相談
あれから1週間、僕らは前に一緒にいたときよりも確実に関わりが増えていった。
そして気付けば、学校にいる間はほとんど明梨や玲と行動するようになっていた。
クラスの人とは、まだまだ話せないまんまだ。
やっぱり、同じクラスの人とはいえ一言も会話したことがないような人に話しかけるとか、僕にはまだ早いらしい。
それにしても、ここ数日でコミュニケーション能力はそれなりに上がったと思う。
そりゃ学校内でもトップレベルと称される美少女2人と一緒にいれば、嫌でもコミュニケーション能力は上がる。
今日は土曜日。
明梨も玲も部活があるということで、今日は久しぶりに1人で行動することになる。
文芸部にも出てはいるが、聞いてみたところ週1回でも顔を出せば、後は特に集まりなどがない限り顔を出さなくてもいいらしい。
部室に行って何をするかといえば、部誌を書いたり、原稿を書いて大賞に応募するなどといった、ちゃんとした活動内容がある。
だからといって、部誌を書くという仕事以外は特に指定されていないので、静かな部室内で本を読むだけでも大丈夫とのことだ。
いや、この部活大丈夫か。
ただでさえ文芸部っていう名前から来る人が少ないだろうに、想像の遥か上をゆく緩さだ。
そりゃ廃部寸前ってことにもなるな。
僕はもちろん読書しかしていない。
部誌も大体2ヶ月に一度くらいのペースで書くので、仮入部期間に入る前にすでに書き上がっていたらしい部誌は、部室の本棚の端に完成したものが入れられていた。
だから、当分は仕事がない。
今年入った部員は現段階で僕1人。
2、3年生を含めて計4人。
部活動の廃部ラインは部員が3人を下回ること。
うん、確かにギリギリだ。
これだと、いずれ廃部になる。
誰か誘いたいところだが、生憎僕の友達は今のところ2人だ。
……今は考えるのをやめよう。
校舎から出ると、舞い落ちた桜が地面を這っていた。
もうすぐ5月か。
テストも近いし、勉強でもしようか。
「お、友潟君。 部活は?」
爽やかな声。
振り返ると澤谷先生がいた。
「週1なので。 もう帰るところです」
「週1か、いいじゃん。 上坂さんとたくさん遊べるね」
「いや、いつも言ってますけど、僕と上坂さんは別に付き合ってないですからね?」
「正直、かわいいとは思うでしょ?」
「そりゃ学校一の美少女なんて言われるくらいですし?」
「学校一の美少女とお付き合いかー……。 羨ましいな」
「あの、話聞いてました?」
この人はいつも僕と明梨の関係をいじってくるが、不思議と嫌な気はしない。
溢れ出る爽やかオーラのせいだろうか。
そういえば先週カフェに行ったとき、僕だけ地味な感じで逆に浮いていたのを思い出した。
玲にショッピングに行こうと言われ、明梨が1人だけ仲間外れになるのを嫌って結局3人に行く羽目になった。
「あの……先生?」
「なんだ?」
「私服買いたいんですけど、いいとこないですかね」
「え、突然? しかも俺? まあ、知ってるけど……。 あ、なに、もしかしてデート?」
「ええまあそんなところですかねよかったら僕におすすめの場所を教えてください」
「目が怖いよ、友潟君……」
なぜ玲が僕をショッピングに誘ったのかは分からないが、僕にとっては良い機会だ。
プライドなんてものは特に無いので、オシャレ女子2人に教えてもらおうと思う。
だが……何故か彼女たちは僕にどこに行きたいか聞いてきた。
興味なんて持ったことがないから、分からないと言ったが、『東京だし、たくさんあるからちょっと調べてみなよ! 優が行きたいと思ったところに行くつもりだから!』と、完全に任せられてしまった。
だから、少しでも良いところがあるならそこに行きたい、と思って彼に聞いたのだ。
彼は爽やかイケメンだ。
私服のセンスも凄く良さそうだし、聞いてみて悪いことはないだろう。
「ーーーーだいたいこれくらいかな? いつ行くの?」
「ありがとうございます。 行くのは明日です。 来週にはテストもあるので」
「友潟君って、結構やり手だよね。 せっかく行くなら、髪切った方がいいんじゃない? 目、ほぼ隠れちゃってるじゃん。 イメチェンして、上坂さんの心を鷲掴みにするんだぞ」
「だからなんで明梨なんですか……。 でも、髪を切るのは良いかもしれませんね」
正直、この前髪にもうんざりだ。
目がほとんど隠れるほど長い髪も、変わると決めたからにはバッサリ切って見た目から変えてみるべきか悩んでいたところだし、ちょうどいいだろう。
「じゃ、教えてくれてありがとうございました。 また」
「おう、楽しめよー!」
最初はああいう性格の人は苦手だったが、最近はああいうノリも嫌いじゃなくなってきた。
僕は、少しずつ変わっていくことができているんだと自覚して、心の中でガッツポーズをするのだった。
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