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9.誕生日プレゼントへの道のり6

 レストが養子の件を了承したことで、レストのパーティーへの準備が始まった。ファガー家は国内有数の高位貴族だ。エトルア王国の五大貴族の一つである。その五大貴族の一つであるファガー家の子息の誕生日がホームパーティーで許されるはずは無いのである。別に当主であるカルスタールは心情的にはそれでも良いのであるが、そこは貴族。政治的にも権威的にも国内外に示さねばならない立場なのである。

 また、庶民たちにも経済的に関係してくるのだ。大貴族の開くパーティーとなると大規模なものとなる。それ相応の準備が必要なのである。これはファガー家だけでなくファガー家のパーティーに出席する面々にも言える。ドレスやアクセサリー類に関する服飾関係が最もたるものだ。また、ファガー家ほどの家の子息などの祝い事などでは贈り物、いわゆるプレゼントを用意しなければならない。だが、下手なものは贈れない。故に高価なものになるのは必然だといえる。他に主催のファガー家も食材、会場のセッティング用の花や諸々と出費がある。この出費も貴族の義務とも言うべきものだろう。このような行事ごとでお金を市場に流す。これによって庶民にも恩恵をもたらすのだ。

 まぁ、小難しいことはどうでも良いし、ここでは直接には関係ない話である。ただ、ホームパーティーではすまない程の大規模なパーティーが催されるということである。ということは、そんなパーティーに主席しなければならないレストにも多大な準備がある、ということである。しかも、つい先程まで孤児だったレストである。察してもらいたい。レストの格好は孤児にしては小奇麗ではあるが、孤児にしては、である。髪の毛もモサモサで鳥の巣のようになっているし、本来の髪の色とはとてもではないが言えない。肌も同様である。しかし、栄養状態は悪くないようで発育も良い。所作もなかなか綺麗である。これらは精霊たちの教育の賜物であろう。この様な状態なので早急にレストをパーティー仕様に整えなければならない。身支度からパーティーにおいての立ち居振る舞いなどを、である。



 レストが署名した書類を用意するついでに出来る執事であるルシルードは先んじて準備をしていたらしい。また、カルスタールはそれを分かっていた様だ。

「では、ここから先は私の管轄外になるね。がんばって準備されてきなさい」

カルスタールは神妙に言った。レストは何故そんなに神妙に言われるのか分からなかった。それを知るのはすぐ後なのだが。そんなレストにルシルードが声をかけた。

「では、レスト様、準備をなさいましょう。外に支度を手伝う者達を控えさせておりますので行きましょう」

「分かった」

 レストは素直に従った。後に何故素直に従ったのか、と逃げ出したくなるほどの後悔に襲われることになる。孤児育ちのレストには耐え難い時間が待っていることなどこの時のレストは知らない。



 レストは客間から出て、メイドたちの案内に従って歩いていた。どうも屋敷の奥まった場所に向かっているようだ。屋敷の主たちの居住場所の方面であるらしい。外からの客を迎える場所ではなくプライベート空間となる家族の為の棟であるらしい。かなり落ち着いた雰囲気がある。しかし、元々からファガー家の屋敷は華美な感じのしない品のある重厚な感じの屋敷ではある。だが、それは硬さがあるといっても良い。その点、プライベート空間である居住棟は雰囲気が柔らかい。

 レストが興味しんしんに見回しながら歩いていると目的地に着いたらしく、案内していたメイドが立ち止まった。

「どうぞ、レスト様。この先は浴室になっています。担当の者が居りますので、この先は担当の者がお世話を致します」

 浴室の扉を開き入るように促されたレストは誘導に従い浴室に踏み入れた。

 まず、脱衣所があった。その奥に本命の浴室があるらしい。

 脱衣所には3名程のメイドが控えていた。案内役のメイドが言っていた担当の者とは彼女たちのことであろう。3名の内の一人がレストに声をかけてきた。

「どうぞ、着衣をお脱ぎになってください。その後は私たちがお世話をしますので」

 レストはギョッとした。「いや、いらないから!!」と激しく心の中で思った。レストはジリジリと後ずさった。完璧に逃げの姿勢だ。

 メイドたちは目敏く反応した。反射神経には自身のあるレストが驚くほどの速さで彼女たちはレストをとっ捕まえた。素晴らしい連携と速さだった。レストの身体能力は普通の人とは比べ物にならないので普通なら捕まらないが、残念なことに此処がファガー家の屋敷だったのが災いした。この屋敷の主たちが既に普通ではない身体能力の持ち主たちなのである。必然この屋敷で働くものたちは慣れる。反応される前に先を読んで動くことに長けているのだった…。

 捕まったレストは、というと結果を言えばお世話された。マルッと洗われたのである。浴室から出たレストは疲労困憊していた。

(なんで、こんな…。というか貴族って何時も身体洗うのに手伝ってもらっているのか?一人では入れるし、無駄だよな?)

 レストは悶々と考えていたが、ファガー家では普段は特別手伝ってもらってはいない。男性陣は、だが。今回のことは、石鹸を初めて使うであろうことと今までの汚れを落とすなど隅々まで洗うために鑑みられた結果であった。

 そしてレストは思うのだ。今日は異様に疲れる日だな、と。だが、これはまだまだ序の口であった。故にこの日に何回も後悔するはめになる。なんで養子の件を承知しちゃったんだろうか…と。だが、今日の最後には今日の全てが報われることになるのだ。



こうして、プレゼントへの道のりの第六歩目を踏み出すのだった。

ちょっとづつシリアスから離れられていっています。

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