第43話 第三章 犬狩りの宴 (5/5)
バルキリードッグの真の強さはその巧みな連携にある。彼らは視覚を共有しているが、それ以外に動作連携をある程度自分の戦闘AIにプログラミングしていた。それが各々の戦闘思考に影響を及ぼし、普通に攻撃しているつもりでも、自動的に他と連携が取れるようになっている。
二人がレーザーソードで切り掛かり、避けたところに、残りが待ち構えていたように、銃を放つ。一つ間違えばお互いを攻撃してしまいそうな中で、ドッグ達は流れるように連携して、クロスハイドに攻撃を浴びせ続ける。しかし、デイルは気づいていた。
「まるで読んでるみたいにいなされるな」
デイルもその連携に加わり、レーザーソードで切り掛かるが、クロスハイドが右腕に装備している小ぶりな黒いシールドに弾かれてしまう。
「手を止めるな! どうせそのうちに落ちる」
ドッグの二人がレーザーソードで突きをした瞬間、クロスハイドはスレスレでそれを交わし、反対に二人のレーザーソードを持つ手を掴んだ。
「終わりだ」
クロスハイドの掌のランプが赤く光り、二人の動きが完全に停止する。
――あれは触れるとダメらしいな。
他の二人が銃を打つが、クロスハイドは停止させた二人を盾にしてそれを受けた。
「この野郎!」
クロスハイドは二人を盾にしたまま前進していくと、ドックを四人まとめて壁に押しやった。
「切れ味を試せるな」
四人全員が壁に当たり、バウンドしたその一瞬で、クロスハイドは腰の剣を、居合切りの要領で横一閃に切り裂いた。四人の体は綺麗に横に真っ二つになる。
「今だ」
デイルは後方からチャージしたバルカン砲を再度クロスハイドに打ち込んだ。酒場内で爆発が起き、煙が充満する。
「やったか……」
しかし、クロスハイドのブラックシールドはバルカン砲をたやすく防いでいた。
「貴様ぁーー」
デイルはレーザーソードを振りかぶった。クロスハイドもそれに答えるように剣をかまえる。
電話のコール音が酒場の中に鳴り響く。それがプツッと途切れて応答モードへと変わる。
「終わったか?」
ラビドの声が低く響く
「ああ、思ったよりは苦戦した。お前の剣があってよかったよ」
クロスハイドは、デイルや他のドック達の屍の上に座り、手には彼の首を持っていた。
「そうか。手筈通り、傀儡師を行かせた。あとは任せておけ」
「ああ、処理は任せる。警察はどうだ?」
ラビドは笑う。
「客が抜けてくれて助かったよ。発覚は明日になるがバルキリー・ドッグに辿り着く頃にはもう戦いは始まっているだろう」
「ありがとう」
クロスハイドは満足そうだった。一瞬の沈黙の後ラビルはつぶやくように語り掛ける。
「明日だが……。想定よりは手助けできそうだ。期待はしないでほしいが」
「元から一人でやるつもりだった。問題はない」
「すまない。俺はお前を誇りに思うよ……」
ラビドのらしくない返しにクロスハイドは苦笑した。
「俺は死ぬつもりはない。終わったら抜けるがな」
「風はどれだけ事前に読んでも、結局はその瞬間にならないとわからない。いい追い風が吹くことを祈る」
そう言って、ラビドはコールを切ると、また暗い海の底に潜った。
クロスハイドもコールを切る。店内は初めから誰もいないかのように静かだった。




