第41話 第三章 犬狩りの宴 (3/5)
たまたま女性職員とすれ違うと、バルキリー・ドッグの一人ギリアムが、その後ろに回り込む。
「おい嬢ちゃん。あんたいいなぁ。仕事なんかやめて、俺と遊びに行こう」
その様子を他のメンバーは面白がって見ているだけで止めない。
「やめてください……」
職員は怖がっていた。
「うちの職員に手を出すのはごめん被りたい」
部長室と書かれた部屋から小太りの新部長、ロブが出てくる。ギリアムは手を解いた。ボスのデイルが部長と握手を交わす。
「こちらに来てくれ。君らは職員には刺激が強すぎる」
デイルは笑った。部長に個室に案内されると、どっかりとソファに腰掛ける。
「まさか、あんたから依頼が来るとはねぇ」
部長は言う。
「猫の手も借りたい状況でね。君らにとってもいい話になると踏んだ」
デイルは言う。
「俺たちが望むのは二つ。免責とライセンスだ」
部長は聞き返す。
「ライセンス?」
デイルは笑う。
「とぼけるな。マーダー・ライセンスだ」
部長が、指を鳴らすと、さっきの事務員が入ってきて書類を手渡した。
「契約書だ。それにサインできるなら、手配しよう」
デイルは部下の一人に読ませる。
「もし契約不履行の場合、ライセンス失効とあるが、これは、護衛任務を放棄したらと言う意味でいいでうすか?」
デイルの部下の問いかけに部長は首をふる。
「よく読め、お前らの担当は、ドーム内の要人全員だ。合計死亡者がその中で、3人以上でたら、契約不履行とみなす」
デイルは肩をすくめる。
「そんなもん相手の戦力次第だろう」
「それも含めての契約だ。相手の戦力が多すぎて、重要人物が死ぬようならそもそもライセンスは出せん。わかるだろう。結果が全てだ」
デイルはこんな契約は飲めないとばかりに立ち上がって行こうとする。ロブはその背中に話しかけた。
「いいのか? これ以上にいい条件は今後引き出せんぞ。上から最大限粘ってこれだ。今日断ればこれ以上はない。俺も社内からかなり不満を買ってるしな」
デイルは舌打ちをすると、背中からもう一つ腕を出した。その手が、長く伸びて契約書にサインする。
「三つ目の腕は自分の意思じゃないとか言うなよ」
部長の軽口をいなして、バルキリー・ドッグの面々は、警察署をあとにした。その夜、バルキリー・ドッグ達は地区内のバルに顔を出した。彼らを見て、店主は顔色を変える。
「おい、10人分の席を用意しろ」
店長は急いで言う。
「すいません。あいにくと満席でして」
店内は盛況でどこの席も埋まっていた。
「ふん」
デイルはギリアムに目で合図を送る。ギリアムはニヤッと微笑むと、近くに座っていた子連れの父親に声をかける。
「おい、邪魔だ。席を空けろ」
「なんだ。君たちは、私たちはまだ食事中だろう。順番を待ったらどうだ」
ギリアムは笑うと、片手でその父親の首元を捻りあげる。父親は突然宙ぶらりんになり苦しそうにもがいた。
「邪魔だと言ったんだ。聞こえなかったか?」
店主が慌てて止めようとする。
「お、お客様!」
デイルがそれを止めた。
「まあ見ておけ。すぐ席があく」
父親が苦しんでいるのを見て、母がすぐどきますからと必死でアピールした。
父親はギリアムが離すとその場で崩れ落ちる。
「とっとと、空けねえからこうなる」
言いながらギリアムはまわりをにらみつけた。
「何ぼさっとしてやがる。同じ目にあいてえか?」
周りのお客が逃げるように席を開けて行った。
「ほらな、」
言うと、ギリアム達は空いた席にそれぞれ座った。
「エナジースパイクをあるだけ持って来い。在庫全てだ。それとステーキ、ガーリックチップもあるだけ添えて来い」
店長は恐れでで固まっていた。
「早くしねぇか!」
「はい!」
店員が厨房に来た店長に声をかける。
「警察に通報しましょうよ」
「だめだ。そんなことしたら殺されちまう。戦争のニュースで見たことがある……あいつらはバルキリー・ドッグだぞ、警察でも太刀打ちできん」
店長は震えをなんとか抑えながら指示を出し始めた。店の客は次々と逃げるように店を出ていく。
「おいおい! 逃げることはねえじゃねえか」
たまたま来ていた。二人組の女性客をギリアムが捕まえた。
「こっちで一緒に飲もう。何、取ってくやしねぇ、楽しく飲むだけだ。なあ皆んな」
ギリアムに賛同するようにみんなが笑った。
「悪趣味な……」
バルキリー・ドッグの中の一人、エリポスは付き合ってられないと、トイレに向かった。ギリアムはそれを見て笑う。
「なんだあいつ」
「堅物だからなぁ、エリポスは。なあボスなんであいつをいれたんです?」
デイルは女を撫でながら答える。
「奴は頭がいいからな。契約や金勘定はあいつに任せられる。変に正義感があるからちょろまかしもしねぇしな。したら殺すが」
ギリアムは笑う。エリポスはトイレで悪態をついていた。
「全く、入る集団を間違えたな」
エリポスがトイレをしていると、一つの個室に誰かが入っているのに気づく。
「おい、店員か客か、知らないがとっとと裏口からでも出ることをお薦めする。バルキリー・ドッグが宴会を開くんだ。ここは時期に地獄に変わるぞ」
個室から反応はない。
「全く、俺は言ったからな」
エリポスが出て行こうとすると、背後から声が聞こえた。
「まるで『地獄』を知ってるような口ぶりだな」
エリポスが驚いて振り向こうとするが、次の瞬間、エリポスの首は床にころがっていた。




