ある小鬼の話
シリアス注意!
暗いの入るよ!
サムイ…
ある森の小さな丘の横穴。
その中に、赤い生き物がいた。
サムイ…
その生き物には身体中にたくさんの傷があった。
まるでなにかに咬まれたような傷だった。
サムイ…
しかし、傷は浅く、中には薄くなっているモノもあった。膿んでいるモノもないようだ。他に目立つ傷や怪我も無い。
ぐう ぅぅぅうう~
(……ハラ、ヘッタナ。)
横穴に盛大な腹の音が響いた。
しかし、赤い生き物は動かなかった。
「……サムイ。」
小さく、か細い声は響く事なく闇に溶けた。
赤い生き物は体を丸め、眠り込んだ。震える体を抑える為に。幸せだった夢の続きを見る為に。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『アッチイケ!!ヤクビョーモン!!』
『キモチワリイ…クンナ!!』『デテイケ!!』
『ヨルンジャネエ!!コノ…イミゴガ!!』
ここ、ゴールの森の小さな集落にて、ソレは産まれた。
ソレは集落にて異質。ソレは本来ならば緑である筈の肌ではなく、赤い肌で産まれてきた。
ソレの親、両方とも緑色の肌であるにも関わらずである。
“希少種”
集落にて暮らす、一番物知りの老人が呟いた。
希少種とは、数年から数十年に1度産まれると云われる存在。
曰く、強き力を持つ者。
曰く、不可思議な力を使う者。
曰く、特別な祝福を与えられた者。
様々な言い伝えが存在するなか、特に知られたモノがあった。
それは、“災いを運ぶ者”。
希少種は特別な力を持つ存在。
力とは、力に引寄せられるモノ。引寄せられた力はまた別の力を呼び、更に別の力も力を呼ぶ。
そして、集まった力はぶつかり合い、争いを招く。
その集落に生きる者達は弱かった。
それ故に、ソレを拒絶した。
両親も兄弟も、男も女も赤ん坊も老人も、皆、皆がソレに恐怖し、憎悪し、拒絶した。
ソレは解らなかった。
何故皆が離れるのか。
何故自分を拒絶するのか。
何故罵詈雑言を吐かれるのか。
何故、自分の隣には誰も居てくれないのか?
同じ集落に居るのに何故?
同じ姿なのに何故?
同じ言葉を使うのに何故?
………色が、違うから?
色が違うソレは、自身のその色を怨み、呪い、絶望し、孤独に生きた。
◆◆◆◆
そんなある日の事だった。
「ヤクビョーガミ!!」
突然だった。
まだ日が沈みきらず、空が赤と橙に覆われた時間。ソレはいつものように集落の者の食べ残しを漁り、遅めの夕飯を終えたばかりだった。
ゴキッ!!
「!?」
突然、世界が回った。
1拍置いた後、目の前に草が見えた事から回ったのは自分だと解った。
グイッ
「?!」
体が浮かび、目の前に集落一の荒くれ者の姿が写った。
「ナンダそん目は!!コンノ…穀潰しのクセに……。生意気ナンダヨ!!」
ガッ
「グギャッ!!」
ゴッ ガッ ガッ
ゴキッ ガッ ゴキッ
「ヤ、ヤメテ…。ヤメ「ウルザィんダよ!」ギャッ!?」
殴られ、蹴られ。倒れても尚降り続く拳に蹴り。
ガッ
「ぐっ…。カ、ハ…。」
ビチャッ
腹に入った一撃に耐えきれず、胃の中から臭い水がこみ上げ、吐き出した。
「テメェ…。ヤリヤガッたな!!」
水は荒くれ者の体にもかかり、ますます怒らせてしまった。
実はこの荒くれ者、ほんの少し前に気に入っていた女に振られたのだ。「こんな乱暴者はゴメン」と言われて。
そして、振られるなんて思ってもみなかったコイツは、偶々目に入ったソレに怒りをぶつける事にしたのだ。完全に八つ当たりである。
ゴッ ガッ
「や、やめッ…ゆふs「ウゼー!!ダァッテロ!!」ギャッ!!」
そんな事なんて知らないソレは、ただ殴られ続ける。
殴られ、殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ。
そして、
「しね。」
荒くれ者が拳を大きく振り上げる。
その瞬間、ソレはみてしまった。
“荒くれ者を声援する、集落の同族達を。”
ここにきて、知ってしまった。いや、認めてしまった。
“自分は生きている事が赦されない存在だということに。”
なにかが、切れた音が聴こえた。
そこからはソレもよく覚えていない。
思い出せるのは、“目の前が全て赤くなった。”それだけだった。
気がつけばソレは夜の森にいた。
今まで集落にいた筈のソレは、ただただ呆然とした。
ここは何処なのか?集落は?同族達は?何故自分はここに?
様々な考えが浮かんで消えた。
それでも、1つだけ解る事があった。
(オレ、もう集落に帰れないンダ…。)
夜目を持たないソレ、リンは、まっら闇の中自分が夜の闇に溶けたように感じた。
そのまま、溶けて消えてしまいたかった。
その夜は、もうすぐ夏というのに寒い夜だった。
と、謂うわけでリンちゃん過去回でした。
性別、種族だけじゃなくて、少し人と違うだけで差別されるのは世界共通の悲しい現実(´・ω・`)
誤字・脱字を見つけましたらご報告ください。




