104. 不眠の夜 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
百貨店を出た後、私はようやく、過剰に明るく、過剰に柔らかく、過剰に人の警戒心を溶かしてしまうような夢から目が覚めたような気分になった。
夜の港区の商業街は、前線に近いことを認めたくないかのように、相変わらず煌々と輝いていた。ビルの隙間を吹き抜ける風が、私の手の中の紙袋とビニール袋をガサガサと鳴らす。大きな音ではなかったが、一つのことを完全に理解させるには十分だった。
人間は一度買い物を始めると、なかなか止まれない。 これはギャンブル依存症と、本質的に非常に似ている。
最初はタオル一枚、シャンプー一本のつもりだった。「一回だけ賭けてみる」という心理と、大した違いはない。気づけば次の瞬間、手元には五種類のシートマスク、三本のリップ、そして名前が化学兵器のように長く、機能は深夜のうちに勝手に進化しそうな瓶やボトルの群れが増えている。
私は手の中の戦利品を見下ろした。
ディープモイスチャー、ナイトリペア、角質ケア、低刺激スージング、トーンアップ。
トーンアップ。 私は軍校の学生だ。いったい何の「トーンアップ」が必要だというのか。まさか主砲を発射する前に、少しでも血色をよく見せておこうというのか。
「また何を考えてるの?」
真紀が隣を歩きながら、天気を尋ねるような平坦さで言った。
「百貨店って、非合法だけど黙認されている大規模金融兵器の一種なんじゃないかって考えてた」私は袋を持ち上げて見せた。
真紀はその山を一瞥した。
「少なくとも、爆発はしないわ」
「その見方は楽観的すぎる」私は言った。「今、この中のいくつかの成分について、まったく信用してないもの」
「読めないからでしょ」
「それって、もっと怖いんじゃない?」
真紀はそれには答えず、ごく自然に私の左手の重い方の袋を持ち替えた。歩みは止めず、相談する素振りも見せない。まるで補給物資の重量配分を淡々と調整しているだけのようだった。
私は急に軽くなった自分の手を見て、複雑な気分になった。
「手伝ってあげる」と言葉にする人間は多い。 九島真紀は違う。 彼女はたいてい、すでに持っていってしまった後で、断る間もなかったことに気づかされる。
こういう人間が将来クーデターを起こしたら、成功率はかなり高いだろう。
メインストリートを少し歩いた後、真紀は私を少し静かな脇道へと連れていった。人通りは減り、店も百貨店のような「通りがかる人間を一人残らず引きずり込む」浮かれた雰囲気から、ビジネスホテル、コンビニ、ドラッグストア、船員相手の簡単な食堂といった実務的な顔つきに変わっていった。
そして、今夜の宿が見えてきた。
特徴のないホテルだった。 いかにも標準的で、いかにもチェーン系で、いかにもビジネス向けで、どんな危険な展開も想像させないタイプのホテルだ。
外壁は清潔で、看板は控えめ。入り口には、本物か偽物かわからない観葉植物が二鉢置かれているだけだった。クリスタルのシャンデリアも、ホログラムの噴水も、「一泊の値段が雪風号の副砲メンテナンス費より高いかもしれない」と思わせる恐怖の内装もない。
私は心の中で密かに息を吐いた。
正直なところ、百貨店を出てから歩いてくる間、私は一瞬だけ、真紀が完全に暴走するのではないかと恐れていた。 たとえば、顔色一つ変えずにブラックカードを取り出し、専属バトラー付き、展望風呂付き、戦術会議が開けそうなほど大きなベッドが一つだけの、五つ星のプレジデンシャルスイートを予約するのではないかと。
そうなれば、私はそこに立って、まず靴を脱ぐべきか、それとも切腹して詫びるべきかを真剣に考えなければならなかっただろう。
幸い、そうはならなかった。
真紀は私が思っていたよりずっと現実的だった。 理論上、それは安全なことだ。 問題は、安全そのものが時として危険であるということだ。
なぜなら、豪華さにも、雰囲気にも、いかなる外部の手段にも頼らず、それでも私の心拍を乱せるのだとしたら、本当に問題なのは環境ではなく、私自身だということになるからだ。
……この結論はよくない。
私たちはロビーに入った。
カウンターの奥に人間はおらず、チェックイン用のロボットが一体立っているだけだった。外見はかろうじて人間に似せてあるが、四肢の可動角にはどこか不自然な硬さがある。胸元の小さなスクリーンに「サービス中」の文字が点滅し、頭部がこちらを向いた瞬間、かすかな機械の摩擦音が鳴った。頭皮が粟立った。
「イラッ……シャイ……マセ……」
電子合成音が、のろのろと響いた。 その声を形容するのは難しい。 無理に言うなら、とうの昔に過労死した接客係が、二十年前の安物の音声モジュールに無理やり詰め込まれ、死後もなお勤務を強いられているような声だった。
真紀はまったく動じず、予約情報をかざした。
私は横に立ち、彼女が端末を手際よく操作し、データを入力し、本人確認をし、部屋のタイプを確認し、デポジットを支払うのを見ていた。その一連の流れは、彼女が普段からよく人を連れてホテルに泊まっているかのように滑らかだった。
そこまで考えた瞬間、私の思考は即座に不健全な方向へ向かいかけた。
幸い、チェックインロボットがタイミングよく声を発し、私を余計な想像から引き戻した。
「オ部屋……ハ……ナナ……階……デ……ゴザイマス……」
ロボットはぎこちなく手を上げ、カードキーを差し出した。
「朝食……ノ……オ時間……ハ……朝……七時……カラ……十時……マデ……デス……ヨイ……夜……オ……オ過ゴシ……クダサイ……」
その「よい夜を」という部分は、機械音が間延びしているせいで、親切どころか、むしろ少し薄気味悪く聞こえた。まるで、私が知りたくない何かを、こいつだけが知っているかのように。
私はそのロボットを二秒ほど見つめ、真紀に小声で言った。
「これ、もう壊れかけてない?」
真紀はカードキーを受け取った。
「少なくとも、カードは出せてる」
「その基準、低すぎない?」
「前線のホテルとしては、実際的よ」
「前線って、人間の幸福の基準をどこまでも下げ続ける場所なのね」
「今日、初めて気づいたの?」
「いいえ、再確認しただけ」
エレベーターはすぐに来た。 乗り込んでドアが閉まると、外の通りの音とロビーの安っぽい香りが一緒に遮断され、エレベーターが上昇するかすかな作動音と、時折ビニール袋がこすれる音だけが残った。
七階は高くない。 でもなぜか、その短い数十秒間が、超光速突入よりも耐え難く感じられた。
鏡面のエレベータードアに映る自分の姿――制服のジャケットはまだ着たまま、髪は夜風と商業施設の冷房に少し乱され、両手にはブランド名の書かれた袋をいくつも提げている。文明社会に引きずり込まれて、強制的な再教育を終えたばかりのように見えた。
隣に立つ真紀も同じように荷物を提げていたが、表情は平静で、呼吸すら過剰なほど安定していた。
「疲れないの?」私はたまらず聞いた。
「そうでもない」
「その『そうでもない』は、何を基準にしてるの?」
「普段と比べて」
「やっぱりね」私はため息をついた。「あなたと比べるのは、不健全な行為だわ」
真紀が横を向いて私を見た。
「今から学び始めても、遅くはないわ」
「まったく慰めに聞こえない」
「もともと慰めじゃないから」
エレベーターがチンと鳴って開いた。
七階の廊下は濃い色のカーペットが敷かれ、照明は明るすぎず暗すぎず、両側にドアが定規で測ったように整然と並んでいた。特徴のない、退屈と言ってもいいような場所だ。だが、それだからこそ安心できる。
サプライズはない。 罠もない。 事態を奇妙な方向へ推し進めるような内装の趣味もない。
少なくとも、表面上は。
真紀は714号室の前で足を止め、カードをかざした。緑のランプが点き、カチャリと鍵が開いた。
私は続いて中に入り、最初に目にしたのは――
これ以上ないほど標準的な、ビジネスツインルームだった。
シングルベッドが二台。一台は窓側、一台は内側にあり、間に小さなナイトテーブルが挟まれている。壁際にはデスクとそれほど大きくないフラットスクリーン。横には電気ケトル、小型冷蔵庫、ホテルのロゴ入りマグカップが二つ。バスルームはユニット式で、ドアは白く、白すぎて、中で何も危険なことは起きませんと言い張っているようだった。
私は心の中で半分だけ息を吐いた。
シングルではない。 よし。 連邦も今日は、私を本気で狂わせるつもりはないらしい。
だが、その半分の安堵は最後まで吐き出せなかった。
なぜなら、シングルベッドでなくても―― やはり同じ部屋なのだ。
同じドア。 同じ静けさ。 同じ今夜。
私はドア口に立ち、袋を提げたまま、妙な感覚に襲われた。
これがただの、普通すぎるくらい普通なホテルの部屋だとわかっている。だが普通すぎるからこそ、環境のせいにできるものが何もなくなってしまう。
責任を肩代わりしてくれる曖昧な照明もない。 誤解のせいにできる高価な内装もない。 「雰囲気のせい」で済ませられる余地もない。
こんな場所で心拍が乱れるなら―― それは、自分自身のせいでしかない。
「内部クリア」
真紀はまずカードキーをスロットに差し込んで部屋の照明を全部点け、袋をデスクの横に置いた。そして最初にしたのは座ることではなく、窓、内鍵、バスルーム、避難経路図の確認だった。
彼女がそれを手際よくやり終えるのを見て、私はつい言った。
「あなた、宿泊に来たの? それとも前進拠点を作りに来たの?」
「まず環境を確認するの」彼女は言った。
「七階のビジネスホテルの部屋で、何が起きるっていうの?」
「見知らぬ場所では、いつもこの判断を先にすべきよ」
「……了解、長官」
真紀が振り返って私を見た。
「私はあなたの長官じゃない」
「今の一連の行動は、すごくそれっぽかったけど」
「習慣」
「夢の中でも、非常口を確認してそうね」
「それで安心できるなら、悪いことじゃない」
もう少し言い返そうとしたが、彼女がベッドの下に異物がないか確認するためにしゃがみ込んでいるのを見て、結局ツッコミを飲み込んだ。
この人は大げさなのではない。 ただ、決して漏れのない作戦前チェックリストのように生きているだけだ。
一方私は、普段は何も問題なさそうに見えて、いざというときに充電器を忘れてきたことに気づくタイプの人間だ。
真紀は確認を終え、ようやく身を起こした。
「窓側と内側、どっちで寝る?」
私は一瞬、答えに詰まった。
「どっちでもいいけど」
「じゃあ、窓側ね」
「なんで?」
「外を見るのが好きでしょ」
私は口を開いたが、すぐには言葉が出てこなかった。 自分でも、はっきりそう考えたことはなかったからだ。 だが彼女はあまりにも自然に言った。まるでそれが、とっくに観察し終えていた小さな結論の一つに過ぎないかのように。
私は仕方なく、乾いた声で返した。
「……よく見てるのね」
「うん」
彼女は罪悪感のかけらもなく認めた。
私は突然思った。こういう人と同じ部屋にいるとき、一番危険なのは距離なんかじゃない。 誤魔化しが長続きしないことだ。
私たちは袋の中身を、デスクの上、ベッドの脇、荷物置きに一つずつ広げていった。百貨店ではまだ合理化できていた買い物の量が、部屋に入れた途端、犯罪現場のような視覚的圧迫感を持ち始めた。
シートマスクの束。 瓶の列。 リップが三本。 それから、今でも何のために買ったのかよくわからないが、真紀が「後で使う」と言ったいくつかの品。
私はその山を見て、数秒黙った。
「私たち、日用品コーナーを半分持ち帰ってきたんじゃない?」
真紀は洗顔料とスキンケア用品を分類してバスルームの洗面台の横に並べていた。私の問いを聞いても、振り返らなかった。
「普段足りてなかったものを補っただけ」
「私、そんなに足りてないように見える?」
「見える」
「……答えるの、早すぎない?」
「事実が明確だから」
どうもありがとう。
私は買ってきたばかりのルームウェアと着替えを袋から取り出し、窓側のベッドの上に置いた。清潔で、柔らかく、新しい布地と百貨店の包装紙が混ざった、うっすらとした匂いがした。その匂いは見知らぬもので、見知らぬぶんだけ少し夢見心地にさせた。
艦の上では、すべてのものに「大勢に使われ、洗われ、干され、消毒された」という集団的な生存の匂いが染みついている。 だが今、目の前にあるこれらは、今夜のためだけに用意されたように清潔だった。
この考えはよくない。 私はすぐにそれを頭から追い払った。危険な方向へ滑り落ちすぎないように。
「先にシャワー浴びるね」
私は衣服を抱え、普段より少し早口で言った。浴室を先に確保した方が、わずかでも心理的な主導権を取り戻せる気がしたからだ。
真紀が顔を上げた。
「行って」
彼女の言い方はごく普通だった。 だが普通すぎるせいで、私はかえって落ち着けなかった。 彼女が「今夜、私たちは同じ部屋に二人きりでいる」という事実を、まったく気にしていないかのようだった。 あるいは、気にしているが、私よりずっと上手に隠しているだけかもしれない。 どちらにしても、腹が立つ。
私は衣服と新しく買った洗顔料、シャンプー、ボディソープを抱えてバスルームに入り、ドアを閉め、鍵をかけ、それから鏡の中の自分を二秒ほど見つめた。
鏡の中の耳の裏が、少し赤かった。
私は無表情のままその顔を見て、もし今ここに教官が一人でも立っていたら、この情けない精神的な耐圧性能に、さぞ失望するだろうと思った。
実弾装填にも耐えた。 超光速突入でも吐かなかった。 それなのに今、普通のビジネスホテルでシャワーを浴びるだけなのに、外に九島真紀が座っているというだけで、初めて家を離れて外泊する子供のようになっている。
本当に情けない。
蛇口を開けると、すぐに熱いお湯が出た。新しいシャンプーからは、かすかな花と果実の香りがした。艦の配給品にある「汚れが落ちれば納税者への義理は果たした」という石鹸の匂いとは、まったく別世界のものだった。洗いながら、この三日間で本当に文明に腐らされるかもしれないと、つい思ってしまった。
洗い終え、半乾きにして、買ったばかりのルームウェアに着替えて出てくると、部屋の空気は入ったときと少し違っていた。
真紀は荷物をほぼ整理し終えていた。 机の上には秩序が生まれ、充電ケーブルはつながれ、通信器は手の届きやすい場所に置かれ、ジャケットは掛けられ、買い物袋まできれいに折りたたまれて隅に積まれていた。彼女はベッドの端に座り、自分の袖口を少し折り返していた。おそらく、次に自分が洗いに行く準備をしていたのだろう。
彼女が顔を上げて私を見た。
その一瞬、彼女はすぐには口を開かなかった。
ただ、見ていた。
ひどく短い時間だった。 外から見れば、誰も気づかないほどに。 だが私には、その半秒の間に空気がわずかに濃くなったように感じられた。
それから彼女は視線を外し、淡々と言った。
「サイズ、ぴったりね」
……終わった。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




