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Schwarz Drache ~黒き竜の少女と果て無き旅の果てに~  作者: 戦艦ちくわぶ
Ⅰ La ragazza nera(黒き竜の乙女)
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drei tre tres (3人の竜人)


 一人ぼっちの朝がまた訪れた。家族を思い出しホームシックに思わず涙を流した。単なる旅ならかえればまた家がある。しかしもうかつての故郷の姿はもうない。あるのはきっと焼野原、骨と灰、沢山の瓦礫ばかりが覆い尽くす文字通り死の町と化しているのだろう。彼らはそんな焦土にして何がしたかったのだろうか。大人のやることはさっぱり理解できなかった。

「お腹空いた……」

母の作る朝食が食べたい。無い物ねだりは無駄だと知っているので、敢えて口には出さなかったものの、どこか虚しさを憶え溜息をついた。仕方なくバッグから缶詰を取り出し、残りの黒パンと共に食すことにした。缶詰はニシンの塩漬けで、保存の為か過剰なまでの塩っ辛さが少しの量でパンを進めた。それでも濃い塩気に、みるみる唾液が分泌される。時折水でパンを流し込みつつ、五分ほどで食事を終えてしまった。パンはもうない。食後はお茶の一杯でも欲しいところだが、生憎と葡萄酒さえ残ってはいなかった。朝から酒を取りたくも無かったが。

「んっ……んんーん~……ハッ!」

 伸びをして、勢いよく立ち上がる。

「あだだだ!お、お尻……」

突如襲う尻の痛みに、飛び上がったままの体勢で固まるエリア。昨日未舗装路を走り続けたせいで、振動で尻が痛めつけられてしまったのだ。そっと尻を撫でながらさりげなくダンゴムシを見遣ると、昨晩と同じ場所に佇んでいた。タオルで顔を拭うと、寝ぼけ眼をこすりながらダンゴムシに跨った。二度目以降は昨晩のような面倒な手順は必要なく、つまみを捻れば軽快な起動音を鳴らしてダンゴムシが目を覚ました。暫くモスポールされていながらも、ろくな整備も無しに何の支障も無く稼働するこれを鑑みるに、シュバステンの兵器は頑丈さと信頼に重きを置いているように思われる。エリアは忘れ物が無いことを確認すると、ペダルをゆっくりと踏み込んだ。

黒海の畔、北側にあるかつての港後の廃墟に彼はいた。祈祷師エマーヘルは一足先に町泡汗場所に辿り着き、彼女が来るのを待っていたのだ。彼は双眼鏡を時折覗きつつ、地平線の彼方を眺めていた。昨晩の彼女の言葉を思い出す。

「……変身も知らんとは」

 彼女の出自上、人間に育てられているであろうことは十分に想定内であり、彼女が自身を竜人と知らず、人間として育っていることもまた同じであった。しかし実際に目の当たりにしてみると、そのショックはなかなかに軽いものでは無かった。彼女がカギとなっているだけあって、不安は膨張するばかりだった。

「エマーヘル、お茶を」

背後から暖かな女性の声とともに、傍の壊れたテーブルの上に陶器に注がれた赤いお茶が置かれた。これは彼らの茶の一つで、紅茶と同類のものである。

「ありがとう、ライマ」

彼は振り返ることなく礼を言うと、盛んに湯気を出している茶を口に持っていった。熱い液体が喉から体内に流れ込み、芯から温めようとしている。半分ほどそれを飲んでしまうと、カップをテーブルに戻した。ライマと呼ばれた女性、神話の女神の名を冠した彼女は彼同様竜人であり、また祈祷師であった。少し違うのは彼女が木竜族の知識竜であり、飛竜人であることだった。

 竜人は大きく分けて三つの人種に分かれる。一つは最も数が多い竜人である。彼らに共通する特徴としては、四肢と翼が一体化しておらず、飛行中も前足が使えることである。彼らはバランスの良い能力を持っており、最も戦闘に長けた竜人なのである。

 次に彼女のような飛竜人で、その最大の特徴が竜状態の時、翼と前足が一体化しているということである。高速飛行を得意とする彼らは、戦闘にこそ向かないものの、他の二種よりも遥かに優れた飛行能力と、彼らにしかない非常に細かな風の変化を感じる能力を持つ。また彼らは滑空をすることも可能である。因みに一番少ないのが彼らである。

 最後に龍人である。彼らは主にアジアに暮らしており、竜状態では蛇のように細長い体に、同様に細く小さな手足を持っているのが特徴だ。翼が無いにも関わらず体をくねらせながらゆっくりと飛ぶ彼らの姿はまさに神秘の生物と言えるだろう。アジアで龍と呼ばれていたものは、彼らの龍状態の姿が目撃されたものであった。そんな彼らは竜人の半分程度の速度でしか飛行できない。


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