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Schwarz Drache ~黒き竜の少女と果て無き旅の果てに~  作者: 戦艦ちくわぶ
Ⅰ La ragazza nera(黒き竜の乙女)
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Cannonball(激突)

 ライマは変身をしロープを結び付ける間もなくエリアが飛び乗るとすぐに飛翔した。高度を取っている暇はないので、超低空を僅かばかりの風をつかみながら飛行するその芸当はまさに飛竜族でなければ不可能な技であった。それでもそのまま飛び続けることは出来ないため、時折後ろ足で地面を蹴って再び高度を稼いでいた。

 エリアは、今までライマの上で感じたことのない速度を直接感じながらも不思議と恐怖は無くただ焦りばかりが彼女の意識を占めていた。

 遠くでは、左方から何か巨大なものが突然現れこちらに迫っていることに気づいた賊たちが仲間にそちらにも攻撃を仕掛けるように指示していた。半分がライマの方に割かれ、弓を引き絞る。始め彼らは馬に乗った集団が現れたものと考えていたが、それがそんなものではないと気づいたときには既にライマの大きな頭が数騎を吹き飛ばしてしまっていた。

 速度が乗っていなかったとはいえあまりにも猛烈な速度に加え、鎧をまとった竜の突進は馬も人間も引き裂いてしまうのに十分すぎるほどの衝撃であった。吹きとばされた者たちは、体を四散させ百メートルそこらは右方へと飛び散っていく。地面に激突して転がっていった破片は激突の衝撃と転がったことによりただの肉塊となり果てそれが馬だったのか人間だったのかすら判別がつかぬほどに変わり果ててしまっていた。

 あっという間に通り過ぎていった物体の正体も認識できぬまま、彼らは恐怖に駆られる。もう一度突進を受ければまたいくらかの犠牲が出てしまう。そうなる前に少しでも散開させられれば良かったが、ライマはそんな余裕を彼らに与えようとはしなかった。

 大きく円を描きながら旋回してきたライマは、今度は彼らの右斜め後方から賊の群れを貫こうとしていた。旋回する時に賊の眼に襲ってきた者の正体がはっきりと映っていたが、彼らにはそれが神話上の生物であるという知識などあるはずもなく巨大な鳥が襲ってきたと認識する頭しか持ち合わせてはいなかった。そして、もう一度ライマは迫る。まだ賊は散開しきれておらず、この一撃を受ければひとたまりもなかった。轟という音とともに、五騎が先ほどと同じように蹴散らされるが威力が一発目とくらべると些か弱く感じられる。いったい何が起きたのだろうか、まさかライマが負傷をしてしまったのだろうか。答えは違った。

 誰も気づいてはいなかったのだがライマが通り過ぎた直後、何かが彼女から落下していたことを。それは一人の賊を馬から蹴り落すと馬を奪って他の賊へと近づく。仲間が後方から接近してきたと思い振り返ったリーダー格の男は、馬にしがみついているのが見知った人間ではなく異民族の女であることに気づいたときにはもう遅かった。

「ひいい~っ!!」

 引きつった顔で馬に必死にしがみついているのはほかならぬエリアであった。彼女は速度を落としたライマから大胆にも飛び降りると、そのまま賊の馬に着地、それ同時に入れ替わるように賊を蹴り落しこうして馬に乗っているのである。だが、歩いている馬に乗せてもらったことはあっても疾走している状態での騎乗など経験がなく、彼女は竜に乗るのとはまた違った種類の恐怖を感じていた。エリアは、それでもなんとか勇気を振り絞って片手を離すと、リーダー格に向かって重いきり右腕を突き出した。だが、いかんせん距離が遠かった。空しく宙を突いたエリアはより馬を近づけさせて腕を引くが、向こうも黙ってやられるはずもなく腰から荒々しい剣を取り出して彼女の腕を切り落とそうと何度も振り回してきた。

「あっぶな!!」

 叫び声を上げながら彼女は腕を引く。流石にこれでは手が出せないと考えたエリアは、見様見真似で馬の手綱を引いて距離をとると、策を講じる。

「どうするどうする、どうするの!?……そうだ!」

 エリアはあることを思い出し肩掛けカバンから拳銃を取り出した。これは依然どこかの軍人を襲って荷物を奪った際に鞄に一緒に入っていたものの一つだ。より強力なライフルはその後訪れた基地から逃走する際に落としてしまっていた。

(何をやっているんだ)

 ようやくドレスがテレパシーでで問いかけてきたが、今は答えている暇はない。

 銃口をリーダーに向けると彼女は引き締めた顔つきで撃った。だが、弾は出ない。何故だろうかとあちこちさわっていると、どこを触ったのかはわからなかったがパチンと何かが動いた音がしたので試しに一発撃ってみる。すると大きな音とともに銃弾が飛び出し、それは風に流されつつもリーダーの後方を飛んでいくと、その向こうにいた他の女の側頭部を貫いた。一瞬血の花を咲かせたかと思うと、撃たれた女は力なく落馬して地面を転がっていった。

「ひっ」

 思わぬ威力息を止める。銃自体は本やフィルムで知っていたため人を殺す武器だということくらいの知識はあった。だが、実際に使ってみると認識はガラッと改められた。重たい衝撃、そして一撃で人間の硬い頭蓋骨をぶち抜いてしまうほどの威力。拳を痛めることもなく人を殺せてしまうという現実に、彼女は恐ろしいことをしでかしてしまったと思うと同時に、簡単に人を殺せる力を得たという高揚感が胸の奥に生まれてしまっていた。

「よ、よーし!」

 改めて拳銃を構え直すと目標に向ける。が、ここで左から別の馬が迫ってきたためそちらに対応せねばならなくなった。乗っている肌の浅黒い男は、鉈のようなものを振り上げながら迫ってくる。二頭の馬が並び、鉈が鈍くきらめくと何度も宙を切り裂いていくが、エリアはドラクラットの反射神経のおかげで紙一重でそれらを交わすことに成功していた。鉈男が馬を攻撃しようと思い切り鉈を持つ腕を振り上げたところで、そこに隙を見出した彼女は拳銃をまっすぐ彼に向け引き金を引いた。二度目の大きな発射音と同時に至近距離で撃たれた男は胸から血を噴き出しながら馬から消える。

「もうっ!」

 どうしてこうも外の世界の人間は蛮族ばかりなのだろうかと憤るエリア。後方ではライマが残りの賊を蹴散らしていた。残る賊はリーダー格ともう二人の男女だけである。できれば村にたどり着く前に仕留めてしまいたかったが、タイムオーバーになってしまった。村にたどり着いた彼らは馬を降りて村の中に駆けこんでいく。彼らに追われていた者たちも、賊がエリアたちに気を取られている間に距離を取って村の向こう側に逃げ込んでいた。

 村は賊とエリア達の存在にパニックに陥っており、人や鶏やらがあちらこちらに右往左往していてどれが賊だか村人だか見分けがつかない。しかし、エリアはまず馬を止めなければいけなかった。どうにか馬に乗れのは良かったものの、止める方法を知らなかったため、エリアはこのままでは村を通り過ぎてしまう。意を決して彼女は馬から飛び降りると、土で出来た一軒の家の壁に激突、激しく破片を飛び散らせながらもエリアはどうにか止まることができたが、突然壁をぶち抜いて飛び込んできた彼女を見た住人の親子は叫び声をあげながら家から飛び出して行ってしまった。

「あーいつつ……悪いことしちゃった……」

 痛む背中をさすりながら、自分が明けた大穴を振り返りながら彼女は呟く。

 エリアは家族が開け放ったままにしていったドアから出ると、改めて残党を探す。村人たちは皆もうどこかに隠れてしまったようで、賊たちも姿を見せない。

「どこ……」

 いつ敵が飛び出してくるかわからない緊張に心臓が爆発しそうになっている。あまりに緊張していたために、彼女は前ばかりに注意がいってしまっていた。

「やあーっ!!」

 叫び声を上げながら、賊の生き残りの女が家の影から飛び出してきて彼女を羽交い絞めにしてくる。


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