第二章:彼女の笑顔に、嘘はなかったか
第二章を読んでいただきありがとうございます。
今回は、蓮の前に再び現れた元カノ・椎名みくとの再会が中心になります。
過去に終わったはずの関係が、なぜ今になって動き出すのか。
そして、今の彼女・さくらとの関係にどんな影響を与えていくのか。
この章から少しずつ、三人の想いがすれ違い始めます。
静かな再会が、やがて大きな波になる――
そんな始まりの回です。
それでは第二章、本編をお楽しみください。
第二章:彼女の笑顔に、嘘はなかったか
その夜、椎名みくからのメッセージを見つめたまま、俺は動けなかった。
《まだ終わってないよ、蓮》
その短い一文が、まるで鎖のように過去へ引き戻してくる。
スマホの通知音が再び鳴った。
《明日、少しだけ話せる?カフェ・アルクで、午後三時。話さないと、前に進めないでしょ》
なぜ今なんだ。
なぜ、三年も経った今になって――。
「蓮? まだ起きてたの?」
台所からさくらの声が聞こえた。パジャマ姿でコップを持った彼女が、リビングへ顔をのぞかせる。
俺は慌ててスマホを伏せた。
「ああ、ちょっと、レポートの締め切りが近くて」
それは嘘だった。彼女に見抜かれていないか、内心ビクビクしていた。
だが、さくらは微笑んだだけだった。
「頑張って。明日の朝、ちゃんと起きられるようにアラームかけてね」
その笑顔が、胸に刺さった。
今、俺は彼女に――嘘をついた。
***
翌日、午後三時。
俺はカフェ・アルクのドアを開けた。
そこには、三年前と同じ横顔の椎名みくがいた。コーヒーに口をつけながら、俺が来るのを当然のように待っていた。
「……来てくれて、ありがと」
その声は静かで、どこか懐かしい響きを持っていた。けれど俺は、席につくまでに深呼吸を二回した。
「本題から話せよ。俺は、今の彼女とちゃんと付き合ってる。お前に会いに来たのは――」
「まだ何も言ってないじゃん」
椎名はふっと笑った。だけどその目には、妙な熱があった。
「“会いに来た”って時点で、まだ私に何か残ってるってことじゃないの?」
「そんなことない」
そう言い切ったはずの言葉が、自分でも薄っぺらく聞こえた。
「私ね、三年前、ちゃんと謝れなかった。あなたを傷つけた理由も、本当のことも言わなかった」
「……今さら、謝られても」
「違うの。謝るだけじゃない。――私、やり直したいの」
俺は言葉を失った。
「今さら何言って――」
「あなたの今の彼女、春日さくらちゃん。文学部の図書委員でしょ。優しくて、真面目で、料理が上手くて……でも、本当にあなたのこと、全部知ってるの?」
何かが背筋を這い上がる。
「彼女は、あなたの“過去”を知らない。だけど私は、全部知ってる。あの時、あなたが壊れかけてたことも。私が、何をしたかも」
椎名は静かに、それでいて確信に満ちた目で俺を見た。
「――彼女にはできないこと、私はできる。そう思ってる」
俺は椅子の背もたれにのけぞった。
これはもう、“再会”じゃない。
宣戦布告だった。
第二章を読んでくださり、ありがとうございます。
ついに元カノ・椎名みくが本格的に動き出しました。
蓮にとっては終わったはずの恋ですが、みくにとってはまだ終わっていないのかもしれません。
そしてこの章では、蓮が少しずつ「嘘」を重ねていく流れになっています。
誰かを守るための嘘なのか、それとも自分のための嘘なのか――
これからの物語で、その意味が変わっていきます。
次の章では、さくら側の視点や、さらに深い過去の話も出てきます。
三人の関係がどう壊れていくのか、見守っていただけると嬉しいです。
感想・評価などいただけると、とても励みになります。
今後ともよろしくお願いします。




