01. 最劣なる人生の幕開け-1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
最悪だ。
ああ、先に言っておくけど、別にあんたのことじゃない。
私の人生の話だ。
学校の成績は砲火で耕されたみたいにボロボロなくせに、ゲームだけはやたら強い。だから中学に入った頃から「問題児」のレッテルを貼られ続け、卒業まで一度も剥がせなかった。先生たちは私を見るたびに、何か教育的失敗の実験体でも眺めるような目をした。同級生は私を「近づくと危ないけどゲームの代打は頼める便利な危険物」として扱った。
じゃあ親は?
忙しい。
いつだって忙しい。
帰るたびに出迎えてくれるのは、静まり返った空っぽの家と、冷たいダイニングテーブルと、冷蔵庫に入った「食べると孤独を咀嚼してる気分になる」レンジ飯だけ。正直、長いこと経つうちに、家のお掃除ロボットの方がよっぽど家族らしいとさえ思えてきた。少なくともあいつは、決まった時間に私の足元にぶつかってきて、誰か——いや、何かが——私の存在を覚えていることを教えてくれる。
十三歳の年、私の人生は転機を迎えた。
いや。
別にいい方向に転がったわけじゃない。
後から思い返しても、「神様、他にやることなかったんですか?」って問い詰めたくなるタイプの、あまりにもクソな転機だ。
その日、私たち家族は、たまたま全員で出かけていた。
で、道中で事故に遭った。
笑えるだろ?
この時代、交通はとっくにAI任せで完全管理、まともな大事故なんて「数百年ぶりです!」ってニュースになるレベルだっていうのに。にもかかわらず、よりによって私が、そのレアカードを引き当てた。
この当たり運、宝くじのほうに振ってほしかった。そしたら私は、病院の白い照明の下で、「残念だけど現実を受け入れなさいね」顔をした大人たちに囲まれる代わりに、笑いながら成金になれてたはずだ。
で、私はこうなった。
十三歳にして、マイホーム?マイカー?
——違う。
十三歳にして、借金持ち。
いきなり天文学的な額を背負わされた。
理屈の上では、相続放棄っていう逃げ道もあった。でもそれを選ぶってことは、元々の家にも二度と住めないってことだ。
綺麗に言えば、人生のリセット。はっきり言えば、ホームレス。
それで、陸橋の下とか、排水溝の配管脇とか、冬でも地熱が漏れてて凍死せずに済むメンテナンストンネルとか、ああいう場所が私の「自宅」になった。
ロマンチックだろ。
他人の十三歳は、定期テストと初恋で頭を抱えている。私の十三歳は、「どの廃熱パイプのそばで寝ると、夜中にネズミに足の指をかじられにくいか」を研究する日々だった。
十四になった年、私は連邦が誇る「更生施設」に入った。
言い換えると、刑務所だ。
そして私は、見事に「全施設最年少犯罪者」の称号をゲット。この世界記録は、完璧にクソの部類に入る。賞品があるとしたら、看守どもが私を見るとき、珍しい動物を見る目に、ほんの少しだけ嫌悪を混ぜてくれるぐらいだ。
で、犯行動機は?
もっと笑えるよ。
カビの生えたパン一個のために、私は人を殺した。
今になって振り返ると、三流ワイドショーが飛びつきそうな、くだらない事件にしか聞こえない。でも当時の私は、「終身刑」って言葉に現実味なんてこれっぽっちもなかった。
ただ一つだけ分かってたのは——そこなら、寝床がある。飯が三回出る。運がよければ、ゲームもできる。
それだけで、外の世界よりよっぽど優しいと思えた。
あの徴兵官が、あの刑務所に現れるまでは。
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