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機械仕掛けのドラグーン ~遺伝子操作の最高傑作は、機械の体で復讐する~  作者: 纏笛


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第22話 第二章 血が滴るショッピングモール(5/5)

ミキとアカリの殺し屋稼業を手伝うことになったエヴァン。


Dr.竜宮からの提供で、エヴァンはロボットの体を手に入れる。


一方のミキとアカリはショッピングモールで暗殺を遂行しようとするが……


登場人物

エヴァン・アトラス:主人公 通称『As エース』 

Dr.竜宮:科学庁のお荷物

ミキ・竜宮:エヴァンのクラスメイト

アカリ・竜胆:エヴァンのクラスメイト

ヴエロ:剣聖

 時はアカリが任務を開始するところまで遡る。

 エヴァンは外にいたが、Dr.竜宮から指示が飛んできた。


「聞こえるか? これは今君に向けてだけ喋っている。あの子達には聞かれたくない。聞こえたら、返事をしてくれ。今から音声は全て私のみに繋ぐ」


 エヴァンは困惑したが、頷いた。


「はい。わかりました」


 Dr.竜宮は一呼吸おくと、言う。


「あの子達を守ってほしい。僕の勘が正しければ、今日あの子達は窮地に立つ。それを救ってほしいんだ」


 エヴァンは意図を探ろうとする。


「殺しを手伝うんですか?」


「殺しは手伝わなくていい。それより大変なのは脱出だ。その現場からね。毎回脱出の方がはるかに命懸けになる。特にこんな監視社会ではね」


 エヴァンはすぐに呼吸を整えて精神を落ち着かせる。


「わかりました。どうしたらいいですか?」


「ビクトリーモールに向かってくれ。あそこで任務がある」


 エヴァンは言われるがままにビクトリーモールに向かった。


「四階のレストランフロアだ」


 エヴァンがついた時がちょうどアカリが標的の首を飛ばした瞬間だった。


「あれは、アカリですか?」


「そうだ」


 言うDr.竜宮の口はいつもより重さが乗っていた。直後警報が鳴り、アカリと剣聖ヴエロの戦闘が始まる。


「あれは剣聖……。ヴエロ? これを知っていたんですか?」


「いいや……。ここまでの大物が来るのは想定外だ」


 Dr.竜宮の音声から焦りが感じられた。


「エヴァン君、スモークボールのページは読んだかい?」


「少しだけ……。必要ですか?」


「この空間だけでいい、3個で足りるだろう」


 エヴァンはうなずくと、靴紐を直すようにしゃがみこんだ。その腕の下から、2本の細い線が手に伸びて、そこから風船のように白い手のひらサイズの球が膨らむ。


 エヴァンは素早く小さい球を三つ作ると、それをこっそりとアカリ達の近くに転がす。


Dr.竜宮はそのあまりの手際の良さに思わず笑った。


 アカリがやられた直後、煙玉が爆発し、何とかアカリがその場を離れようとする。


「追ってくれ」


  エヴァンはDr.竜宮の指示に従う。しかし、Dr.竜宮はアカリではなくヴエロの方を追わせた。


 剣聖ヴエロは一度アカリを見逃した後、警察の応援要請を受けて、追跡車に同行することになった。遠目で警察車両を追うエヴァンの横に無人のバイクが横付けされる。


「これで追うんだ。自動操縦だから運転できなくていい」


 Dr.竜宮の声に呼応するようにバイクのランプが点滅する。エヴァンはヘルメットを被ると、バイクに飛び乗った。戦いが始まっても竜宮はエヴァンに指示を出さなかった。


 車上での戦いを見ているエヴァンはただ圧倒されていた。


――アカリは本当に女性か? いや、男と比べてもおかしい。


 剣聖の体が変わると、Dr.竜宮がつぶやく。


「あの目……やはりアドバンスドか。君と同じ技術の最高到達点だな」


 直後、アカリは貫かれ、周りを警官に囲まれた。


「脱出させてくれ。カメラはスモークボールでまける。アカリを連れてそのままバイクで逃げるんだ。それ以外のやり方は君に任せる」


 エヴァンはうなずくと煙の中、バイクを走らせて突っ込む。そしてバイクの上で飛び上がると、空中で一回転して、アカリを車から引き剥がすと、再度バイクの上に飛び乗ってその場を脱出した。


 話を聞いてアカリは呆れる。


「あの煙、ミキだと思ってた。あんただったんだ」


 エヴァンはうなずく。アカリはふーと息を吐くとエヴァンを見た。


「本当に手伝う気なの?」


「そうだね……。今日は正直想定外だったけど、前の借りを少しは返せたかな」


 アカリは笑った。エヴァンは少し黙っていたが、口を開く。


「竜宮さんに聞かれた時、俺は濁したけど、正直な所、恨みもある。奴らに復讐したい気持ちは君らに協力する動機の中では6割を超えてるだろう」


 アカリは黙って聞いていた。


「マリーがいない今、俺に生きる希望はあまりない。ただ落とし前をつけたいんだ。自分に降りかかった出来事に区切りをつけたい」


 アカリはエヴァンの目を見た。


「それがアンタの望み?」


「そうだ。そのために俺は戦う。自分のためだ。だから君らも俺に気を使う必要はない。対等な仕事仲間として接してくれ」


 アカリはエヴァンの差し出した手を見ると耳に手をかざす。


「聞こえてる? ミキ」


 遅れてミキが返事をした。


「ああ。聞こえた」


「ミキの分まで握手していい?」


 ミキは眼鏡を直す。


「うん」


 アカリはロボットのエヴァンと握手をする。


「あんたが本当に復讐するときは別料金ね」


 ミキの容赦なさにエヴァンは呆れて笑った。通信が切れた後、竜宮がミキに話しかける。


「意外だね。気に入ったのかい?」


 ミキは苦い顔をした。


「昨日はまだ上っ面でしゃべってんなと思ったけど……さっきのは違った。それにあいつが今日いなきゃアカリは死んでた……。印象が変わったのは間違いない」


 竜宮は笑った。


「僕が彼を引き入れたのは実験台としてもそうだが、君らに得があると判断したからだ。彼から学べることも多いはずだよ」


「調子に乗るな。今回たまたまうまく行っただけで私はまだ認めちゃいない。今後の成果次第では奴を切るからな」


  竜宮は腕をすくめた。


「ご自由に。だがその決断で死ぬのは君ではない。アカリだということは頭に入れておくといい」


 ミキは舌打ちするとロビーを後にした。


 竜宮はふと、ロビーにある写真立てを取る。写真には黒く焼けた気の強そうな女性が、赤ちゃんを抱えて映っている。


「日増しに君に似てきているよ」


 写真の女性はホログラムで浮き出ると微笑を竜宮に返した。

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