キャラメイク
旧世界は崩壊した。
核戦争があった訳ではない。自殺するのに核爆弾は不要という当たり前の事に、人々が気づけなかっただけである。
きっかけは借金まみれのとある国がホワイトと呼ばれる麻薬を大量生産して、世界中へばら撒いたことだ。
それに各国は対抗しようとしたが、大衆のほとんどが戦争するより麻薬中毒患者が増える事を黙認した。
人々はホワイトの脅威を知らなかった。否、知ろうとしなかった。
無味無臭であらゆる飲食物に混入し易いだけでなく、皮膚からすら摂取可能な麻薬。それは宗教、各種セミナー、美容系エステ、健康食品、などなど色々な方法でばら撒かれた。ただ麻薬密売人から買わなければいいなどと考えてる大衆は、何も知らずにホワイトの中毒患者となっていった。
このような国家主導の国際犯罪に対して、防ぐ手立ては戦争以外ない。だがそれでも、人々は戦争を忌避した。
その結果、人類の半数以上が麻薬中毒患者となり、その麻薬は市民権を得ることになった。
たとえ、ホワイトが人類から気力と生殖能力を奪うものだとしても。
そして莫大な富が舞い込んだとある国だったが、その国の国民もまたホワイト中毒患者ばかりだった。
こうして世界からまともに労働する人々が激減、生産能力が著しく低下し、各国で食料難となる。
その対策として各国では遺伝子研究が盛んになった。食卓に並ぶのは遺伝子操作されたホワイト混入の食べ物ばかりになり、それが日常となるころ、静かに人類に溶け込んだ異物がいた。
それがONNAと呼ばれる生命である。
外見的特徴は人類の美女そっくりだったが、オンナは人類を殺し始めた。人類が使う武器や道具を、人類よりもよっぽど上手に使って殺していく。その能力は人類を逸脱しており、まともに戦って勝てる相手ではなかった。
くしくも、世界中の人々が忌避した戦争を圧倒的不利な状況で経験することになった。
こうして新世界が始まった。
時が流れるほど人類は激減し、そして世界の覇権をオンナが握った。
だが、人類にはまだ生き残りがいる。
彼らは国家とも呼べないほど小さなコミュニティを各地に作り、オンナから隠れるようにしながらしぶとく生きていた。
クソ長いゲームのオープニングムービーを見せられたオレは江口一。健全な男子中学生だ。中学の知り合いからはエロイチと呼ばれているが、大した意味は無い。小学生の頃に学校で将来の夢を聞かれ、先生の前で正直にAV監督と答えただけだ。
それ以来なぜか周囲からエロイチと呼ばれてる。まあ、ちょっと人より間違って女子トイレに入ったり、うっかり女子更衣室に入った事がある。その程度の平凡な変態男子だ。
間違っても覗きや盗撮などした事がない。いたって健全な中学生活を送ってる。
それなのに風紀委員だけでなく、全校生徒の半数の女子から毎日蔑まれた眼差しを向けられていた。
そんな最高にゾクゾクする学生生活を無料で送ってるオレは、世界中の変態から羨望される日々だろう。
なにせ現役女子中学生100人以上から蔑まれる環境など、大富豪でもなければ実現不可能だ。
だからなのか、男子から好意的に接してこられることが多い。
その中には父さんも含まれる。
恐らく他の家に比べて、ウチでは父と息子の関係は良好といえる。
今も父さんに買って貰ったPCでゲームをしてるくらいに。
ちなみに、エロ関連については母さんには内緒だ。これは男の秘密というやつ。たとえオレのPCに父さんのお宝フォルダがあっても、それは父さんなりの夫婦円満の秘訣なのだ。
そして叔父さんから届けられる自作エロゲも同じ。
PC関係に弱々な母さんが、定期的に変更してるログインPWを突破出来るとは思えないし、仮に突破しても、この手のフォルダはキーワード検索しなければ見つからないようにしてある。
はっきり言って母さんには無理ゲーだ。もしそれでも突破されたら、全責任はオレがとる。
父さんや叔父さんに迷惑をかけない。これが、男の約束ってやつだ。
で、たった今、叔父さんが作ってるゲームがアーリーアクセス(早期アクセス)可能か調べるためテストプレイし始めた訳だ。
とりあえず、なんとなくゲームの世界観はわかった。
曰く、オンナと呼ばれる謎の生命体に人類は負けたわけだ。ぶっちゃけ、オープニングなどこの一行で済ませて欲しいものだ。とはいえ、説明が好きな人もいるか。
叔父さん専属のテスター兼デバッカーとしては、これも意見としてメモしておこう。
そして画面はキャラメイクになった。
かなり自由にキャラメイクが可能らしく、項目がたくさんある。
性別
男;人類系コミュニティと友好になりやすく、オンナをテイムするのが難しくなる。
女:オンナをテイムしやすく、人類系コミュニティとの関係が悪化しやすい。
つまりどちらの性別を選んでも、一長一短ということらしい。それより気になるのは、オンナをテイム出来るというワードだ。
流石叔父さんが作るゲームだけあり、よく分かってる。なにせオンナは人類では無いと明言してるのだ。なにをしても非人道とはなるまい。まして、オンナは人類の敵なのだから。
とりあえず、性別は男を選ぶ。
理由は簡単だ。オレの性癖がチョロインを拒絶するからだ。
体型
身長:高いほど高所に手が届き、低いほど小さな場所に入れる。
筋肉:あるほど重量を運べ、無いほど柔軟になる。
体重;重いほどノックバックに耐性がつき、軽いほど水や食料の消費が少ない。
これまた一長一短だ。とりあえず『柔軟』にカーソルを合わせると、注釈が表示された。
それによると、柔軟なほど怪我をしなくなるらしい。
非常に悩むところだが、デバッカーとして極端なキャラを作ることにした。
まず、身長は最低にし、体重も軽く、筋肉も最低にする。
その理由は、叔父さんの作るオープンワールドゲームで一番多いバグはスタックだからだ。いわゆる地形に挟まって抜け出せなくなるバグ。それを調べるのに適したキャラメイクにした。
年齢:高いほど初期ポイントが増えるが、獲得する経験値が減る。
つまり年齢が高ければ最初から自分のキャラを強く出来るってことらしい。が、同時にレベルアップする楽しみが減る。
また、このポイントとやらを割り振ってステータスを上げるらしいが、現状ではどのステータスを上げるのが有効なのか分からない。
まあ、叔父さんが作るゲームだから、どのステータスを上げてビルドしても、一長一短あると思う。
だから、最低年齢の7歳にした。
これだとレベル7からスタートであり、全てのステータス項目に1ポイント割り振ってある状態だ。
体力:1
素早さ:1
器用:1
賢さ:1
魅力:1
耐性:1
幸運:1
これがオレの初期ステータス。項目は大体のゲームと似たり寄ったりといったところ。
少し変わってるとしたら、耐性の説明に毒や麻痺だけでなく、睡眠不足やストレス障害、薬物依存なども記載されてるところか。どうせ色々とデバフをかけてくるのが容易に想像できる。
特殊能力
実にたくさんあるが、そのほとんどがロックされている。アンロックする為の条件も記載されてるから、その条件を満たしてからポイントを使うと取得出来るみたいだ。
少し確認しただけだが、『水中で呼吸出来る』や『高所からの落下ダメージ無効』など割と人類をやめてる系のものばかりだ。
どちらにせよ、ポイントがないので取得出来ない。
あとは細かいところだ。
髪の色だとか瞳の色、眉の形や口や鼻、髪型や化粧など、ありきたりなキャラメイクだ。あと胸やアソコのサイズも変更出来る。そういえば、アソコのサイズが変更出来るゲームで、大きくし過ぎると、服のテクスチャを突き破りモロ出しになるバグがあったな。基本的にゲーム内容に影響が出ないこれらの項目については、デフォルトのままにしたが、念のためアソコのサイズだけはデカくしようとした。だが、はっきり言って大き過ぎるとバランスが悪い。マジで3本目の足になりかねない。正直キモ過ぎる。
よって標準サイズに戻した。
さてと、キャラメイクはこれで終わりだ。
さあ、ゲームを始めよう。




