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【主要登場人物】

◆ 足利 三郎(維直)

本作の主人公。足利義維の次男。数えで四歳。

前世は現代の阿波(徳島)で災害復旧やダム建設に携わった土木エンジニア・樫山三郎。

前世で「社畜」として組織に使い潰された経験から、今世では「畳の上で大往生すること」を唯一の目標に掲げている。名門・足利の血筋を「死を招く呪い」と忌み嫌い、周囲には「泥遊びに耽る無能な幼子」を演じて目立たないよう振る舞う。

しかし、その内面は極めて冷徹なリアリスト。前世の土木工学と地質学の知識を駆使し、四歳児の腕力でも大軍を殺傷できる「環境そのものの要塞化」を画策する。

◆ 賀茂 柳斎

足利家に仕える教育係。修験者の流れを汲む老兵法者。

枯れ木のような外見だが、山を自在に駆け、人心の裏を読み解く「化け物」。三郎の泥遊びが、緻密に計算された「殺戮の陣」であることに気づいた唯一の人物。

三郎の「死への恐怖」が生み出す異常な知略を、武士の誇り以上に価値あるものと高く評価している。三郎にとっては、自らの正体を看破し、平穏を奪って過酷な試練を課し続ける「逃げられない天敵」である。

◆ 足利 義維

三郎の父。堺公方、あるいは阿波公方と呼ばれる足利将軍家の実力者。

中央政界での敗北を雪辱し、再び将軍の座を奪還することに全ての情熱を傾ける野心家。権威と血筋を絶対視しており、泥まみれで這い回る次男・三郎を「武家の恥」「土鼠の生まれ変わり」と公然と蔑んでいる。三郎が施した技術的な防衛策も、すべて「運の良さ」や「神仏の加護」と解釈する、救いがたい無理解者。

◆ 幸若

三郎の異母兄。数えで八歳。後の足利義助。

武士の鑑となるべく育てられ、日々剣術と学問に励む正義感の強い少年。父と共に京へ登ることを夢見ており、臆病で卑屈な態度をとる弟・三郎を「足利の面汚し」として嫌っている。しかし、時折三郎が見せる、冷徹に事態を観察する「大人びた瞳」に、言葉にできない本能的な恐怖を覚えることもある。

◆ 三好 孫次郎 長慶(みよし まごじろう ながよし)

三好家の若き当主。

父・元長を失った後、十代前半という若さで三好家を率いることになった天才。家格の上では、将軍家一門である三郎(足利家)に対して徹底した臣下の礼を尽くすが、内実は阿波の実権を握る冷徹な実力者。三郎の「泥を石に変える術」を、既存の秩序を破壊し、三好が天下を統べるための「国家戦略兵器」として高く評価している。三郎を「若君」と呼びつつ、その知恵を限界まで搾り取ろうとする、三郎にとって最も危険で頼りになるパートナー。

◆松永 弾正 久秀(まつなが だんじょう ひさひで)

長慶の懐刀。

三好家に仕える若き才子。三郎が幼子を演じて周囲を欺いていることや、工学知識を用いて「偶然」を装い結果を操作していることを、唯一見抜いている観察者。三郎に対しては、身分を超えた対等な口を利くこともあり、その知恵が戦国をどう歪めていくかを愉悦とともに見守っている。三郎にとっては、自分の正体をいつ暴くか分からない、油断のならない「劇薬」のような存在。

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