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12 交流

12 交流




そこまで考えて、ふと気付く。

あのLP・・あれを使うのが当たり前な種族なんじゃないかと。

余剰切捨てこそが、そいつの取り分なんじゃないかと。

てことはだよ、オレも仲間になれって言ってんのか。

つまり、元は人間だった存在が、そういう存在に変わったって事か。

それを進化と呼んで良いのかどうかは知らないが、人を遥かに凌駕する能力の数々となれば、進化なのかも知れないな。


そしてハイクラス。


それこそが上の存在、ハイクラスって事なんだろう。

育てて余剰分を食いながら、それでも仲間を育てていく・・か。

それなら何とかまだ理解の範疇だ。

ただの食事として飼われているなど、気力も何もあったもんじゃねぇ。


だけどそれは恐らく無い。

ただの家畜にこんなに用意周到に、ヘルプとかする訳が無い。

修練の手助けになるようにヘルプに色々な情報を仕込み、先に進むたびにそれを少しずつ開放してくれる。

そんなのが、そんな奴が家畜のつもりとか、あるはずがねぇじゃねぇか。


少なくともオレはそう信じたい。

だからオレは全てのスキルを獲得しよう。

それが恐らくは・・その存在の願いに叶う事に・・なると良いがな。


     ☆


しかし何だよな。


あいつはやっぱり封建社会で生まれ育った存在か。

だからいかに馴染んでも限界ってものがあるようだ。

オレの知恵の産物を享受はするが、オレはあいつの女としての位置取りしか求められていない。

だから自分の持ち物が勝手に誰かと接触するとむくれるんだ。

自分は好きに女を抱いていても、自分の女がそうなるのは嫌なんだな。


オレが気付かないとでも思ってたのかよ。


殊更に修練とモノ作りを楽しんでいたが、あいつは女とよろしくやっていた。

元々一夫多妻な環境にあったんだし、特に抵抗も無かったんだろうけどな。

闇化で探れば、あちこちに自分の手としての女を配し、それで領地の掌握をやってんだ。

情報を男に貢げば愛してくれると思えば、そりゃ一生懸命に情報を得ようとするだろうさ。

しかも相手は次期領主となれば、愛人にでもなれれば生涯左うちわだ。

召使いにかしずかれての優雅な生活を夢に見て、今も情報を集めているんだろう。


封建社会は男尊女卑、女はモノであり人形であり、男が好きに出来る代物ってか。

オレも男やってたけど、そんな考えには賛同出来ねぇな。

やっぱりオレは自由と平等を建前に持つ、こっちの世界の生まれなんだからよ。

親父は送り込むにしても、オレはしばらくこちらで過ごしてみようかと思っている。

だって故郷なんだし、それぐらいの権利はあってしかるべきだろう。


50年振りに戻ってよ、すぐ帰れとかそんな理不尽、言うようなら終わりにしてやる。

そもそもが白金貨100枚で身請けしようと思ってた男だ。

こっちの意思なんてはなっから無いと思ってんだ。

たまたまほだされたから良いようなものの、そうじゃなかったら泣き暮らす事になったろう。

はぁぁ、いかんな。今まで色々と目を瞑っていたのに、考えるといくらでも出てくるぞ。


それこそ100年の恋も覚めるぐらいにな。


これもあいつのスキルの弊害なのかも知れん。

まだ影響が残ってんのか、イツキよ。

《頭がぼんやりする・・まだ眠い》

そうか、それならそれでいい。ゆっくり寝てろ。

《ごめん、あるじ》

良いさ。


     ☆


どうにも色々と思い出す事がある。

いわゆる前世の記憶というやつだ。

これもあのスキルの影響の結果かも知れん。

導きなのか違うのか・・どちらにしても、出て来たものは仕方が無い。


その記憶によると、オレはかつて男と女を体験したようだ。

だからどちらも抵抗無くやれるのだろうと思っている。

この前、デパートに展示されているピアノを弾いてみた。

初めてのはずがやけに素直に指が動いてよ、妙な懐かしさも感じたんだ。

だからかつて、ピアノを弾いていたんだろうと思ったのさ。


後はつらつらと思い返してみた。


まずは気配の察知。

かつてのオレは、自衛隊やら特殊部隊やらの経験があるらしい。

しかも最前線の紛争地帯で数年間、ゲリラから隠れて活動もしていたらしい。

そんな経験を持つ奴が、気配に気付かない訳が無い。


次はマナの取り扱いだ。

いかに爺さんから教わったからと言って、無い物をあるようにとか普通は無理だ。

しかもいきなり熟練みたいに動かせるとか、かつての経験が無いと不可能だろう。

そういう記憶もあるんだよ。

かつて、あちらの世界で幼い頃に捨てられて、独力で力を付けて同胞を救おうとして力尽きた記憶がな。


まあなんだな、両方の体験があればさ、夜の生活に対する倫理とかどうでも良くなるぞ。

だから別に旦那が誰と寝ようと関係ないし、オレが誰と寝ようと関係無い。

ただの生殖行為に色々と権威を付けたいのは男の心理、快楽ならどうでも良いのが女の心理。

両方知れば夢も希望もありゃしない。

あるのはただ、本能に操られる存在があるだけだ。

オレもその存在の一種なら、赴くままにすればいい。

どうせこの身は仮初の代物なんだし、楽しければそれで良いさ。


しかしな、やけに殺しに対して心が揺れない訳だ。

最初の人生の初の殺しが15才、次は8才ときたもんだ。

そりゃ揺れねぇわ、くくくっ・・


しかも、最初の人生じゃ軽く100以上だしさ、2回目もあっさりと殺ってるし、その次もそうだ。

そんな奴が今更、殺しで揺れたりするもんか。

やれやれ、当時は倫理がおかしくなっていると思い込んでいたが、そういう記憶が無意識で働いていたんだな。

その切欠は知らないが、それのせいで色々と出て来たんだろう。

ああ、もしかしすると、幼い頃のアレが原因か。


ある種のカルチャーショックとでも言うべきか。

あれで自分を取り巻く世界が変わったんだっだな。

中学の頃、たまたま見ちまったんだ。

クラスの奴の竿をよ。

自分のと余りにも違うその大きさに、オレはあれで・・

ああ、くそぅ、忘れてたのによ。

思い出したらムカつく。


くくく、オレもまだまだ人間としての欠片が残ってんな。


まあいいや。

さて、もうじき帰る頃か。

メシはアレで良いと、風呂は沸かしたし。

『ピンポーン』

やれやれ、自分の部屋に入るのに呼び鈴を鳴らすかよ。


「おう、帰ったのか」

「ああ、疲れたぜ。風呂、沸いてんのか」

「ああ、風呂かメシかオレだ」

「ふふふ、そういうのも良いもんだな」

「よし、風呂の中でメシ食ってやるぞ」

「おいおい、一気にかよ」

「さあさあ、新しい試みは、誰かがやらんと始まらんぜ」

「おい、本気かよ。待て待て待て」


     ☆


「お前な、オレっ娘は良いが、外でやるなよな」

「仕方ねぇだろ、オレはこっちのほうが合ってんだからよ」

「まあなぁ、オレも今更、そういう拘りは無いがな」

「世間体か、面倒なこった。そんな事よりもう良いのか」

「さすがに風呂の中で食いながらと言うのは無理があるぞ」

「心配無い、こいつは魔法炊飯器だ」

「コードレスじゃなかったのかよ」

「コードレスだろうが。まあ、電気も使ってねぇが」

「それで感電しないとか言ってたのかよ」

「電気無しで感電とかあり得ないぞ」

「確かに防水の観点から言えば、便利だとは思うがな」

「売れないかな。防水炊飯器」

「ふふふっ」


親父を送り届け、爺さんに預けた後、その報告と帰郷を告げた。

旦那は少し渋い顔をしていたが、50年振りって事でしばらくは良いが、早く戻れとか、やはりモノ扱いが見え透いている。

あばたもえくぼか、そこまでオレは鈍らされていたのか。

そう考えたらますます冷めていく感情を感じていた。

どうせ5人の妾がいるんだし、そっちに慰めてもらえよと、もう少しで口に出しそうになったのは内緒だ。

気付かない振りをしている限り、破綻の無い夫婦生活ってやつだ。

それがあいつの望みなら、死ぬまで好きにさせとけばいい。

どのみちもう、若返りは出来ない身体なんだし、好きに過ごせば良い。

オレも供給する予定は無いからさ。


やっぱりさ、一度終わった恋の再燃は、何かと色々弊害があるみたいだな。

あいつも一度人生をやって、封建社会にどっぷりと染まったんだ。

あの若い頃なら修正も効いたろうが、今更もうどうしようもない。

その切り替えがやれないと、誘致しても恐らくは無理だろう。

だからその死と共にお別れになる。

だから好きにさせておこうと思ってんのさ。

ただな、転生ってのがもう1つ残されている。


しかも記憶付きの転生だ。

オレに接触をしないって条件を呑むなら、そいつをやってやろうと思っている。

オレもどうやら何度か転生したみたいだし、あいつもそういう経験で変わるかも知れん。

それならチャンスをやろうと思ったのさ。

それで変わるようなら見込みがあるとな。

記憶があって尚、同じ事の繰り返しならもういい。

魂が磨り減って無くなるまで、好きにしていればいい。


     ☆


今日はハモンと共におでかけになる。

かつての記憶のままに、そして経験のままに男として同行する。

スーツに身を固め、オールバックでサングラス。

ふむ、こういう格好も妙に懐かしいぜ。

何度かやった経験があるんだな。


「出来たか・・うおっ」

「行こうぜ、アニキ」

「何処のマフィアだよ、てめぇはよ」

「もちろん、フランスの」

「前世の記憶かよ。マジで経験者かよ」

「ジュニア、大成したのかねぇ」

「名前は何だ」

「カルロ・・うっ、ま、まさか、嘘だろ」

「カルロと言えばかれこれ80年前の・・」

「いや、あっちの世界でのオレの・・最後を看取った・・」

「気付かなかったのか」

「あいつ・・そうだったのか。道理で馴染むはずだよ」

「また出会えるさ」


「あ、そういや、孫の子を産んだんだ」

「お前も滅茶苦茶やってんな」

「あいつ育ててみるかな。もしかすると、誘致されてる可能性も・・」

「あり得るな」

「お前、養子にしろ」

「待てよ、今日はこれから仕事だからよ」

「ほお、展示会に行く仕事か」

「うぐ、何故それを」

「警備の仕事が聞いて呆れるぜ。てめぇの趣味じゃねぇかよ」

「いや、ちゃんとした仕事も請けてんだ。そのついでにちょっと軽くな」

「ああ、軽く仕事をして、本格的に楽しもうと」

「逆だ、逆」

「さあさあ、行くぜ、展示会へ」

「仕事だぁぁぁ」


     ☆


そうか、それで馴染んだのか。

カルロ・・あの子に宿っていてくれよ。

いつか育てるその日まで、ゆっくりと眠っていてくれ。


それはそうと、孫の子と言っても、ありゃクローンみたいなものだしな。

なんせ仮初の身体なんだし、遺伝子とかある訳無いだろ。

だから細胞を受けてただ、複製するだけの機能しかねぇよ。

だから月の物も無いんだし。


ただそのメカニズムを完全には理解出来てないんだよな。

だから物質の再構築はやれても、人間には至らないと言うか。

今は猫だな。

けど、喋れない猫じゃ意味が無い。

意思の疎通を可能とする猫、これが今の課題だ。

完成したらそれに宿って活動してみたいと思ってんだ。

だからやる気も出るんだけど、これがまた難易度がやけに高くてよ。

しかも人間はその遥か先だろ。


まあ、道の遥かを思って萎えたりはしねぇけど、遅々とした歩みはちょいと焦るぜ。

あれがやれたら大型化して、そうしたら獣人だ。

獣人ってのは人間の再構成の途次にある存在なんだろう。

誰か練習しやがったな、とか思わせる存在なんだけど、迷宮の主辺りがやったのかも知れんな。


社会の裏で魔法整形とか面白そうだが、ハモンにバレるとヤバそうな予感だ。

あいつ、とぼけているが、恐らくは上の関係者だ。

今は罪人みたいな立ち位置で、刑期短縮と引き換えとか言ってるけど、そんなもんじゃねぇだろ。

そいつは相良向けの設定だろうから、オレに使うなよな、意味が無いから。


そういや相良のあの身体、ありゃオレのだろ。

くそ、身体泥棒が出やがったぜ。

くくく、なんてな。


「何か嬉しそうだな」

「いやな、かつてのオレの身体を使っている奴を発見してな、殺して奪おうかと思ってんだ」

「おいおい、かれこれ何年前の話だよ。まだ生きている訳が無いだろ」

「それが生きてるんだよな。いやぁ、懐かしい身体だぜ」

「そいつはどんな奴だ」

「青山祐二」

「おい、待て、それはいかん」

「くくく、ご苦労な事だ」

「お前、何処まで知っている」

「そう気配変えなさんな、モロバレだからよ」

「ふうっ、かつての経験か、それは」

「ああ、分かるぜ。お前の雰囲気の微妙な変化で、何を考えているかもハッキリとな」

「やれやれ、波までかよ」

「専門用語は知らねぇけど、そういうのを使っているのは分かるさ。後な、干渉するスキルは止めてくれ」

「うっ・・」

「あれさ、後々に影響が出るんでな、今度やったら倍返しだ」

「待てよ、あれまで使えるのかよ」

「空間魔法ランク99・反転同期」

「うがぁぁぁぁ、そんなもんを入れるかよ」

「なんだ、転移妨害系のスキルかと思えば、何にでも使えそうじゃねぇか」

「てめぇ、嵌めやがったな」

「そうかそうか、それなら遠慮なく使うぞ【反転同期】」

「う、待て、今は、くっ、うぐぅぅぅ」


ふん、甘いぜ。

ほお、色々分かったぞ。

つまり、オレの心を覗いていたんだな。

はっきり言うならオレの前世を探っていたと。

だからお前の所属が分かっちまったと。


「落ち着けよ、大地君」

「はぁはぁはぁ・・何処まで見た」

「怖い怖い」

「頼む、言ってくれ」

「合言葉だけだ」

「どんな・・まさか、嘘だろ」

「在りし日に」

「うわぁぁぁぁぁ」

「後は分からん」

「はぁはぁはぁ・・ま、まだ、それなら」

「世は全て」

「知ってるじゃねぇか」

「だからな、飛び飛びに来たからよ、川柳か何かと思ってな」

「まあそんな感じだ」

「在りし日に、思い描いたその心、この世は全て、事も無ければ。お、何か良い感じ」

「百人一首風だけどよ、心臓に悪いからそれはもう止めてくれ」

「悪かった、諜報員の身分のあかしとか、暴かないから心配するな」

「ぐっ・・」

「大変な任務だよな。罪人の振りまでして相良の監視してよ、ご苦労様だよ」

「うっ・・」

「しかも、相良はそれに気付いてないから、あたかも仲間の振りして裏で監視だろ。辛い職務だと思うぜ」

「うっく・・」

「更に言うなら」

「まだあるのかよ」


「おたく隊」

「そ、それは違う」

「誰かに言われたな。つまり合ってる訳だ」

「てめぇのその洞察はどうなってんだ」

「恐らくだけど、基本は誰かの表層辺りでな、その誰かってのがおたく隊の命名者じゃねぇかと思ってるさ」

「お前・・よくそれで崩壊しないな。そんな自分を客観視とか、よくやれてるな」

「ふふん、オレは魔導体って人外になった経験持ちだぞ。その程度の事で崩壊したりするかよ」

「とんでもねぇ事になってんな」

「だからよ、オレはこの身体には固執しないのさ。誰と寝ようと関係ねぇ。壊れたらまた作れば良いんだからよ」

「作れるのかよ」

「くくく、まだだけどよ、そのうち必ず作るぜ」

「確かに元は相当なもんだろうな。いきなり人間になれる境地じゃねぇ」

「その素地あればこそ、僅か4回目の生でこうなれたと思ってくれ」

「4回か・・それでも普通は無理だな。つまりはそう言う事か」

「オレも入るぞおたく隊」

「だからその名前は止めろぉぉぉ」


     ☆


ふふん、崩壊なんかするかよ。

オレには既にその経験があるんだからよ、なあ、イツキ。

お前だってオレから分かたれた存在。

表層から生まれたのなら、オレがそうだとして何で壊れる必要がある。

むしろ、そうやるのが上のやつらの、繁殖のようなものじゃないのか。

自らを磨いて研鑽して、そして分離に至るか。

それならオレはそいつの子供みたいなものだろ。

子が親の欠片として、それで崩壊するかよ。


おや、何か会話してやがるのか。

まるでテレパシーのような・・

いかんな、今のオレでは察知はしても傍受は無理か。

思考でやる通信・・思考通信で反応を見てみるか、くくくっ。


「終わったか」

「う、何がだ」

「あれ、上司と思考通信してたろ」

「嘘だろ、聞いていたのかよ」

「こらこら、その殺気は反転するぞ」

「くそ、やり辛ぇな」

「許可が出たんだろ、なら誘致するだけだ」

「盗聴とかする奴、誘致出来る訳がねぇだろ」

「してないぞ」

「嘘を言うな。許可の話を聞いていたんだろうが」

「あれ、本当に許可が出たのか、ラッキー」

「またカマを掛けやがったな」

「そういう心理トラップに弱そうだな」

「い、そんな事はねぇ」

「連想ゲームで試してやろう」

「すんな、オレはしねぇからな」

「誰かにやられたか」

「仕事するぞ、おら、こっちだ」

「教師」・・・「先生」

「先生」・・「てんて・・」

「それはいくら何でも」

「ううううう」

「てんてい、おしっこ」

「うがぁぁぁぁ」


     ☆


まさか先生で終わるとはな。

鑑定やら判定やらうんていやらと、色々類似語考えてたんだが。

宗教のトップと言えば、一神教のあれとか多神教のあれとか。

だから天帝と言うのもひとつのトップに該当する。

まさか最初が正解と言うのもなんだが、本当に脆いな。

つまりそれだけ純真な生まれを持ってんだな。

恐らくはモノ作りだろう。

オレも何かを作る時にはそんな心境になるしな。

そこでハモンと来れば、刃紋だろ、やっぱし。

日本刀の刃の模様のあれだろ。


そんなのを名前にしようとか、たたの刀好きじゃないな。

サムライと言うのも違うとなれば、これはもう刀鍛冶ぐらいしかない。

刃物に魅せられ生涯をそれに賭し、ただ純粋に生きたからこそ昇れたんじゃないのか。

恐らく邪なのは無理なんだろう。

そんなに誰もが昇れるのなら、とっくに上はそんな存在で溢れているだろうし。

そもそもそんなに広い門なら、こんな世界で生きる存在なんか居ないって事になる。

そうじゃないからこそ、狭き門だからこそ遣り甲斐があるんだよ。


難しければ難しい程、道が遠ければ遠い程、遣り甲斐ってのは沸くもんだ。

確かにちょいと焦りは出ているが、それはオレが未熟なせいだろう。

精神体での寿命がどれだれあるか知らないし、もしかしたら無いのかも知れない。

だから本当は焦る必要は無いはずなのに、未熟を思って焦ってしまう。

そう思うからこそ未熟なのに、まだまだそこまでは至れんか、情けないものだな。


警備の仕事は無事に終わり、ハモンはそわそわとし始める。

もっとも、仕事と言っても単なる名目、本家から金を渡す為の処置のようなものだ。

会計監査の対象になっても困らない処置というやつだろう。

裏の仕事を表に見せかける為の芝居のようなものだが、必要だからやっているって感じか。

そうやって立ち位置を確保して、世界の中での役割をこなしながら、本来の任務をこなす・・か。

大変そうだし、心理的にもきつそうだけど、面白そうでもある。

許可が下りたのなら将来は、そこに身を投じるのも悪くない。


在りし日に求めたる想いか・・世は全て事も無く、平穏であって欲しい・・か。

そんな事を考える上司なら、仕え甲斐もあろうってものさ。

いい職場じゃねぇか、なあ、ハモン・・


どうやら就職先が決まったようです。

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