に会いに行くぞ」

「オレとの事は良いのか」

「ふふん、今更だろ。それに目くじら立てるなら離縁だ」

「男尊女卑の世界か」

「あいつ、情報収集に女を使っていてな、有用な情報の礼はたっぷりだ」

「確かに封建社会そのものだな」

「いかに建前とは言え、自由と平等で生まれたもんには、ちょいと刺激がな」

「だから里帰りにかこつけて冷却期間か」

「あれで寝所に引きずり込んでいたりしたら、ジエンドさ」

「10年なら分からんぞ」

「命の恩人なのにな」

「喉元を過ぎれば忘れるものさ、それが人間だぞ」


     ☆


ふらふらと館に入ろうとすると、知らない女に咎められる。

聞けば当主夫人と言うが、後を継いで娶ったらしい。

爺さんに話を聞こうとするも、オレが分からないと言いやがる。

親父もオレを初めて見るかのような目で見るとなるとこれはもう・・


「これは凄いな。そう思わないか、ハモン」

「やれやれ、これはさすがに庇えないな」

「狭間にイッテラー」

「え、どうしてそれを」

「お前な、堕とされたのは罰だろうが、そんな好き勝手に動いて、許されると思ってんのか」

「これぐらい良いじゃないの。こんな田舎の小さな領主の妻になるぐらい」

「あのな、その立ち位置はこいつのなんだ」

「だからどうしたってのよ。アタシはもう10年もやってるのよ。居ないほうが悪いんでしょ」

「開き直ったよ。どうしよう、ハモン」

「アンタもそいつに依存しているんでしょ、世界内存在如きが。アタシはね、これでも元管理なのよ。アタシが本気になったら、アンタなんて・・」

「そう思うならやってみろよ、婆さん」

「死になさい、クラッド・デス」

【反転同期】

「嘘・・そ、そんな、ありえ・・」

「お前も周到に煽ってんじゃねぇよ」

「さあさあ、地域調整がんばって」

「お前も手伝うんだよ。ほら、抜けろ」

「へいへい」


共に身体から抜けて収納・・精神体で周囲の浮遊素子を集めて広域暗示。

《しっかしよ、これが魂の欠片ってのもシュールだよな・・そういうものさ・・けど、マナと似てるからすぐ慣れたけどな・・よし、もう良いぞ・・囲んだぞ・・おしっ》


確かに鮮やかだね。熟練を感じさせる調整・・これがハモンの実力って訳か。

到底及ばないが、いつか必ず・・さて、微調整ぐらいはやりまっせ。


(あいつも筋が良いと言うか・・教えて数年の腕じゃねぇぞ・・どんだけの素地があんだよ)


     ☆


今更の立ち位置調整は止めて、彼女は人形になる。

つまり、ハモンに忠誠を誓う生きたアンテナだ。

普段はあっちの世界に居ても、何かあったら連絡をしてくる。

そういう存在、使ってたんだろ、王子様。


爺さんと親父には因果を含ませ、それぞれに納得させる。

忘れたままでも良かったが、そいつはオレの未練だな。


「悪しき存在とはの」

「それで良いのか、サツキ」

「うん、アタシ、あっちで暮らすから、このまま静かに暮らしてなよ」

「たまには戻るのじゃぞ」

「分かってるよ。じゃあまた」

「もう戻るのか」

「うん、あいつ、気が合うの」

「同じような存在かの」

「だからかな」

「なれば良い」

「じゃあね」


     ☆


「良かったのか」

「見てよ、幸せそうじゃない」

「ああ、そうだな」

「アタシじゃああはいかないわ。あんなに慕うなんて事、やれないし」

「対等にはなれない世界か」

「それでも良いって人じゃないと、ああいう人の奥さんにはなれないわ。だから平民がやっとね」

「平民はいけたのか」

「巣立った跡継ぎはそれっきり、里帰りの習慣とか無いのね」

「とことん男尊女卑だな」

「女は家で待ってるもので、買出しも何も男の仕事ってね」

「そりゃ無理だろ」

「うん、だからもう良いの」

「さて、これからどうするか」

「ケモシティ行きましょ」

「おいおい、あそこは拙いぞ。オレはこっちに来れない事になってるんだからよ」

「じゃあさ、2人して獣人で遊ぼうよ」

「そうか、その手があったな」


あれからかなり上達し、ハモンの手ほどきもあって、喋る猫は出来ました。

あの時はいきなり楽しもうと思ったけど、化け猫騒動になっちゃって・・それっきりお蔵入りです。

くそぅ、念願の喋る猫だったのに、騒いでんじゃねぇよ、おばはん・・

あれから長靴を履こうと思ったのに、大騒ぎするからそれっきりになっちまったじゃねぇか。


それはともかく、オレは猫獣人、ハモンは・・やれやれ・・


「まさかそんな趣味とはな」

「いや、可愛いだろ、この耳とかよ」

「野郎がウサミミとかキモいんだよ」

「そこまで言う事はねぇだろ」


さすがは獣人の楽園だけの事はあって、地下鉄もタダで乗れるようだ。

他にも色々と便宜を図ってあるようで、オレ達は十二分にリフレッシュした。


「なんて言うか、逆ウラヤスランドって感じだな」

「デストリーランドの事か」

「ああ、そんな名だったか。地名で呼んでたぞ」

「確かに逆と言えば逆だな」

「なぁなぁ、将来的に面白い立ち位置があるんだがよ」

「こっちでか」

「今はまだ平和だけど、争いになったらって条件な」

「ここか」

「この地下さ」

「成程な、お前、餌場にしたいだけだろ」

「良いじゃねぇか、動かないんだから消費しても」

「そういう話になるとすっかり上だな」

「染めた奴に言われたくねぇよ」

「はぁぁ、まあそうだな」

「な、な、な、良いだろ」

「そうだな、そういうのも良いか」

「やったぜ」


     ☆


今日は帰る前の修練です。

地下迷宮もどきに上の都市をそっくりコピーする修練・・


「しっかしこんなスキルもあるとか、大盤振る舞いだな」

「で、どう、腕のほうは」

「しかしな、お前、マナで構築してんのか」

「いや、混合だけど」

「うおい、そんな当たり前に言う事かよ」

「混合秘法ランクなし。しかもパッシブ」

「うぐ、どうなってんだ、この世界。やり過ぎだろ」

「恐らくだけどよ、デュアルシステム採用だぞ、この世界」

「どういう意味だ」

「つまりな、オレと相良のスキルは似て非なる物って事だ」

「う、確かにな。そう考えねぇと、あいつのあのスキルの説明が付かん」

「あいつは混合をオリジナルでやったようだが、オレはスキルに入っているってか」

「確かにそう考えると2つのシステムだな」

「あっちの上はどんな奴だ」

「どんなと言われてもな」

「名前だけでもダメか」

「そうだな、まあ、それなら多分・・キツネだ」

「じゃあこっちはウルフだ」

「待てよ、それって」

「まあ、狼の恩恵ってなってるしよ」

「そう言う事かよ、成程な」


    ☆


しかしな、キツネとかウルフとか可愛いよな。

それに比べてオレはマッドさんかよ。

ううむ、なんかこう、可愛い愛称付けてやろうかな。

ううむ、イツキ・・五木・・ゴキ・・いかんいかん。

それは可愛くねぇぇぇ・・


アナグラムも考えてみたが、どうにも思い付かない。

キツイ・ツイキ・キイツ・イキツ・ツキイ・・全部却下だ。

そうなるともっと別の・・そうだなぁ、何が良いかなぁ。

《そうだ、お前、ミドリはどうだ・・何か聞いた事あるよ。

そういう女優居なかったっけ・・うっ、妙にスッキリすると思った

・・良いよ、マッドで・・ま、また考えておくからよ・・うん・・》


     ☆


10年の研鑽はオレの実力をかなり上昇させたようで、ハモンさまさまである。

というか、領地が妙にくたびれていたので、抜けて地域の要領で活性化しておいた。

以前ならこんな事でも必死の思いだったのに、ちょっと思い付いてやってくる、てなもんだ。

それにしても、オレも悪い遊びを覚えたものだ。

盗賊を発見し、早速、その存在を吸収する。


もうね、夜のアレとか比べ物になんないの。

残りの盗賊まとめてボックスに入れてさ、後の楽しみにするぐらいだ。

空中に漂いながら、心地よい感覚を堪能する。

いや参ったね。まさかこんなに快感だとは・・


ソウルイーターと称号に書かれたので、本当にソウルをイーターしてみたんだよ。

その周囲の精神体も一緒にね。

それが存在吸収ってスキルなんだけど、そしたらメチャ派手な快感が来てね。

女の時のあの快感がさ、もう純粋に心に響くと言うかさ。

肉の身無しでだからさ、気だるさ無しの純粋な快楽なんだよ。


初めての時は丸一日漂ってたよ。

丸一日快楽が続くんだからさ。

余韻って言うのかな、もう堪らなくてさ。

あれは副作用無しの麻薬と言うか、とてもヤバいものだ。

自制しないと、全員食っちまいたい欲に染まりそうだ。


《お前、また食ってたな・・そういうスキルだからな・・そんな事、他の世界で許されると思うなよ・・分かってるさ。これは世界内存在の特権。超越者になっちまったら犯罪だよな・・分かってるなら良いが・・世界をまたぐと超越者か・・そうだ。そしてそういう存在に管理のスキルは効き辛い・・だから超越者か・・もちろん、熟練管理はそうじゃないが、新米とか手も足も出んぞ》


こんな調子で10年間、ひたすら教わった結果は派手なものだ。

すっかり上の事にも詳しくなり、世の真理を知るに至る。

あっちの黒服とかもかなり襲い、今のストックはフルになっている。

すなわち、LP吸収は、99999/99999・・なんだよな。

本来、こんな事は許されないんだそうだ。

まあそうだよな。世界の中の魂は管理の所有物と言われるのに、それをかすめ取っている訳だ。


《ほらほら、特権だぞ、食え食え・・む、ま、まあ、世界内存在がそうしろと言うなら、仕方が無いな・・くくくっ》


渡すとペロリと食らって快楽の波・・雰囲気ね・・確かにこれは止めるな。

止めないと存在滅亡になっちまう。

それぐらいの快楽なのさ。


《盗賊、お土産に持って行って良いかな・・いや、解放しといてくれ・・うえっ、折角ボックスに入れたのに・・向こうで集めれば良いだろ・・黒服ね・・ああ、向こうのほうが多くて、だからあいつが案内人でこっちに移しているんだからよ・・んじゃあさ、こっちで魂解放して向こうで集めたほうが早くない?・・確かに早いが、普通はいきなりそんな事はやれんぞ・・オレが変わってるだけか、くくくっ・・全く、とんでもない素地を受けたもんだな。たった10年ですっかり上の存在かよ・・後は相良が取った、オレの美少年な身体だけだな・・あれがお前のとはな。やけにハンサムだと思ってたが、あれじゃかなりモテたろ・・2才で捨てられて独力研鑽して後の死だぞ、そんな暇あるもんか。これからって時に力尽きて、身体は回収されて再利用されたって訳さ・・あいつ、あの見た目、かなり気にしてたぞ・・銀の髪と紅い瞳はな、初代の血を色濃く受けた者の証でな、あの一族の中じゃ英雄か神様扱いだぞ・・今でも存在しているのか・・それがさ、堅牢に作ったオレのほうの台地は良いが、元々の村の台地が崩壊しててさ、殆ど滅亡寸前になってたよ・・それはまた酷いな・・元の村の倍の面積を確保してやったのに、それを全部畑にするからだ・・用法のミスか・・もういいさ、あんな村》


バカだよな。そっちに移り住んで元の村を潰して畑にすれば良かったってのに。

古いほうの台地に人間がやたら増え、家も立派なのを建てまくり、基礎を掘りまくった結果、土台ごと崩れてあのトンネルも潰しちまいやがってよ。

ちったあ考えて行動しろよな。

人の苦労を何だと思っているのか。


そもそも、オレは何であんなに同胞の為に尽くそうとした。

干渉波でも食らってたか?

なんかそんな感じって事は、そいつがシナリオか。

逸脱したつもりがすっかり管理の手の平の上か。

まあそれが世界内存在ってものだしな。

抗うなど普通はやれない事らしいし。


しかしあれが全て違う世界の話だとはな。

似たような世界を並べて構築し、あたかも時が戻ったような感覚を植え付けられたもんだが。

あんなにそっくりな性格の親を意図的に作るとか、本当に人形扱いしてんだな。

舞台=管理、主演=オレ・・てなもんか、くくくっ。


だがもう、ここでのオレの役割が終われば、観客になるって事だ。

色々と制限はあるが、手の平から本当に逸脱し、自分の意思で動ける存在になる。

特権階級の奴隷より、貧しくても自分の意思で生きられるほうが良いだろ。

少なくともオレはそのほうが良いと思っているさ。


さて、ボックスの盗賊も全て渡していくらかにはなったし、そろそろあっちに戻るかね。

1つだけ残したこいつを味わってから・・


《うお、こら、やめ、解放すんな・・意地汚いぞ・・ちぇぇ・・》


    ☆


2人はどうやら研究の方向に向くらしく、オレが作った日本家屋風のあの家に住んでいくらしい。

トイレもちゃんと水洗にして、温かい便座やら尻洗い魔導具も付けてやったから満足してくれると良いが。

あのトイレの汚物は地価15階に繋がっていて、あちらと同じくスライムの巣になっている。

後は地下11階まで各地の都市を模して構築してあり、避難区域としては問題あるまい。


防衛立国産まれだから恐らく、あいつは亀のように領地を固めて過ごそうとするだろう。

だが、封建社会がそんな国、放置するはずがない。

攻めなければ弱いと言うのがあいつらの常識だから、恐らく何度でも襲われる事になるだろう。

そして堪忍袋の緒が切れて、統一国家にまで進むかどうかってところだな。

そうなった時、それを良しとしない者達の避難場所の確保のつもりで拵えたけど、そのまま地下で

おとなしく暮らせるかと言えば実に怪しいところだ。


きっとしゃしゃり出て他の住民を危険に晒し、全て回収されてしまうのが今から読めて情けない。

オレが統治すればそうはなるまいが、そんな事はやる気にもならん。

だから時代の流れでいつかは・・そう遠くない未来、あれも全て込みで統一国家の所有物になるだろう。

オレは既に半分は傍観者になっているけど、あいつは世界内存在として過ごしている。

だからあんなに当たり前にサイエンスハザードをやるんだな。

かつて、南の国で他人のそれを非難しといて、自分も同じ事をやる。

それを不思議に思えないのが世界内存在って、横から見ていれば本当に操られているって分かるな。


あれで首都が代わった南の国だが、あいつは気付いてもいないだろう。

そこに住む、無垢な存在もまとめて滅ぼしたという事に。

あいつは誘導のままに王都を滅したが、そこに住むのは王族だけじゃない。

その他大勢の罪も無い者達のほうが多い。

本気で王族だけを省きたいなら、暗殺でもすれば良かったんだ。

それをせずに都市ごと潰すとか、自覚して耐えられるのか?お前。

お前が今住んでいる領地の民を、そっくりまとめて殺すようなものだぞ。

数人の悪党の為に、それをされてお前、怒らずにいられるか?

かつての首都の親類の仇とか言われて、矛を収める事が出来るか?


まあいいさ、向こうは向こう、こっちはこっちだ。

いつか・・そう、いつか必ず振り返る時が来る。

その時に、それを自覚して乗り越えないと先は無いんだからな。

悪徳でも善良でも同じ魂を持つ存在として、必要ならどちらも殺せないと意味は無い。

無意識にやっているお前だが、自覚して尚やれると言うなら、オレより遥か上だ。

オレも頭では理解しているんだが、さすがにまだ善良な民を食らうってのはやれてない。

そういうのはここが終わってから考えるつもりさ。

甘いと言われようと、それぐらいは構わんだろ。


なんせ今は特権階級の奴隷なのだから・・


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