クラッシャー
「では、これでビンゴ大会は終わりま~す! 協力してくださった先生方、ありがとうございました~!」
「いや~、面白かったぁ! 澤谷先生面白すぎるよぉ~」
隣では、目尻にうっすら涙を溜めて明梨が笑っている。
どうやら、ビンゴ大会での澤谷先生の暴れっぷりがツボにはまったらしい。
ビンゴ大会は司会と先生が前に出て進行をしていたが、その時澤谷先生はちゃんと座って真面目にビンゴをしていた。
問題……と言っていいのかはわからないが、事が起こったのはその後だ。
ルールは、配られた25マスの用紙の真ん中は既に開けられていて、他の24マスに2桁の好きな番号を書いて、ビンゴになったら申告し、先着順で景品が貰えるという至って普通のものだ。
この大人数だからと、景品は多めに用意され、回数も25回とかなり少なめの設定にされていた。
どこかのネットで見た情報だと、25回までにビンゴが出る確率は10パーセントとかなり低いらしい。
だから、10回以内にビンゴを引くような人は相当な運の持ち主だ。
さて、ここまで喋ったら、察しの悪い人でも多少は予想がつくだろう。
そう、澤谷先生は、最初の4回でビンゴを引き当てたのだ。
そのときの澤谷先生の喜ぶ姿は歓喜とかそういうレベルじゃない。
発狂に近かった。
「しかも、4回でビンゴを出しただけでも信じられないのに、2人目のビンゴが出る前にもう一回ビンゴ出してるからね、先生」
そうなのだ。
澤谷先生の強運っぷりは止まるところを知らないようだった。
確か2人目がビンゴを申告したときはちょうど10回目。
なんと澤谷先生は、その1つ前に再びビンゴが出たと申告したのだ。
ルール上、景品は一人一個だと司会の生徒が伝えていて、澤谷先生が悲壮な表情をしていたが、それを見た周りの生徒の提案によって澤谷先生だけは景品を2つもらうことになった。
……その後も、2回ビンゴだと言って騒いでいたが。
「あの人、絶対運使い果たしたよな…………?」
「だろうねぇ…………」
後ろを見てみると、景品で貰ったワイヤレスイヤホンと猫のぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
視線に気付いた彼は、自慢するかのように2つの景品を目の前に掲げる。
……多分、今までで一番腹が立った。
「楽しそうだね……。 あの人、私たちよりも楽しんでるんじゃない?」
「だろうな。 まさかワイヤレスイヤホンを真っ先にかっさらうなんて、大人げない……」
2回目は流石に自重してぬいぐるみで我慢したようだが、イヤホンはやめろ、イヤホンは。
そしてそれを周りに見せびらかすな。
そろそろ殴られるぞ。
「では、次はお待ちかねのカラオケ大会でーす! 参加者はステージの方に来てくださーい!」
「さてと、控えめに頑張りますか」
「いやいや、勝負だからね? 一番投票数が少なかった人は他の3人に奢りだから!」
「今初めて聞いたんだが…………?」
そう言って、ステージに向かう。
周りにも参加者らしき人がちらほらいるようだった。
思ったよりも参加者は多いみたいだ。
澤谷先生はまだ暴れ足りないのか、席を立ってステージに向かおうとしていたが周りの先生や生徒に止められていた。
澤谷先生が立ったときに見せた司会の顔を俺は忘れないだろう。
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