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わるいこです。

まだ続きます。

グロテスク注意

 Wollen wir(おちつこう) sich beruigen.

 Die Ankunft an(おちつこう) der Weglassug l, die frage(ぼく)!!


 いけないいけない。つい母国語がでてしまいました。深呼吸深呼吸。ひーひーふー、ひーひーふー。





 ……うん。少し落ち着きました。え~と~、少し確認しましょう。


 名前は 平和島(へいわじま) 笑音(みおん)。“笑う音”なのでニコって呼ばれています。今度のクリスマスで17歳に成ります。好きなのは家族とお母さん特製のブラッドソーセージ。嫌いなのは自分の顔と身体。お母さんがドイツ人でお父さんが日本人。駆け落ち婚で僕が11歳迄ドイツにいて、お母さんの実家が煩くなったからって日本に(逃げて)来て、それから双子の弟フェリックスと妹 華凛(かりん)が産まれて、でもその時期から僕の体調が悪くなっていって12歳あたりからずっと病院に入院してるんだっけ……。

 うん。大丈夫しっかり覚えてる。


 昨日の事を思い出してみましょう。

 えっとたしか昨日は、隣室の後藤さん(58歳 男性)が大腸癌の手術に成功したお祝いに篠崎さん(85歳 女性)と月見里(やまなし)さん(79歳 男性)、一ノ瀬さん(94歳 女性)に宮辺さん(88歳 女性)達、つまりいつもの遊びメンバーと一緒に娯楽室を借りて祝福会をしていましたっけ。

 まだ食べることが出来ないから、皆で人生ゲームしたり将棋したり、後はお手玉誰が一番多く増やせるかとかトランプとかやって。僕も体調が良かったので唄歌ったりしましたっけ?楽しかったな~。

 …………そうだ。思い出してきました。

 祝福会が終わった後、少し目眩がしたので寝ようとしたら急に胸がすごく痛くなって、息も出来なくなって、ナースコール押す事も出来なくってそれから…それから……









 ………………………………………そうか。僕、死んじゃったのですね。


ぽろ ぽろぽろぽろ


 こんな、こんなすぐにしんじゃうなんて……たしかにながくいきられないかもしれないっで、にじゅっさいまでいきられないかもしれないっていわれました。でも、でも、でもでもでもでも!さいきんはちょうしよかっだし、ごはんだってすこしたべられるようになっで、もうすぐのふぇりっくすとかりんのたんじょうびはたいいんしてもいいってかのさんにもいわれなのに。

なのに。なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのに!!どうじで、


どうじでなの?







……………………ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいおどヴざんおがぁざんごめぇんなざい。いっぱいえがおではげましてくれだのに、げんきになれますようにっでがんばづでしごどしでにゅういんざぜでぐれだのに。ぶぇりっぐずかりんごめんねぇ。いづもねでばがりで、だよりなぐでいっばいあぞんであげるこどもでぎなぐで。ごどうざんじのざきざんやまなしざんいじのぜざんみやべざん。ぞれにおいじゃざまのかのざんになーずのがぜざんびょういんのみんな、ごめんなざい。ごめぇんなざい。


ボロボロボロボロボロボロ


きゅー、きゅーきゅーきゅー


 口からでる穴の空いた管みたいに空気がぬけたような音。

 言葉ですらない音と共に、僕はただただ泣き続けました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 涙が枯れても、僕はなき続けました。そして、もう一度あの巨大蜘蛛の所に戻ってきました。


(あの蜘蛛が、僕の母親なのでしょうね……。)


 所所に散らばった肉の破片。それを食べる子蜘蛛(きょうだい)達。あの青緑の水は吸ったのか、多少色が変わった土や草。


 恐らく、あとすこしすれば蜘蛛達(ぼくたち)を食べにくる生き物が来るでしょう。すぐに何処かに行かないといけない。そう本能が囁いてきますが、僕は巨大蜘蛛(はは)残骸(したい)に近づきます。


(今世では、生きている親とも会えませんか………。)


 昔、退院した米田さん(73歳 女性)が言ってましたっけ?


「いいがい、ニコちゃん?子供はねぇ、親より早くに死んじゃうと地獄にいってしまうのさ。何でかって?さりゃあきまっでる。親より先に死ぬなんざゴレ以上無い親不幸だっべ?ニコちゃんはおどなびでっげど、まだまだ子供なんだ。……怖がらせちまっだが?でーじょーぶでーじょーぶ。よぼどのことがねぇがぎり、親より早く死ぬなんざねぇんだがら。だがらニコちゃんのびょーぎざすーぐ治るっぺ。ほらほら、涙をお拭き。でーじょーぶでーじょーぶ。」


 って言ってましたっけ。あの頃はまだ症状が軽くて、それでも不安で泣いてばかりの僕を励ますつもりで言ってくれたのでしょう。余計泣いちゃいましたけど。結局お父さん達より早く死んじゃいました。

 そして、蜘蛛になったのも親と会えなかったのも、地獄の罰の替わりに僕に与えられた罰なのでしょうか?


 今世の親を食べるなんて……そこまで僕は悪い子でした?


 僕は巨大蜘蛛(はは)のもとまで行きその残骸に触れます。


(今世のお母さん。産んでくれて、ありがとうございます。)


 幽霊とか魂とか、本当にいるかわかりません。ですが、今まで生きていた証拠は此処に有り、僕達を産んでくれたのです。だからきっと、この想いも届いている筈です。

蜘蛛って親喰いするの?とか言わないで下さい。

ファンタジーな生き物なので。


三月十二日 少し手直ししました。

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