103. 戦争の不条理 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
私と真紀が最終的に入ったのは、ステーキハウスだった。 少なくとも、看板にはそう書いてあった。
「ステーキハウス」という三文字の後ろに、「離艦したての軍校生を専門に食い物にする」という見えない副題が潜んでいるかどうかは、今のところ知る由もない。
なにせ、人間は軍艦に長く乗っていると、時間感覚だけでなく金銭感覚も一緒に蒸発していく。毎日、定量の配給食を食べているか、マンション一棟を買えるほどの値段のミサイルが発射管からせり上がるのを見ているかのどちらかだ。
そうしているうちに、五十クレジットと五千クレジットは、どちらも抽象的な概念のように見えてくる。
私は店の入り口に立ち、いかにも体裁を取り繕った木製の看板を見上げ、それから扉の脇のセットメニューの価格表を見下ろし、最終的に極めて無責任な結論に達した。
「……たぶん、高くないと思う」
「その言い方は、たいてい後悔する前兆よ」真紀が横で静かに言った。
「違うわ。これは高リスク戦場の状況判断をしているのよ」
「そう?」
「ええ。ただ今回、敵の火力は価格ってだけ」
真紀は私を一瞥し、それ以上何も言わずにドアを押して中に入った。
私はついていくしかなかった。
店内は外から見るよりずっとまともだった。
床は綺麗に磨かれ、空気にはバター、肉汁、黒胡椒、焼きたてのパンの香りが混じっている。壁には色褪せた古い写真が何枚か掛かっていた。連邦の制服を着た人物もいれば、帝国の旧式軍装を着た人物もいる。どちらの陣営かまったく判別できない写真すらあった――この場所はとうの昔に、旗がどちらを向いていようと慣れきっていて、テーブルと椅子が吹き飛ばされない限り、商売は続けなければならないのだろう。
私たちは壁際の席に座った。
私はメニューをめくりながら、心の中で真剣な戦術的考量を行った。
このステーキは美味しそうだ。 この価格は、美味しそうすぎて少し怪しい。 このセットにはスープとパンと飲み物までついている。デザートに毒でも仕込む気ではないかと店主に問い詰めたくなるほど怪しい。
最終的に、私は最も無難なサーロインセットを選んだ。真紀は私よりもさらにあっさりと注文した。彼女にとってそれは注文ではなく、補給申請にサインしているような顔だった。
店員が水と麦茶を持ってきたとき、私は壁に掛かった木の札に気づいた。
そこには、標準連邦語と帝国語で、それぞれ一行が書かれていた。
「当店は連邦クレジット、帝国マルク、および汎用電子決済に対応しております」
私はその札を二秒ほど見つめ、それからカウンターの奥でグラスを拭いている店主の方を向いた。
「帝国マルクも受け取るんですか?」
店主は目を上げた。魚が泳げると今知った都会人でも見るような顔だった。
「当然だよ」彼はグラスを拭きながら言った。「誰が来ようと、日々の暮らしは続けなきゃならないんだから」
その言葉を口にしたときの語気は、ひどく平凡だった。今日の天気の話か、明日のスープが少し塩辛いかもしれないという話をしているかのようだ。だが、その平凡さこそが、この場所の本当の底色を示しているように思えた。
店主は窓の外へ顎をしゃくった。
「ここは帝国のホーエンツォレルン要塞から近いからね。何の前触れもなく帝国に占領されることなんて珍しくもない。数週間か、数ヶ月すれば、今度は連邦が取り返す。しばらくすれば、また逆になるかもしれない。それを繰り返してるのさ」
私はグラスを手にしたまま、急にそれを飲むべきかどうかわからなくなった。
ある場所の人生は、学歴、給料、結婚で並べられていく。 ある場所の人生は、今日どちらの国旗が掲げられているかで並べられていく。
そして目の前のこのステーキハウスは、明らかに後者に属していた。
店主は私たちの制服のジャケットを一瞥し、古参の仕入れ業者のような目で、二秒で見抜いた。
「軍校生かい?」
「そうです」私は答えた。
「どの船だ?」
「雪風です」
店主はそれを聞くと、笑った。
礼儀上の笑いでも、客が来たときの営業笑顔でもない。「あんたら、あの船の人間か」という笑いだった。
「運がいいな、あんたたち」
「どうしてですか?」
「どうしてって?」店主はグラスを置き、笑みを深くした。「あれは幸運の雪風じゃないか」
私は眉を跳ね上げた。 物語が始まる気配がした。
辺境の伝説というものは、たいてい半分が事実で、半分が酒で、残りの半分は死者が多すぎるせいで、生き残った人間が何か理由を必要としていることから生まれる。
「連邦艦隊と一緒にホーエンツォレルン要塞を十一回攻めて、無傷で帰ってきたのが十回だ」
私は思わず真紀を見た。
彼女はほとんど反応を示さず、ただ静かにグラスを持ち上げて水を一口飲んだ。すでに目を通している報告書に、それでも署名しなければならないときのような顔だった。
そして口を開いた。
「残りの一回は?」
店主は、誰かがその問いを発するのをずっと待っていたかのように、「ここからが一番面白いところだ」という顔つきになった。
「残りの一回は、出港前に大修理があって、主力に追いつけなかったんだ」
「大修理?」
「そう」店主は真面目な顔で頷いた。「トイレが壊れたとかでね」
私は危うく麦茶を噴き出しそうになった。
本当に、あと少しだった。
二度ほど咳をして、なんとかグラスを置き、その場で取り乱すのを堪えた。
真紀が私を一瞥した。その目の奥に、ごくわずかだが確かに存在する笑意が光った。
私は口元を拭きながら、その事実を必死に消化しようとした。
連邦の艦隊が前線で粉砕された。 そして雪風は、トイレの故障で大修理が必要になったせいで、その難を逃れた。
……なるほど。運というのは、時として本当に軍事的実力の一種なのだ。 しかも、最も理不尽な種類の。
「この辺りも最近は物騒でね」
店主は、三代先まで語り継げそうな笑い話を一つ終えると、現実はそれほど面白くないと思い出したかのように、カウンターの上の古いラジオを軽く叩いた。
「これが最近、よく電波を拾わなくなる。こうなると、そろそろ帝国軍が現れる合図みたいなもんだ」
私は視線をそちらに向けた。
そのラジオはひどく年季の入った代物で、アンテナは片側に傾き、スピーカーの縁には塗装の剥げも見えた。だがこういう場所では、こういう物こそが早期警戒装置として機能する。長く生き延び、占領と奪還を何度も見てきた証だからだ。
そのとき、料理が運ばれてきた。
鉄板がジュウジュウと音を立て、肉の表面からはまだ湯気が立ち上っていた。黒胡椒ソースの香りが、先ほどまでの辺境の不吉な空気を半分ほど押し流した。真紀はナイフとフォークを手に取り、精密部品を分解するかのように手際よく肉を切り始めた。
「信号干渉ね」彼女は肉を切りながら、低い声で言った。
「帝国の仕業ってこと?」
「とは限らない」彼女は切り分けた一切れを口に入れ、咀嚼し、飲み込んでから続けた。「でも、こういう地帯で受信できなくなるのは、たいてい偶然じゃない。特に、古い設備の方が新しい設備より先に異常を示すときは」
私は彼女を二秒ほど見つめた。
「食べながら戦区の状況を分析してるあなたの顔、本当に十五歳には見えないわね」
「あなたもね」
「ありがとう、褒め言葉として受け取っておくわ」
「そういう意味じゃないわ」
「ひどい」
彼女は無視した。
店主は私たちが食べ始めたのを見て、空気を読んで側で昔語りを続けるのはやめ、別のテーブルの客の相手に向かった。店の反対側には、仕事を終えたばかりの作業員が数人、商船の乗員らしき男女が一組、隅には私服姿だが一目で退役軍人だとわかる二人組が座っていた。
連邦語、地方の訛り、帝国語がときどき混じり合い、この小さな店の中で辺境専用の雑多なスープのように煮詰まっていた。
私はステーキを一切れ切って口に入れ、味が思いのほか良いことに気づいた。
天にも昇るような美味さではないが、しっかりしていた。 生きるためだけに食べているのではなく、食べること自体が、ごく普通で、心地よい行為なのだと、ふと思い出させてくれるような味だった。
この感覚は少し危険だ。 人は心地よくなると、緩む。 緩むと、あまり考えるべきでないことが頭に入り込んでくる。
たとえば―― 今夜、どこに泊まるか。
二切れ目の肉にナイフを入れたとき、腕の通信器が光った。
ジェスからのメッセージだった。
開いて、一目見て、表情がすぐに歪んだ。
内容は簡潔で、意図もはっきりしていた――
無料宿舎の畳はカビが生えていて、浴室は三流ホラー映画のオープニングそのものだ。もし泊まる気があるなら、明日の朝には鏡の中に二人目の自分を見る羽目になるだろう、というものだった。
私は黙ってメッセージを閉じ、連邦が提供する「無料宿泊」に対する、最後の非現実的な期待を捨てた。
そのとき真紀がナイフとフォークを置き、顔を上げて私を見た。
「シモ」
「何?」
彼女は一拍置いた。
その一拍は理不尽なほど短かったが、私の警戒レベルを自動的に引き上げるには十分だった。真紀という人間が話の途中で言葉を切るとき、それはたいてい言葉を忘れたからではない。次に続くものが、私の心拍に何らかの悪影響を及ぼす可能性が高いことを意味していた。
「今夜……」
私はほとんど反射的に口を開いた。
「先に言っておくけど、あの宿舎には泊まりたくないから」
真紀は、私がこんなに早く話を引き取ったことに、さほど驚いていないようだった。
私は通信器を指差した。
「さっきジェスからメッセージが来たの。畳がカビてて、浴室が三流ホラー映画のロケ地みたいだって。あんな場所は、出るか、出ないよりもっと怖い何かがいるかのどちらかよ」
真紀は頷いた。
「じゃあ……私が手配する?」
彼女はひどく平坦に言った。
あまりにも平坦だった。 平坦すぎて、その一言の殺傷力に、私は危うく気づき損ねるところだった。
私は顔を上げて彼女を見た。
「いいわよ」
想像していたよりずっと早く答えていた。
早すぎて、自分で自分を引き戻して再審問したくなるくらいだった。
真紀は特に表情を変えず、手続きがスムーズに承認されたことを確認するかのように、軽く「うん」と言った。
それから、もう一言を付け足した。
「食べ終わったら、百貨店に行く」
私は一瞬、意味がわからなかった。
「何か足りない物があるの?」
「私じゃない」
真紀は私を見た。
その視線は重くも鋭くもない。だが、なぜか頭のてっぺんから足の先まで、靴下に穴が開いていないかどうかまでスキャンされて登録し終えたような錯覚を起こさせる目だった。
彼女はゆっくりと後半を言い終えた。
「あなたよ」
「え?」
私は普段、こんな中身のない単音節を発することは滅多にない。
だがあの瞬間、確かにそれしか出てこなかった。
真紀の視線がわずかに下がり、私の袖口、襟元を掠め、最後にまた私の顔へと戻った。
「日用品、着替えの下着、それからいくつかの生活用品。全部補充した方がいいわ」
私は彼女を見つめた。 彼女も私を見つめ返した。
店内の照明は何もおかしくないはずなのに、なぜか耳の裏が熱くなり始めていた。
「……何が足りないか、なんでわかるの?」
「観察したから」
「その観察、少し細かすぎない?」
「そうでもない」
「どこがそうでもないの?」
「少なくとも、店中の人に聞こえる声で言ったりしていないから」
「今のあなたも、別に気遣いがあるとは言えないわ」
真紀はもう一切れステーキを切り、ひどく平坦な、ほとんど残酷と言っていい語気で続けた。
「自分で買いたいなら、構わないけれど」
その言葉は、選択肢を与えているように聞こえた。 だが私にはわかっていた。この種の選択肢は、飛田艦長の「通信器を活用してください」という言葉と大差ない。表面上は提案だが、実質はすでに正解が決まっている。
私は皿の上の、少し無残な切り方をされた肉を見下ろし、妙な感覚に捕らわれた。
恥ずかしさではない。 単純な気まずさでもない。 どちらかといえば――艦橋を離れ、訓練を離れ、すべての制度的な口令から離れたこの場所で、誰かが当たり前のように、私を自分のこれからの予定の中に組み込んでいるということへの、ある種の戸惑いだ。
ついでではない。 社交辞令でもない。 明確に、組み込まれている。
こういうことは、どんなに優しい言葉よりも、ずっと対処しにくい。
私はフォークを肉に刺し、食べ物で自分のその情けない沈黙を誤魔化そうとした。
「……じゃあ、行くわ」
真紀は私を見た。最初からそう答えるとわかっていたような顔だった。
「うん」
私はもう一言付け足し、わずかな主導権を取り戻そうとした。
「ただし最初に言っておくけど、変なものを選ぼうとしたら、すぐ逃げるから」
「知ってる」
「知ってて、そんなに平然としてるの?」
「逃げられないから」
彼女はその言葉を、ひどく軽い声で言った。 冗談のように軽い。 だがなぜか、私はその言葉の中に、何か別のものを聞き取ってしまった。
命令ではない。 からかいでもない。 どちらかといえば、すでに判決の下りた事実のような、そういう響きだ。
私は二秒間黙り、最終的に麦茶を一口飲んだ。
冷たかった。 残念ながら、耳の熱さには勝てなかった。
店の外の港区では、灯りが一層また一層と点り始めていた。街の人の声、車の音、遠くの輸送軌道の震動が混ざり合い、前線の街全体がようやく夜になって一息ついているようだった。
そして私はここに座って、向かいに真紀がいて、テーブルの上にはステーキと麦茶があり、手元にはまだ返信していないジェスのメッセージがあり、頭の中にはひどく情けないことしか残っていなかった。
このあと、百貨店に行く。 しかも、真紀に連れていってもらう。
……連邦が最終的に帝国に負けるとしたら、それはこういう、わけのわからない状況に足元をすくわれるせいかもしれない。 少なくとも今の私は、なかなか情けない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




