生気を失った目
チチチチチ、という小鳥のさえずりで目を開ける。
昨日は結局玲と話して、1時くらいに部屋に戻ってきたら呑気にテレビを観ていたルームメイト達に捕まり、結局2時くらいまで起きていた。
とは言っても、僕の身体に染み込んだ生活習慣は良くも悪くも力を発揮しているようだ。
寝不足気味で瞼が重く、気を抜けばそこはもう夢の世界だ。
夢といえば、昨日の玲の話は結局何だったのだろう。
信じられないような事ではあるが、夢なんてそんなものなのだと割り切ってしまえば気にすることでもないか。
それにしても……
『僕が死んだって…………?』
『……優が見た夢と私が見た夢は違うのかな? まあ、似てるだけでも凄いと思うけどね。 夢分析って聞いたことある?』
『いや、聞いたことないな』
『そっか。 自分が死ぬ夢とか、死ぬ直前で覚める夢って、何か自分の願いが叶ったり、もう少しの努力で目的が達成されることの暗示って話だから、前向きに捉えてこっ!』
特に目的や願望は無いと思うんだけどなぁ……。
強いて言うなら明梨と長続きすればいいな、とかそれくらいだけど……。
やっぱり考えても仕方ないよな。
たかが夢だ。
玲の言った通り、ポジティブシンキングでいこう。
「ねえ、優?」
「…………」
「おーい、優~? ぼーっとしてどうしたの~?」
「……………………」
「友潟どうした? 煙が目に入ったか?」
「さぁ…………?」
「……っへ? ごめん、どうした?」
「「あ、生き返った」」
「あれ、僕もしかして死人扱いされてたの?」
我にかえると目の前で明梨とシャッチーが僕の顔を覗き込んできている。
農村体験の班でウォークラリーに行き、班ごとにバーベキューをしているところだったか。
この数分意識が完全に飛んでた。
どうやら寝不足が予想以上にダメージを与えていたようだ。
「びっくりしたよほんと、さっきまで一生懸命やってたのに、急に端っこに行って座ったと思ったら応答しなくなったんだもん」
「え、どれくらいぼーっとしてたか聞いてもいい?」
「友潟が火の管理して俺が肉焼き始めて少し経ってからだから……10分とかじゃね?」
「うわ……それ完全に職務放棄してんじゃん」
「そうなるな。 まあ実際は火の管理意外にも色々と準備もしてくれてたから俺は何とも思ってないけど」
「目真っ赤だよ。 疲れてる? 休んでていいからね?」
「いや、このまま休んでると僕の分の肉が全部シャッチーに持っていかれそうだし、戻るよ」
「……なんでわかったし」
「ちょっとカマかけただけど……本当にやるつもりだったのか。 後で野菜を沢山盛り付けてやるからな」
「やめてくれ頼むから…………」
「なんか2人ともすっかり仲良しだね。 私は先に戻ってるよ~」
「あ、待て俺も戻る」
慌てて明梨を追いかけるシャッチーを見て思わず笑ってしまう。
「……明梨とシャッチーも十分仲良くなってるけどな」
一昨日のことなんてまるで無かったかのように接する2人を見て僕は立ち上がる。
戻ろうとすると、視界の隅に僕と同じように座っている人を見かけたので、そちらに歩を進める。
「おい、生きてるか?」
「……」
「……俺もさっきはこうなってたのか…………。 おーい、戻ってこーい」
いくら呼びかけても反応がないので、思い切って背中をぱちん、と叩いてみる。
「ーーっ!? あ、ごめん優、どしたの?」
「なんだろう、同じことしてたと考えるとなんだか2人に申し訳ない……」
「2人……?」
「あぁ、いや、こっちの話。 虚空を見つめてたけど、疲れたの?」
「あー……。 うん、寝不足気味で……」
「昨日の夜僕のこと誘ったからでしょ……」
「え、えへへ~……。 楽しかったからいいんだけどね」
「否定はしない。 というか僕も同じ感じみたいだしな……」
「ちょっと浮かれすぎちゃったかな? あ、私もう戻らないと。 ぼーっとしすぎてた」
「僕も。 じゃあ、またね」
「うん。 火傷とかしないでよ?」
「そっちこそ」
そう言って改めて明梨たちのところに戻る。
いつもは目にきらきらとした光を宿している玲だが、完全に目から生気が抜けていたのは初めて見た。
周りを見ても他に休んでいる人はいなさそうだし、僕と玲だけが端っこでぼーっとしていたと考えるとなんだか恥ずかしく思う。
やっぱり夜更かしはよくないな。
その後、宣言通りシャッチーのお皿に野菜を大量に盛り付けてやり、最後も笑顔で宿泊行事を締めくくった。
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