視点:ライゴウ(前)
番外編~
本日は月終りということで同時二話投稿です。
今後も月終りは同時二話投稿を予定しております。
我輩の名は“ライゴウ”。此処より遥か北のニニークの森に生まれたライズファルコである。若きし頃、外に強敵を求め故郷を飛び出した。様々な猛者と戦い、時には天からの強き風や凍った雨の粒とも戦った。我輩は強き戦士だった。
しかし、我輩も年を取った。今はこのゴールの森で余生を過ごしている。
(さて、今日も奴を見に行くか。)
最近の我輩の娯楽は、あるスパイダーの観察である。奴と出会った話をしよう。
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「キュ?!」
(む?)
奴と出会ったのは、欠けた月が膨らみ始めた夜だった。
その日、我輩はこの森の強者“レッドベアー”を倒した。図体がでかく、攻撃・防御・スタミナの3拍子が我輩を遥かに上回る猛者であった。しかし、我輩も歴戦の猛者。加え、我輩にはどのような暗所も見渡せる眼と切り札たる≪雷魔法:ショック≫がある。激戦の末、≪ショック≫を使い我輩は辛くも勝利した。
そしてソコに、奴はいた…
鳴き声のした方を見れば、小さいスパイダーが眼を覆って踞っていた。あの大きさだと、まだ産まれたばかりなのだろう。我輩程ではないが、中々に魔力が多い。
我輩は問題ないと認識。チビスパイダーを放置し、レッドベアーを喰らう。中々に美味であった。
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次の日
レッドベアーを全て喰らい、寝床に戻り休息を取る。目が覚めると昼頃だった。
腹は減っていなかったので、暫し散歩に出る。
すると、小さいスパイダーが草や花等を集めているのが目に入った。
(あれは、昨夜のチビスパイダーか?何をしているのだ?)
魔力の量から昨夜のチビスパイダーだとわかった。何やらゴソゴソやっている。気になったので観察する事にした。
まず奴は、“ストの花”を口にし、吐いた。
あれはこの森の草花を食べる生き物達がこぞって首を横に降る植物だ。噂では人間が何かの薬にすると言うが…、そんなに不味かったのか……。
次に“アルルカ草”を口に入れ、盛大に吹いた。
アルルカ草はかなり好き嫌いが分かれる草で有名だ。我輩も一度食べてみたが、不味かったから嫌いだ。鳥が食べるモノじゃない。あのチビスパイダーも好みではなかったようだ。
3つ目に“黒朴”の木の皮を食べた。
暫く咀嚼していたが、やっぱり吐いた。コレも駄目だったらしい。
最後に奴は白い糸のようなものでグルグル巻きになったモノを食べた。なんだアレは?
よく見ると、グルグル巻きの正体は“パラライズリー”の幼虫“キャタスト”だった。我輩もアレは好きなので、時々小腹が空いた時等で食べる。中々に美味だ。
どうやら奴の口にも合ったらしく、吐かなかった。が、何やら暗いようななんとも言えぬ雰囲気を出している。何故だ?
奇妙なスパイダーだと、この時我輩は思った。
実は観察されていた主人公。
見る者は観られる者ナリ~。
ある意味解説回。