月曜日
月曜日。
おととい、昨日の訓練で疲れが溜まった状態で迎える月曜日だ。
「煌―!」
ちょうど登校してくる優希と合流する。待ち合わせしているわけでもないが、最近合流することが多くなっている気がする。
「おはよう。・・・・・・なんか疲れてる?」
優希が不思議そうに尋ねる。
「あぁ、ちょっといろいろあってな。」
曖昧にしてごまかす。こいつが能力のことを知ることで良いことがあるとは思えなかった。
「でもなんか・・・・・・、楽しそう。」
ふっと表情に影がさした気がした。
「ん? なんて?」
「何でもないよ。」
放課後。
今回はいつもの近くの海岸沿いにある高台に来ていた。高台に昇りきった苦労と潮風のせいか、気持ちいい。
「んじゃま、始めるか。」
永瀬がデカいバックからマットを取り出す。
バアッとマットを広げながら海岸に投げ、自分も続いて飛び降りる。
「うおっとっと。」
そんなことを言っているが、あんまりバランスを崩してはいない。
「ロマンあるな。」
魔法の絨毯のようだ。
「だろ? 男のロマンだ。」
どちらかというと、女の子のロマンだと思うのだが……。
永瀬がニッと笑う。
「じゃあ行くぜ。」
ヒュオオオという音が聞こえる。この音には聞き覚えがある。これから強い風が吹く前の風だ。
ビュオオオという音になり、台風の時のような風が吹く。
吹き飛ばされないように何かを掴みたい。
が、ここは高台。周りには柵と細い木しかない。
姿勢を低くし、能力で地球との引力を強くする。
相手から目を離したくないのに、風によって、反射で目が閉じてしまう。
風が一瞬にして止む。
永瀬の姿は見えない。
「こっちだ」
声の方向を向く。
だが、姿は見えない。
「!?」
後ろからの攻撃に、前に飛ばされる。
立ち上がり、後ろを見る。永瀬が宙に浮いたマットに座ってにやにやと笑みを浮かべている。
先ほどの声は、何か違和感があった。だがなぜかは分からない。
「さてさて、なんで俺があの二人の後か分かるかよ?」
手を出さずに能力を発動させ、相手を引き寄せる。
「うおっと。」
永瀬がこちらにぶれたかと思うと、後ろに下がる。
「あの二人の能力は水と土。まあお前には当然見えるわけだ。」
だが、こいつの能力は風だ。どの風が動いているかは見えない。
と、言いたいのだろう。
しかし、見えるか見えないかについての問題を困っているわけではない。
空気のような軽さで俺の『重力』が永瀬の『風』にどこまで通用するのかということだ。
また、三ケ田先輩の時のように殴りに行くのは難しい。
永瀬はマットで宙に浮いているからいいものの。
俺はそのまま海に真っ逆さまだ。落ちてしまう。
落ちるか……。
俺の能力は『重力』。
もしかしたら、地球の重力を強めることが出来るかもしれない。
永瀬を見つめ、想像してみる。
だが何も起きない。
「『重ね合わせ』ね。」
永瀬の口が動く。しかし、その声は聞こえない。
「オーケー、終わろう。」
今度は聞こえた。永瀬が宙から降りてくる。
「人が近くに来る。」
近くに寄ってきて、耳打ちした。
「残念だが、終いだ。とりあえず、あそこに隠れるぞ。」
永瀬と近くの茂みに隠れる。
高台に来たのは同じ高校の制服をした一人の男の子だった。
「・・・・・・藤原朧。」
静かに呟いた永瀬の顔が真面目になる。
藤原朧。この間、悪魔の件で出てきた名前だ。
藤原は、柵に近づき、海を眺めている。
唐突に。一瞬で。
藤原が柵を超えようと足を柵にかける。
ビョオッと風が吹く。
それが追い風となり、藤原の体を海岸に押し出す。
グラグラと藤原の体が揺れる。どうにか落ちないように柵にしがみつく。
風が止むと同時に、藤原が柵から足を下ろし、こちら側でぺたりと尻をつく。
上半身を支えた手が震えている。
「殺すのかと思ったよ。」
「ちゃんと静かにしてたのはやるじゃん。」
藤原が高台から下りて行ったことを確認すると、茂みから出た。
「あ、そうそう。一週間の予定だったが、一応今日で終わりだ。」
「え? 終わり?」
「ちょっと、生徒会で仕事ができたんで、お前に構ってやれねぇってわけ。ま、お前はいけそうだわ。うん。頑張ってけ。」
ポンと肩に手を置かれる。




