平凡な学生生活
そして、あの後は特に予定もない日々が続いた。
玲からも明梨からも連絡がない日というのは珍しいことだったから、この数日の間に夏休みの宿題を少しでも減らしておこうと、僕は有り余る時間を使って勉強をしていた。
エアコンをつけ、快適な部屋の中でシャープペンシルを走らせる。
窓から外を見てみると、爛々と輝く太陽に照らされながらも無邪気に走り回る子供たちや、うちわをぱたぱたと動かす男の人と日傘をさす女の人。
みんな、休みに入ってそれぞれの時間を過ごしているようだった。
その日は勉強の合間に小説を開くなどして、気が付けば夜になっていた。
母は今日も働いている。
玲は部活だろうか。
明梨も、僕みたいに家で勉強をしているのだろうか。
そう考えると、みんな頑張っているのだから僕もやらなければという気持ちになってきて、勉強に集中できた。
次の日も、僕は勉強していた。
今日も今日とて暑い日が続いている。
梅雨が明けたというニュースも耳にしたから、これからまだまだ暑くなっていくのだろう。
何故か今日は集中することができないから、気分転換として、今読んでいる小説と勉強道具を持って駅前のカフェに向かう。
僕らがよく行くカフェだ。
僕の最寄り駅は学校の最寄り駅とは違って発展してる訳ではない。
だからこそ、そのカフェは圧倒的な存在感を放っていた。
僕が1人で来ることなんて初めてだ。
彼女たちに会わなければ、きっと来ることなんてなかっただろう。
そんなことを思いながら席を取る。
ほとんどの学生は既に休みに入っているのか、平日だというのに小さい行列が出来ていた。
大して栄えていないこの場所では、絶好の避暑地になっているようだった。
十数分待って、ようやく手元にカップが渡ってくる。
今回頼んだのは何でもない、普通のアイスティーだ。
いつもはフラチーノだの何だの頼んでいるから、お金がすぐに飛んでいってしまう。
倹約家という程ではないが、流石に何回も高めのものを頼んでいると気になってしまう。
たまには何の変哲もないものでも十分だ。
明梨に教えてもらった通り、ちゃんと長机に席を取って勉強を始める。
室内とはいえ、扉が開くたびに多少なりとも熱気が入ってくるが、アイスティーを流し込んで頭を冷やす。
家でやっているときとは違って、驚くほど勉強が捗った。
これくらい進めれば、夏休み終盤に徹夜で宿題をやるなんて事態にはならないだろう。
夕方になって、日差しが弱くなったところを見計らってカフェを出る。
この時間になると仕事帰りだろうか、ワイシャツに身を包んだ社会人が疲れた顔で帰っていくのを多く見る。
陽が落ちたとはいえ、じわじわと身体にまとわりつくような暑さはまだ残っていた。
道行く人々がみんな顔をしかめる。
それに混じって、僕も家までの道を歩いていた。
至って普通の、学生の生活。
何ら異常は無いはずなのに、何故か昨日から心のどこかで違和感を感じていた。
何かが違うような気がした。
この生活に不満はない。
なら、何が足りない?
答えは単純。
明梨や玲といった存在が身の回りにいないことだった。
思えば僕はこの数日間、ずっと明梨や玲からの連絡を待っていたような気がする。
意識していなくても、メッセージアプリを開いては閉じ、また暇なときに開いてみては閉じる、などといった時間を過ごすことが多くなっていた。
それほどまで、彼女たちの影響は大きかったんだと思う。
それが突然消えたとなると、大きな違和感を感じることは避けられない。
宿泊行事まであと1週間もないくらいだ。
服も買っておきたいし、僕から彼女たちに連絡をするべきだろうか。
そう思って、黒い画面のスマートフォンを見つめていたとき。
〈突然ごめんね。 優、明日空いてる?〉
天使様から、呼び出しがかかったようだ。
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