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Schwarz Drache ~黒き竜の少女と果て無き旅の果てに~  作者: 戦艦ちくわぶ
Ⅰ La ragazza nera(黒き竜の乙女)
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Historia(消えた歴史)

 それは遥か昔、少なくとも二千年以上昔のことでした。この星では人間と竜が暮らしていました。元々今のように我々ドラクラット、ああ、我々竜の民は自らを総称でドラクラットと呼びます。それから竜人、飛竜人、東の龍人それぞれ別々の呼び方があるのですが、それは置いときます。力を持たぬ普通の人間のことをリガーラと言います。我々ドラクラットの先祖とリガーラの先祖は小さないざこざを起こしながらも、大きないさかいを避け両者の間には戦争もなく暮らしていました。それがある時一変したのです。

 それが同胞の裏切りによるものか、リガーラによるものかは記されていません。ですが確実にその瞬間から均衡は崩れ去り、大地は彼らによって覆いつくされ、ドラクラットは世界各地の片隅にひっそりと、彼らに察知されないよう結界を張って大人しく暮らしていく運命を辿ったのです。戦争で多くの物を失いました。同胞、土地、そして歴史書。これによって我々は詳細な歴史を失ってしまい、過去が曖昧となってしまったのです。我々は口伝民族ではありませんでしたから。

それから誰も反抗しようとしませんでした。数に勝ち目がないことを知っていたからです。勿論、時々イレギュラーも現れます。例えば海の民、御存知ですか。彼らはシュタ一帯に居を構えていた水竜族の一団です。あ、シュタというのはアレーキサンドリーアという町の近くです。結果はご存知の通り、ある程度はリガーラを攪乱できたものの、結局は討伐されてしまいました。そういうこともありましたが基本的に、我々は数千年もの間、リガーラから姿を隠し続けていたのです。

 しかしここ二、三百年でまたもや事態は急変しました。理由は知りませんが、彼らは今まで以上に巨大で長い戦争を何度も繰り返し、自らその数を減らしていったのです。それに気づいた我々は、再び我々の大空を取り戻そうと決起したのです。これが、今現在です。

 ここからは私と彼、貴方が深く関係してきます。

少しずつ備蓄を用意し、領域を広める計画を立て、各村と密に連絡を取っていた時でした。祈祷師であるエマーヘルと私はある予知を見ました。それは決起した我々の前に邪な手が現れ、邪魔をしようとするのですが、それを黒い少女が打ち滅ぼしドラクラットに再び繁栄を取り戻そうというのです。

ドラクラットにとって予知は絶対で決して外れません。故に従う必要がありました。急遽同じ予知を見た私と彼が会い、二人でその少女を捜すこととなったのです。それがそう、貴方ですよエリア。

 しかしここまで来るのにゆうに一年を要しました。理由は貴方の士族のせいでもありました。

闇竜族です。

一旦歴史と予知の話は置いておきますね。ドラクラットは七つの士族に分かれます。炎竜族、水竜族、木竜族、土竜族、雷竜族、光竜族、そして闇竜族。最近は土竜に属する鋼竜類を新たな士族としようという動きもありますが、これはまた別のお話です。ここで闇竜が追放された訳をお話します。

 かつては七士族問題なく暮らしており、今も闇竜を除くと士族関係なく村が形成されています。これがある時、先に述べたように歴史書が失われたことでいつかははっきりどころか、大まかな時期さえ分かりません。ある一人の闇竜族の男、若しくは女が非常に重い大罪を犯し、千人単位でドラクラットの命を奪ってしまいました。その事件は瞬く間にドラクラット中に広まり、殆どの村で闇竜族の撲滅が始まりました。追われ、駆られ、闇竜たちは姿を消しました。これでもう大丈夫だ、と皆胸を撫で下ろしたのです。が、ある赤ん坊の誕生から、先祖は大変なことに気付きました。

 ある火竜と土竜の夫婦の間に生まれた赤ん坊が、あろうことか闇竜族だったのです。隔世遺伝も考えられましたが、それは到底あり得ないことでした。何故なら彼らが子をなしたのは闇竜が駆逐されてから二百年近く経過していたからです。それはもう彼らは驚き、とりあげられた子はすぐさま〆られました。暫くして事態が落ち着いてからその事件の議論が執り行われたのですが、当初は呪いだの突然変異だのと憶測が飛び交いましたが、それがその村だけでの出来事ではないと発覚したのは、そう時の経たぬ内でした。恐れ慄いたドラクラットはこれを闇竜族の呪いと判断し、闇竜の子が生まれるたびに〆て、それを祭壇に祀り鎮魂祭を催したのです。しかしどれだけ祈り、唱えようとその不可解な出産が消滅することはありませんでした。例えどれだけ間が空こうとも、必ずどこかで闇竜の子が産み落とされたのです。

 生まれた子は全てが母体から出て間もなく命を絶たれました。しかし母や父の情によってその難を逃れられた者も少なからずいたのです。密かに産み落とされ、リガーラの手によって、あるいは両親自らの手によって、生き続けていたのです。その一人がエリアです。

 何の因果か、はたまた必然によるものか、禁忌の対象となっている貴方が我々の存続の鍵となり、今こうして私達といるのです。


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