番外編 暇になるという事
「何故そのようなことを」
と、その他はよく口にする事がある。
その度に説明してやらねばならないのはとてつもなく面倒くさい。
「暇だったから」
というと、誰もかれも私を見る目が揺らぐ。
「暇が理由は変か?」
使い魔のカラスの頭を撫でながら、平和な日常が訪れる度に嫌気が差す。
「ああ、暇だ」
暇とは罪だ。退屈で、そして私の存在意義を否定する。
しかし、残念な事に“暇”を罰する法が存在しない。困ったものだ。
「あぁ、ならば私が法になれば良いのか」
混沌を世界に滴し、、ばらまく。
ほんの少し、それだけであちこちで争いや戦争が起きる。
少しだけ、暇は紛れた。
そんな日々を過ごしていたある日。
「テスカトリポカ様、なんでも石盤に25柱目が刻まれたそうですよ」
その報告に、興味が沸いた。
そこに記されていた、アーサー・ペンドラゴンの名前と…。
「(テスカトリポカ ティベリアの独裁王 -2年 082日か。なるほど)」
マイナスとなった、己の寿命の表記。
「(お前はやり過ぎた、もう用はない。そう言いたいのか。アナザー)」
そんな時ですら、混沌の魔は差す事をやめない。
「……ついに待望のお世継ぎですか、おめでたい」
「あれ、でもマーリン妃の四人目のお子様は、“また女児”だったと聞いた気が。これは失敬」
「しっかし、長い間24だったのに。25柱目か。不吉だ」
テスカトリポカの名前を、そっと撫でる。
他の守護者よりも、文字が薄い。
さて、寿命がマイナスとはどうしたら良い?
その内消えるのか?
「まぁ、当面の暇は潰れる、か」
そんな事を思ったが、声に出してしまっていた。
そして、あの女は立ち止まり…、鉄面皮を少し歪ませた。
「テスカトリポカよ。国を本気で担っているのなら、暇にはならない。なるはずもない」
この女の言葉はいつも、毒のようにじわじわと侵食して不愉快だ。
「もし、暇なのならば…、それはそこがお主の底だということじゃ」
ああ、痛い事を眉も動かさずに言うものだな。
「(痛いこと?)」
国を本気で担っているなら暇が潰れる?
だからあちこちに争いの種を仕掛けてやってるんじゃないか。
「(つまり、感謝されこそすれ、批判されるなんて心外だ)」
きっと、この女が一番暇を潰してくれるのだろうが…。
「……私の事より、浮気の激しいゼウスを何とかされたらどうだ?」
オーディンのように、相手はしてくれなさそうだ。
「……やっぱり暇になるんじゃないか」
だからこそ、アーサー・ペンドラゴンの成長は少しの暇潰しとしては楽しみでもあり…
「(ルンビニからしか来れなくしたのは失敗だったな)」
アーサーがルンビニからこちらに向かうと使い魔から聞いた時、「あの国から“レア”であるアーサーとネメアは無事には出れまい」という少し残念な気持ちと。
「あの色を金にしたら、どれくらいの腹が満たされるやら」
そう呟いて、、急速に興味が失せていく。
「私が手を出す必要もなくなったな」
テスカトリポカの視線は……もうルンビニを向いてはいなかった。
体調不良の為少しズレます。
本編は4月2日予定になります。




