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挿絵(By みてみん)


初日はお昼過ぎに終わった。

クラスメイトたちも荷物をまとめて、教室を出て行く。

悠真はまだ数人の女子と話していた。

「優奈、帰ろう」

教室を出ようとしたら、優奈が止まった。

「じゃあ悠真君! また明日ね!」

悠真が振り向いた。

「ああ待って、俺も帰る。じゃあまた明日な」

悠真は女の子たちにウインクした。

ときめきの眼差しで見送っている。

優奈は校舎を出るまで笑いを堪えていた。

「悠真君のウインクにときめく女の子、久しぶりに見た気がする」

「小中はほぼ顔見知りだから、俺のウインクはもう通じなくなってたからな」

凪が目を細めた。

「いずれ高校でも、通じなくなるって」

「なんだよ。さっきの女の子たちは、俺のウインクが効いたから、こうしてお前と一緒に、いて!」

凪の一撃がおみまいされた。

優奈はクスクス笑っている。

「あなたたちって、ほんと昔から変わらないね」

「私たちの友情もずーっと変わらないよ」

悠真は左右を見ている。

「そういや、美咲と里奈はどうしたんだ?」

凪がスマホを取り出した。

「先に終わったから、帰るって。私たちも帰ろう」

新前橋駅のホームには、初日を終えた近郊の高校生がいた。

アナウンスが入った。

電車がホームに入る。

電車が揺れ、優奈が窓の外を眺めながら言った。

「ねえ、凪は部活決めた?」

「うーん、正直迷ってる」

「私もそう。国立大学目指すなら1年生のうちから、じっくり対策したいし。悠真君みたいに、運動も勉強もできれば、部活もやりたいけど」

「そうか?」

悠真は背を向けた。

「そんなできた人間じゃないよ」

凪は息をはいた。

「優奈はすごいな。入学の初日から、もう先をみているなんて」

優奈は手を振った。

「そんなつもりじゃないの。ちょっとテンション高くなってただけ」

最寄りの駅に着いた。

改札を通り、優奈と別れる。


夕暮れが近づいていた。

凪がぼそっと言った。

「…悠にも、悩みってあるんだね」

悠真は吹き出した。

「何言ってんだよ。俺に悩みなんてあるわけないだろう」

凪は悠真の目をじーっと見た。

悠真は鼻で笑った。

「あんまり見つめてると、勘違いされるぞ」

「優奈の会話、はぐらかしたでしょ?」

「ああ、その話か」

悠真は歩調を早めた。

凪は小走りをする。

「だって悠の学力なら、県で一番の高校に余裕で行けたでしょ? どうして…」

悠真はガクッとうなだれた。

「あそこ、男子校だぞ。俺は女の子にモテたいんだ!」

「呆れた、そんな理由だったの!?」

「それ以外に何がある。可愛い制服の女の子が歩いている高校に行きたかったんだ!」

「——心配して損した」

「なんだ? 俺のこと心配してくれてたのか?」

「さっきまでね!」

凪の一撃が炸裂した。



——進路か。考えてもいなかったな——

夕食中でも、凪は忘れられなかった。

母が心配げに凪を見る。

「どうしたの凪?」

「なんでもない。帰り道、優奈と進路の話になったの思い出したの」

「優奈ちゃんは昔からしっかりしている子だからね。で、どこを目指しているの?」

「国立大学だって」

母は驚いていた。

「だから部活どうしようか悩んでいるんだってさ」

父が話に入ってきた。

「悠真君も国立を目指すのか?」

「悠は…」


——そういえば、結局教えてくれなかったな——


凪は思い出して、イライラした。

「可愛い制服を着た女の子にモテたくて、黎明にしたんだって」

父は笑った。

「彼は頭の良い子だ。きっとどこでもやっていけるよ」

ふん、と凪は鼻を鳴らした。

「ごちそうさま」

凪はキッチンに食器を置いた。

入浴を済ませて、髪を乾かす。

2階の自室へ行って、ベッドに飛び込んだ。

部屋の明かりを常夜灯にする。


気持ちがいくぶんか落ち着いた。


——悠のあんな態度は珍しい——


——知られたくないことがあったんだ——


「一緒にいるのが当たり前だったけど、知らないこともあるんだな」


凪は小声でつぶやいた。


「私の知らない悠がいる」


——当然よね。別々の人間なんだから——


凪のまぶたはゆっくり、落ちていった。

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