62. 三日目 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
長期休暇が三日目に入った頃、鉑橋街二十二番地はついに、ある種の芳しくない空気を醸し出し始めた。
家庭の空気ではない。
誰かが隠れてカップ麺を煮込み、誰かが課題に追われ、誰かが浴室で音痴な歌を歌っているような、普通の学生寮の空気でもない。
もっと別の――表面上は人類の文明的な生活を維持しているように見せかけながら、その内実はすでに前線の臨時指揮所に向かって制御不能な進化を始めている、そんな空気だ。
証拠はいくらでもあった。
たとえば、一階の広いリビングにある、本来なら豪華なディナーを並べるべき無垢材の長テーブル。今はその半分が朝食のパン屑で、もう半分が艦隊編成の略図で埋まっている。冷蔵庫の扉には入浴ローテーション表と冷蔵エリア停戦協定が貼られ、裏庭の物干しロープは七人の女子によって不可侵の領域として正式に占拠されている。そして、地下室――
地下室はまだ封印されていた。
だが、その封印が長くは持たないことを私は知っていた。
昨晩からハーヴィーが地下室に向ける視線は、人が初めて真実の愛に出会ったときのそれに近かったからだ。違いがあるとすれば、真実の愛には通常、三相交流電源も防音壁も必要ないということくらいだ。
そして、こうした乱れの兆候のすべての中で、アイダ・ローゼンがついに彼女らしい行動を起こすことを決めた。
彼女は、この家全体を初めてまともな形で、「私たちは遊んでいるわけではない」というメインシナリオに引き戻したのだ。
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雪風号に向けた予行演習。
その日の午後、アイダはグループチャットに一言だけメッセージを送った。
『アイダ:十九時、一階リビング、全員。端末を持参すること。遅刻厳禁。』
絵文字はない。
補足もない。
余計な説明も一切ない。
その口調は、軍校生を下に呼んでミーティングを開くというより、どこかの小規模艦隊に「十九時マルマルに交戦前ブリーフィングを開始する」と通達しているかのように冷徹だった。
私はその文字列を二秒間見つめ、そしてひどく正直にひとつの事実を認めた。
同じ「集まれ」でも。
真紀がこういうメッセージを送ってきたときは、「ああ、また捕まって補習させられる」という不吉な予感がする。
アイダがこういうメッセージを送ってきたときは、直感的にこう悟るのだ。
――ああ、厄介事のレベルが一つ上がったな、と。
十九時三分前。私が下に降りたとき、一階の広いリビングはすでにそれらしく片付けられていた。
あの巨大なダイニングテーブルは、必要なものだけを残してすっきりと空になっていた。卓の中央には連邦制式の星域図が広げられ、透明な投影パネルが何枚か立ち上がり、テーブルの隅には温かい飲み物とファイル、それに携帯用の戦術端末が置かれている。照明は意図的に一段階落とされ、中央の戦術ホログラムを浮かび上がらせていた。リビングは一瞬にして、「さっきまで誰かがここで弁当を食べていた場所」から、「これから十一人の死に方のうちどれが一番マシかを決める場所」へと進化を遂げていた。
アイダはテーブルの長に立っていた。
今日は上着を着ておらず、シャツの袖を肘まで捲り上げ、髪をきっちりと束ねている。清潔で、隙がなく、そして危険だった。他人の額に銃口を突きつけるような危険さではない。ひどく落ち着いた声で、たった三つの言葉を口にするだけで、この部屋にいるめちゃくちゃな連中を秩序の中に引きずり込める、そういう種類の危険さだ。
正直なところ、彼女は政治家に向いているとますます思う。
なぜなら、彼女はすでに二つの核心的な条件を備えているからだ。
第一に、実際よりも常に無害に見えること。
第二に、他人に喜んで自分の言う通りに動かせ、すべてが終わってから、自分たちが彼女の計画に組み込まれていたことに気づかせること。
「座って」彼女は言った。
その一言だけだった。
ジェスは歩きながら軽口でも叩こうとしていたようだが、その一言にすっかり圧され、大人しく椅子を引いて座った。私がその隣に腰を下ろすと、真紀はすでにもう片側に自然な動作で座っており、端末を置き、ノートを開いていた。その姿勢は、三時間前からこの会議のためにウォーミングアップをしていたかのように完璧だった。
全員が揃うと、アイダは時間を無駄にしなかった。
手を一度上げると、テーブル中央の投影が起動した。
オリオン座アルファ星区の立体地形図が音もなく展開され、いくつかの補給線と予定航路が空中で交差した。淡いブルーの線が幾重にも重なり、表面上はきれいに見えるが、どの線も辿れば何らかの厄介事に繋がっているような蜘蛛の巣が浮かび上がった。
私はその投影を見ながら、最初に浮かんだのは壮大さではなかった。
馴染みのある感覚だった。
見れば見るほど、それが学生に鑑賞させるためのものではないと分かるからだ。
それは、そこに放り込まれる人間が使うものだ。
「今日は試験の形式も、理想論も話さない」とアイダは言った。「今日話すのは一つだけ――もし私たちが、あの名簿の通りに、雪風号の前置き校外実習編組としてオリオン座アルファの任務ラインに入るとしたら、今の私たちに何が足りないか」
その一言が落ちた瞬間、テーブル全体の空気が変わった。
昨日は浴室の取り合いをして、冷蔵庫を分割して、ハーヴィーが深夜にベーコンを盗み食いしたことで笑っていた。
今日、同じ面々が同じテーブルの前に座り、目の前に浮かんでいるのは補給航路、エリアノード、護送ウィンドウ、そして不完全な前線図だった。
日常が消えたわけではない。
ただ、一時的に下へ押し込まれただけだ。
テーブルの下の無垢材の層のように――まだそこにあることは分かっているが、今は上に別のものが置かれている。
「まず役割の定義から始める」とアイダは言った。「今日は正式な編成ではないが、問題点を先に見ておく必要がある」
彼女が手を上げると、投影に名簿が表示された。
上級生三名。
下級生八名。
計十一名。
シンプルすぎて、残酷なほどだ。
アッシュ・ヴァンダーが最初に口を開いた。
「雪風号が護送艦なら、名目が補給であれ校外実習であれ、核心的な問題は『何を学ぶか』ではなく、『艦務にどの程度まで介入を求められるか』だ」
私は彼を見た。
この男は普段、陽光の下でゆったりと新聞でも読んでいそうな模範的な士官候補生に見える。だが、こういう会議のテーブルに着いた瞬間、声が落ち着く。「口を開けば、誰もが聞く」という感覚を生まれつき持っているかのように。
本当に腹立たしい。
こういう人間は、本当に厄介な大人に育つ。
「そうだ」とアイダが頷く。「だから最悪のケースを想定する。下級生が純粋な見学ではなく、一部の非中核任務に補充されるとした場合――星野」
私は顔を上げた。
「雪風号に対して今、一番不安に感じていることは何だ?」
……この指名の仕方も、本当に腹立たしい。
私が「できるかどうか」を聞いているのではない。
「どこができないかを、まず自分の口で認めさせる」ための問いだ。
私は二秒黙ってから、答えた。
「リズムだ」
「具体的に」
「実習として乗艦するだけなら、高級版の見学として処理できる」私はテーブルの上の航路図を見ながら、言葉をゆっくり整理した。「だが一旦、本当に護送任務ラインに入ったら、一点だけを見ていれば済む話ではなくなる。補給、艦橋命令、通信リズム、艦内の人の流れ、装備の維持、突発事態への対応、すべてが繋がってくる。一番厄介なのは――私は今、少しだけ分かってきた。だから、自分がどれだけ足りていないかも、より正確に見えるようになった」
テーブルがしばらく静まった。
ジェスが最初に笑った。
嘲笑ではない。「ようやく自分で言ったか」という類の笑いだ。
「よかった、シモがついに自分で怖いって認めた」
「怖いとは言ってない」私は彼女を睨んだ。
「言ってないけど、今の話、『自分がどこで死ぬか分かってる』みたいに聞こえたよ」
「それをリスク評価と言う」
「へえ、言い方まで格上げされた」
アイダは私たちの口喧嘩を無視して、私の言葉をそのまま続けた。
「よし。リズムの問題は成立する。では、誰が補う?」
その一言で、テーブル全体が何かのスイッチを押されたように動き出した。
Dが最初に言った。「現場の秩序と臨機応変な実行なら、私が補える」
ハーヴィーがすぐ続けた。「設備と非標準状況は、ある程度対応できる」
エヴリンは眼鏡を直し、すでにシステム要件書でも書いているような正確な口調で言った。
「艦上でセンサーデータや通信フローへのアクセスが許可されるなら、予測補助ができる。ただし、誰かが素人判断でシステムに繋ぎ込まないことが前提だ」
ハーヴィーが振り返った。
「それ、俺への当てつけか?」
「名指しはしていない」とエヴリン。
「ほぼ俺の名前を声に出しかけてたじゃないか」
ロイが横から一刀を入れた。
「それが彼女なりの自制心だ」
蘭は全員の発言を共有ボードに書き込みながら、結論を補足した。
「つまり今の私たちの問題は、機能がないことではなく、それらの機能を動かせる順番に並べていないことだ」
「もう一つ問題がある」アカリが突然口を開いた。
全員が彼女を見た。
姿勢はまだ怠惰で、目はまだ死んでいたが、彼女が本当に口を開くとき、それはたいてい無駄口ではない。
「私たちは、お互いが寮でどう喧嘩するかは熟知した。でも、艦上でどう黙るかはまだ知らない」
テーブルが短く沈黙した。
それから私は思わず笑ってしまった。
「それ、なかなか刺さる」
「でも正確だ」とアイダ。
そして彼女は手を上げ、投影を切り替えた。
シンプルな艦内突発フロー図が表示された。
想定状況その一:護送中、通信が短時間途絶した場合。
「では」とアイダは言った。「今からシミュレーションを始める。模範解答を出す必要はない。最初に誰が何をするかを見る」
そして、地獄が始まった。
「まず自艦の設備に問題がないか確認する」とハーヴィー。
「触るな」エヴリンが即座に反論した。「先に信号のパターンを見て、内部故障か外部干渉かを切り分ける」
「内部か外部かも確認しないで待ってたら、そのまま持っていかれるぞ」
「下手に触ったら、本来読めたはずの障害情報を上書きする可能性がある」
「でも触らなければ黄金時間を無駄にする」
「でたらめに触れば艦隊全体の時間を無駄にする」
「ほらね」ジェスが私の隣で小声で言った。「この二人、本格的に始まる前から、もう精神的に交戦してる」
「見えてる」私は言った。
反対側では、Dとアッシュがすでにデッキと艦橋の反応時間について話し合い始め、ロイが補給ノードを計算し、蘭が全員の発言を人間が読める一本の流れに整理しようとしていた。アカリが不意に「命令は半拍遅れると仮定しろ」と一言放ち、テーブル全体の楽観性が瞬時に二段階下がった。
私はそこに座りながら、ふとひとつのことをはっきりと感じた。
この連中は普段どれだけ騒いでいても、問題が「雪風号の上でどうやって死なずに済むか」に切り替わった瞬間、それぞれの頭の中にある何かが自然に浮かび上がってくる。
これはもう学生ではない。
少なくとも、学生だけではない。
まだ完全には出来上がっていないが、すでにそれぞれの機能を持ち始めている人間たちだ。
そして、アイダがやっていることは、その機能を一つひとつテーブルの上に引きずり出し、私たちに直視させることだ。
会議は二時間近く続いた。
後半になると、もう誰も冷蔵庫や浴室のことを笑っていなかった。
全員が気づかないうちに「本当にあの艦に乗るとしたら」という方向で考え始めていた。
最後にアイダが投影を閉じ、リビングの照明が通常の明るさに戻ったとき、私は一瞬、目が慣れなかった。
別の層の空気から戻ってきたような感覚だった。
「結論」とアイダは言った。「今の私たちが雪風号に乗れないわけではない」
彼女は一拍置いた。
「だが、気軽に乗れる資格には、まだ遠く及ばない」
誰も反論しなかった。
それが十分に控えめな評価であることを、全員が知っていたからだ。
ジェスが最初に背もたれに寄りかかり、長く息を吐いた。
「分かった、昨日の『とりあえず住んでみてから』は撤回する。今になって思えば、先に住んでおいてよかった。学校の寮だったら、こんな効率で喧嘩できなかった」
「これを効率と呼ぶのか」私は言った。
「第144班の基準では、そうだ」と彼女は両手を広げた。
「悲しいが、同意する」とロイ。
アイダは最後に私を見た。
「明日から、地下室を起動する」
ハーヴィーの目が、その場でぱっと輝いた。
私はその表情を見た瞬間、心の中でひとつだけ思った。
終わった。
この瞬間から、二十二番地の地下室は最後に残っていた無垢さを正式に失う。
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