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【挿絵あり】琴線のコレクト〜異形殺しの黒天使と必然の少女〜【なろう限定】  作者: パスタ・スケカヤ
第1章 collectー先祖返りー

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1章3話 黒き羽舞う月下の夜




 放課後になり玄関に向かうと、人だかりができていた。


 「おわ!マジで天空鈴華じゃん!」


 「可愛いー!2組うらやま!」


 「2組って海道くんもいるしビジュやばくね?」


 「可愛すぎ!大鳳さんもかわいいけど、やっぱ生アイドルは格が違う!」


 どうやら私って結構人気のアイドルだったのね。自分で恐ろしいわ。


 初日でこんなことになるの?転校生って。


 「ちょいちょいー!鈴華にゃんは私と予定あんの!横入り禁止!」


 「は?ずりい!」


 「私も一緒に帰りたい!」


 人混みの中から手を伸ばす神威さん。わたしはその手に掴まれるとそのまま人混みを抜ける。


 周りの生徒は不満を漏らすが、神威さんは動じない。


 「だめー!早い者勝ちなり!いこっ!」


 「あっちょっ!?」


 人だかりに混乱していると、神威さんが私を引っ張って外に出る。


 助かった、と言っていいのかこれは。連れされたという方が正しい気がする。



 「ここまでくれば大丈夫!」


 「……ありがとうございます。」


 「いいっていいって!」


 神威さんに連れられて夢中で走ってきた。木々揺れる森の入口。


 私も体力に自信はあったけど、さすが陸上部。息一つ乱れていない。走り方も綺麗で尊敬する。


 なにか夢がある人は眩しい。


 私は少し神威さんを羨ましいと思いながら、辺りを見渡す。少し薄暗く感じたからだ。


 まだ、日が落ちるには早いと思うんだけど、森の近くは空気が冷たく空模様も暗く見える。不思議だ。


 でも懐かしさを覚える。ここから進んだところにあの屋敷がある。


 「ここを進んだところが旧御三家のお屋敷!つまり、鈴華にゃんのおうちってわけ!って、知ってるか!」


 「初対面なのにすみません。案内させてしまって。」


 「いいのいいの。カイトちんしつこかったでしょ。私もそうだったからわかるよん。」


 「神威さんも?」


 「うん!私ね、昔から未来予知っていうのかな。占いみたいなのが得意でね。それを知ったカイトちんが根掘り葉掘り聞いてきたんよね。」


 「占い?昼にやってくれたあれですか。どうして海道くんはそんなことを?」


 「さあ、分かんないけど、風紀委員だからじゃない?とにかくなんでもお節介!みたいな?誰かになんか頼まれたんかなって私は思ってるよー!」


 風紀委員なんだ、あの人。面倒くさそう。今日だけでどれだけ好感度下がるんだあの人。


 「なるほど……。あ、ここまでで大丈夫ですよ。ありがとうございました。」


 歩きながらつい話し込んでしまった。入口ももう遠い。ここまで来れば大丈夫だ。


 「いやいや!いいよ!最後まで送るよ!ここってさ、迷いの森とか言われてんだよ!今日は送らせてよ!てか、私、鈴華にゃんと話したかったし!」


 「……私と?」


 「うん!そうだよ!……私さ、ずっと何してても満たされたことなくてさ。なにか忘れてるような、そんな気がしてて。今時珍しいのかさ、私の家って妖怪とは混ざってなくて。身体的にも劣るところ多いし、個性?みたいなのなくてさ。」


 神威さんの言葉はどこか空虚だった。心に穴が空いたようなもどかしさのような、そんなものを感じる。そしてそれは、私にも覚えがある。


 ───────みんなに好かれる何者かになりたかった。


 通ってきた道は違うけど、神威さんは私にどこか似たモノを感じる。


 「でもそんな時キミと出会った。初めてテレビで見た時さ。探していたのは、この人だーって思ったんだよね。胸がぐん!って高鳴って、涙が出るぐらい感動したの。背中を押されて私も輝きたいって思った。そこからはもう開き直ってガムシャラに心動くものぜんぶ本気でやろう!ってなったの!そしたら自然と楽しくなって今に至る!ってわけ!だからさ、私は君に救われてるんだよ。」


 神威さんは後ろで手を組んで楽しそうに語り聞かせてくれる。わたしは聞いているだけだったけど、その話にわたしも救われていた。


 ちゃんと私の想い届いている人いたんだ。


 私が昔感動したライブみたいに、誰かの心を動かすことができていたんだ。


 なんだか嬉しくなってくる。


 今日やっと初めてアイドルやって良かったと思えた。


 そんなことを思い出せた気がする。


 ───────私はそのために光に手を伸ばしたんだ。


 忘れていたあの時の気持ちが蘇ってくる。


 芸能界に疲れて、擦り切れた心で見えなくなっていた。私はアキラに光をもらって、自分もそうなりたいと思ったじゃないか。


 アイドルじゃなくても、まだきっと───────


 「実はさ。今日会えるってわかっていたんだよ。でも朝目が合うまでは信じてなかったの。」


 「え?」


 「実はさ。毎日ね、君のこと占っていたんだよ。私の占いはよく当たるからさ。君のこと、もっと知りたいってね。……これまで色んな辛いことがあったよね。でも私なら、受け止めてあげられる。」


 静かに俯きながら言葉を紡ぐ神威さん。


 気がつくと森の中は薄暗く、夜の足音が聞こえてきていた。


 この道こんなに長かった?


 そしてなんだろう。この全身を覆う不快感は。


 寒気や嫌な空気が強くなっている気がする。


 「あ、あの。神威さん、なんかこの森変じゃないですか?」


 「……大丈夫だよ。ダって、ワたシが、そバにいルんだかラ」


 「神威……さん?」


 今気がついた。この不快感の正体は、神威さんから発せられていることに。


 言葉も濁ってうまく聞き取れない。

 

  この話し方、昔に聞き覚えがある。


 この感覚知っている。


 昔にもあった。


 「今日の占いはね。『運命の再会』。素敵だよね。」


 「運命の……再会……?」


 「そう!私と君の運命の再会!!!」


 刹那。神威さんはわたしに抱きつき、ものすごい力で私を締め付ける。


 「いたっ……いたい、いたい!いたい!!!」


 「モウ、ハナサナイ!ハナサナイ!!!」


 「ひっ!?」


 「やっト、ヤット、テニイレタ!!!!」


 突如、神威さんの瞳は赤く染まり、白目は黒く反転する。


 髪の毛は怪しく伸び、黒く染まり蛇のように揺らめく。


 そして黒い瘴気が全身を包み、私に侵食してくる。


 「……異形!?」


 これは異形だ。昔襲われたことがあるからわかる。




 「これデ、ずっト一緒ダよ?」


 「ま、待って。さ、再会って、わ、わたしはあなたと初対面です!!!お、落ち着いて……」


 必死に抵抗するが、歪んだ笑顔で離してくれない神威さん。恐怖が全身を支配し、状況の理解が追いつかない。


 これダメなやつだ。この人ダメな人だ。ようやく答えが出そうだったのに、信用したらダメな人だったんだ。


 私また騙されて。


 息ができない。瘴気が体に入り込んで気持ち悪い。飲み込まれる。怖い。


 命を失う。ここで死ぬ。



 ───────その刹那。



 「逃げて!こいつは僕が倒す!!!」


 青い閃光と共に、一人の少年が現れる。



挿絵(By みてみん)



 それは、一本の槍を携えた『海道カイト』であった。


 青い閃光の斬撃で、目の前の神威さんを切りつける。


 「があああああああっ!?」


 とても人間とは思えない叫び声。


 痛みから拘束が緩み私は開放される。


 神威さんは苦しみながら、獲物を狩る獣のように獰猛な視線を向けてくる。


 私と神威さんの間に入り、槍を構える海道くん。


 何が起こってるの?


 「心配になって助けに来た!」


 「え、海道……くん?や、槍?」


 尻もちをつき混乱する。私の頭の中はまだ整理が付かない。


 「逃げるんだ!屋敷には結界がある!異形は近づけない!」


 「か、海道くんは!」


 「僕は大丈夫!これでも霊能者だから!」


 「霊能者……?」


 昔、アキラが言っていた、あの霊能者?実在したの?


 いやそれよりも伝えないといけないことがある。理由はどうあれ、この人は私のことを応援していた人だ。恐ろしい異形でも無下にはできない。


 「そ、その人、神威さん、神威さんなの!」


 「わかってるよ!ここは任せて逃げて!」


 「う、うん!」


 「大丈夫だよ。ちゃんと全部説明するから!さ、いって!!!!」


 「わ、わかった!!あ、ありがとう!!!」



 私はそのまま逃げた。もう意味が分からない。

 

 それでも私は逃げることしかできなかった。


 疑って、邪険にした男の子に全てを任せて。


 やっぱり私人を見る目ないんだな。



 最悪だ。最悪の一日だ。


 ◆◇◆



 


 暗い森の中、私はひとりだ。


 海道くんに全てを任せて私は逃げたんだ。


 全力で逃げ続けていたが、足がもつれて転んでしまう。


 いつもそうだ。震えて怯えることしか出来ない私。何年経っても、本質は変わらない。


 こんな所で死ぬのか、私。まだ何もできていないのに。やりたいこと沢山あったのに。いつもお父さんとお母さんに心配かけて。


 誰か、助けて。そう願うことしか出来なかった。


 泥で汚れながら、必死に顔を上げる。黒い森を優しく照らす月の光が視界に入る。


 『月が満ちるとき』か。異形を倒す黒き翼の天使。


 私はどこかでアキラが助けてくれると期待していた。


 そんなこと、あるわけないのに。


 「……馬鹿みたい私」


 どれだけ走っても目の前に見える屋敷には近づけなかった。


 やっぱりこの森変だ。


 ああ、黙って海道くんに送ってもらえばよかったな。変に警戒して肝心なことは見逃して。


 霊能者だから歯切れが悪かった。それだけじゃん。


 こうやって追い詰められると、馬鹿みたいに素直で今まで後悔が過ぎってくる。今考えたって仕方ないのにさ。


 体力ももう限界。


 こんな状態で神威さん来たら、終わるだろうな。


 


 私は頭を振って切り替えるように立ち上がる。だけど、その歩みは簡単に止まった。


 「……はは。嘘でしょ。」


 私は乾いた笑いを浮かべる。


 それは目の前に現れた神威さんと目が合ったからだ。


 


 「みィ〜つけタ」


 怪しく不敵に笑う神威さん。最悪だ。こういう嫌な予感だけは当たっちゃう。ほんとうに最悪。



 「か、海道くんは……?」


 「知らない。どうでもいいでしょ?あっちの血はどうでもいいもん。それに、今からひとつになるんだから、気にしなくていいよ。」


 「どうでも良くないっての。そんなの願い下げよ!!」


 神威さんの言葉はさっきより、はっきり聞こえる。明るかった雰囲気は消えて冷淡で、私を見る目は獲物を見る目だ。


 私の膝はガクガクと震えて、心臓の鼓動も早い。呼吸も荒いし、こわくて震えが止まらない。


 進んでも屋敷にはたどり着けない。目の前には異形。


 なら、一か八か。入口に戻る!


 「だぁああああああああああ!!!!!!」


 私は全身全霊で走り抜ける。やった!振り切れ───────



 「あがっ!?」


 「……フフ」


 何かが貫いた感触があった。状況を理解するまで時間がかかった。


 腹部に熱を帯び始め、次第にそれが広がってくると激痛が走る。


 「ああああああああっ!!」


 痛みからの叫びというより恐怖による叫びだった。


 お腹に穴が空いてる!!ち、血が血が止まらない!!!

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!


 やだ、死にたくない。


 「助けて……助けてよ!アキラ!!!!!」


 刹那。月に照らされながら黒い羽根が舞い落ちる。


 「黒い……羽……?」


 


 月下に舞い降りた漆黒の天使。月夜に照らされながら、舞うように刀を振るう。


 瞳に映る漆黒の翼は、ただただ、綺麗で、見惚れる。


 月下に舞う黒天使は、宵闇に満ちる一筋の光。


 繰り出される刀の煌めきは、目の前の異形の影を取り除いく。


 私はただ、焦がれていた再会に手を伸ばす。


 ただ、その手を伸ばす。届かないとわかっていても、私はまた貴方を想う。

 


 異形は見る影もなくなり、その場に神威さんは倒れ黒き影は消失していく。


 どうやら神威さんは無事らしい。


 私の傷もいつ間にか癒えていた。


 全く何が起きたのか分からない。わかるのは、アキラがわたしを助けてくれたということだけ。



 ここに来たら、会えるかもと思っていたけど、本当に再会できるなんて夢にも思っていなかった。





 

 でも、再会した彼は酷く冷たく私を見下ろしていた。


 状況は理解できなかったけど、目の前の青年が初恋の人だって、すぐに理解した。


 訳もわからず、私は話しかけていた。



 「アキラ……?あなた、アキラなの?」


 「……誰だ。お前。」


 振り返った青年は冷たく吐き捨てる。


 光の灯さない紫紺の瞳。長く伸びた白銀の髪。綺麗な藍色の和服。そして漆黒の翼。


 瞳の色は違うけど、間違いなくアキラだった。


 でもアキラは私を覚えていない。私にとって特別な思い出でも、彼にとってはそうじゃなかったのかもしれない。


 アキラは威圧するように、鋭い刃を私の首元に立てる。



挿絵(By みてみん)


 


 「え?」



 「なぜ俺を知ってる?お前、御三家の生き残りか?それとも協会の差し金か?」


 「何の話……?お、覚えてないの?私、鈴華だよ?わたし、あなたにずっと、ずっと会いたくて!!!……それ降ろしてよ、怖いよ、アキラ。」


 私は怯えながら、アキラに訴えかける。この程度のことで、諦められる訳はない。ずっと会いたかったんだから。また夢に迷ってる私の前に現れてくれたんだから。


 何があったのか知らないけど、とっても優しくてあったかい人だって、私は知ってるから。



 「……あの屋敷の後継か。」


 アキラは納得してみせると、翼を羽ばたかせどこかへと飛んでいく。


 「ま、まって、待ってよ!!!!」


 手を伸ばして呼び続けるが、私の声は届くことはなかった。


 そこにはただ舞い落ちる羽根が、降り注ぐだけだった。



 


 まだちゃんと、お礼言えてないじゃない。今日のことも、あの日のことも。


 沢山話したかったのに。


 


 




 ずっと会いたかった初恋の人は十年の間に、大きく変わったらしい。最悪の再会だった。


 でも、変わっていないのは、私だけなのかもしれない。夢を失って、また縋るようにこんなところに来たんだから。




 


 あんなに明るかった太陽の光は見る影もなく───────月夜が照らす光は悲しく見えた。


 私はどうすることも出来ず、神威さんと森の中で意識を失った。






 

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