共犯
僕らはその後お婆さんの作ってくれた昼ごはんを食べ終わり、食べる前のように雑談をして盛り上がっていた。
僕のさっきの発言もあって、女子の方はより僕と明梨に興味が湧いたのか、次々に質問が飛んでくる。
まだ誰にも付き合っていることを打ち明けないようにしているから、所々話を合わせながらうまく会話を進めていっていた。
だが、嘘などで誤魔化してもバレるのは時間の問題だろうから、この宿泊行事が終わる頃にはもうクラスの人には知れ渡っているだろう。
僕らが盛り上がっている間に昼食の片付けなどをしていたお婆さんは、僕らの下に戻ってくるなり口を開いた。
「ねえ、ここにずっと座っていてもつまらないでしょう。 これ以上手伝ってもらうことはないし、近くに川とか神社とかもあるから、まだ暑いだろうけど少し散歩してきたらどう?」
その提案に僕らは顔を見合わせる。
僕やシャッチーはもう疲れは取れたし、気分転換するのもありだと思っていたが、女子の方はどうなのだろう。
「いいんじゃない? 私もちょっと散歩してみたいって思ってたし」
「私も賛成~!」
結局、満場一致で散歩に行くことになった。
お婆さんも一緒に行くのかと思っていたが、どうやら僕らの帰りを待っているらしい。
あんまり遅くならないでね、とだけ言われて僕らは歩き出した。
シャッチーが先陣を切って進みながら他の女子と話をしているとき、明梨が僕の服を後ろから摘んできた。
何事かと振り返ると、明梨が頬を膨らませて僕を見ていた。
そういえば、さっきやらかしたんだった……。
「もう、アイコンタクトを送ったっていうのに、何で言っちゃうのよ」
「ごめんごめん、てっきり言っていいものだと勘違いしちゃって。 それに多分、この感じだとすぐバレると思うし、言っちゃっても良いような気がしたんだよけ」
「だからって色んな人にすぐ言っちゃうと、下手したら大騒ぎになるよ……」
「そうだね……。 明日、玲には言ったほうがいいかな? あんまり嘘を吐きたくないし」
「……それもそうね」
どこか含みのある話し方のように聞こえたが、同意したことに変わりはない。
彼女の性格からは考えにくいが、玲に言った時に騒ぎにならなければいいけど…………。
「あっ、また2人で話してる~」
後ろの方で話しているのが前にいたみんなにバレてしまった。
そして僕だけが腕を引かれる。
僕らのことが気になる気持ちはまあ分かるが、なんでそんなに僕だけ狙われるのだろう……。
「ほら、あっちに川あるから行こっ!」
「ん? この手は?」
「「気にしないの!!」」
「え? いやちょっと、待っーー」
僕が女子に包囲されて連れて行かれそうになっているのを明梨とシャッチーはぽかんとした表情で見ていて、川に向かって走っていくにつれて2人の姿は見えなくなってしまった。
「……っはぁ……はぁぁ…………なんで……今日はこんなに……走らないと……いけないんだよ……」
「あはは、ごめんごめん。 ちょっと急ぎ過ぎたかな……?」
「なにも走ることなんてないよ……どうしたの、急に…………」
「いや、どうしたもこうしたも……ねぇ?」
走ってる途中から本当に川に向かってるのかさえ不安になっていたが、明梨とシャッチーを除いた4人はちゃんと川のすぐ横に腰を下ろしていた。
日陰になっているから休むのには十分だ。
岩の地面のせいでお尻が物凄く痛いけど。
何故僕だけ連れ出したのか理由を訊こうとしたのだが、はぐらかして質問に答えてくれる様子はない。
それどころか、僕らが走ってきた道をチラチラと見ている。
「ね、ねぇ。 なんで僕だけーー」
「しっ! 後で説明してあげるから、ちょっとだけ静かに! 今出たら私たちの努力が水の泡になっちゃう」
そう言って僕を連れ出した張本人は僕の目の前に来て人差し指を立てる。
っていうか、顔近いって……。
なんなの?
最近の女子高生ってこんなに積極的なの?
それにしても、この人はクラス内で人気があるというだけあってスタイルいいな…………。
……いや、何考えてるんだ……。
とりあえず落ち着こう。
女子3人に囲まれるっていう摩訶不思議な構図になってはいるけど一旦冷静になるんだ、僕。
心臓がうるさく鳴っているのは走ってきたからだ。
決して女子に囲まれてドキドキしているとか、そういう理由ではない。
そうやって自分に言い聞かせていると、明梨とシャッチーの声が聞こえてきた。
他の3人に目をやると少しだけ腰を浮かせて2人の様子を窺っているみたいだから、僕も倣って様子を見る。
「みんな、本当にどうしてそんなに急いで行っちゃったんだろうね?」
「そ、そうだな。 なんでだろうな……はは」
いやシャッチー、誤魔化すの下手かよ!
と思わずツッコみたくなるような返事が聞こえたが、ここはじっと見守る。
「な、なぁ、話聞いてくれないか? だっ、大事な……話なんだけどさぁ」
「……? 大丈夫だけど、どうしたの急に?」
「…………」
口を噤むシャッチー。
この状況を見てようやく僕は女子が僕だけ連れていった理由がわかった。
シャッチーの告白だ。
「あ、あのっ……お、俺と、付き合ってくれませんか…………?」
なんとか振り絞って出した言葉。
その様子を外野から眺める僕らは、なんだか気恥ずかしく感じる。
突然の言葉に驚いた明梨は、少しの間言葉を発さずにただシャッチーを見つめていた。
そして、急に強い風が吹いた。
風に煽られないように身を屈める。
その後、風が止んだのを確認して2人の様子を見てみると……。
そこには地面に崩れ落ちているシャッチーと、僕らに気付いて顔を真っ赤にしている明梨の姿が見えた。
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