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離婚できないなんて…  作者: マーたん


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ラスト章

ラスト

ラスト章:春風の向こう側


✔ 黒瀬と百子、未来への決断

✔ ひより、最後に見る夢

✔ クロガミの真実の一端

✔ 忘れられても消えなかった想い

✔ そして、それぞれの新しい人生


⸻


 春。


⸻


 桜が咲いていた。


⸻


 青嶺学園 。


⸻


「先生、また寝不足ですか?」


⸻


 笑う生徒たち。


⸻


「うるさい」


⸻


 少し困ったように笑う


黒瀬 恒一 。


⸻


 その隣には、


杉田 百子 。


⸻


「今日はちゃんと朝ご飯食べました?」


⸻


「食べた」


⸻


「嘘ですね」


⸻


「バレたか」


⸻


 そんな穏やかな毎日。


⸻


 百子は知っていた。


⸻


 黒瀬の心の奥に、


 まだ誰かの面影が残っていることを。


⸻


 それでも。


⸻


「先生」


⸻


「ん?」


⸻


「ゆっくりでいいですよ」


⸻


 百子は笑う。


⸻


「私は待てますから」


⸻


*


 その夜。


⸻


 遠い街。


⸻


 橘 ひより は夢を見ていた。


⸻


 夕焼け。


⸻


 教室。


⸻


 優しい声。


⸻


「旦那様!」


⸻


 振り向く男。


⸻


 しかし。


⸻


 顔だけが見えない。


⸻


「待って!」


⸻


 伸ばした手。


⸻


 届かない。


⸻


 目が覚める。


⸻


 涙だけが流れていた。


⸻


「……なんで」


⸻


 理由は分からない。


⸻


 でも。


⸻


 誰かを愛していた。


⸻


 そんな気がした。


⸻


*


 誰もいない路地裏。


⸻


 黒い影。


⸻


 赤い瞳。


⸻


 クロガミ が空を見上げる。


⸻


「また春か」


⸻


「人間は、ほんまよう泣く」


⸻


「忘れたい言うて」


⸻


「忘れられへん言うて」


⸻


 小さく笑う。


⸻


「せやけどな」


⸻


「それでええんや」


⸻


「全部忘れてしもたら」


⸻


「人間やなくなってまう」


⸻


 その姿は、


 どこか寂しそうだった。


⸻


「ワシかて……」


⸻


 その先は、


 誰にも聞こえなかった。


⸻


*


 数日後。


⸻


 校庭。


⸻


 桜吹雪。


⸻


「杉田先生」


⸻


「はい?」


⸻


 黒瀬が珍しく真面目な顔をしていた。


⸻


「これからも」


⸻


「一緒にいてくれるか?」


⸻


 百子が目を丸くする。


⸻


「それ、プロポーズですか?」


⸻


「……たぶん」


⸻


 百子は吹き出した。


⸻


「たぶんじゃ困ります」


⸻


「じゃあ改めて」


⸻


 黒瀬は少し照れながら言う。


⸻


「杉田百子」


⸻


「俺と一緒に、笑ってくれ」


⸻


 百子の目から涙がこぼれる。


⸻


「はい」


⸻


「喜んで」


⸻


*


 遠い街。


⸻


 ひよりは空を見上げていた。


⸻


 春風。


⸻


 なぜか。


⸻


 胸が少し温かい。


⸻


「幸せになってね」


⸻


 誰に向けた言葉か、


 自分でも分からない。


⸻


 でも。


⸻


 それでよかった。


⸻


*


 夕暮れ。


⸻


 クロガミが闇へ消えていく。


⸻


「ほな」


⸻


「また会う日までや」


⸻


「次は誰の願いやろな」


⸻


 赤い瞳が消える。


⸻


 そして。


⸻


 春風だけが、


 優しく吹いていた。


⸻


『教師・杉田百子物語』


完結


⸻


忘れても、愛した心だけは消えなかった。

またお会いしましょう

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