出会い
目覚めたシルヴァ。目の前には謎の青年が現れた!
(誰かの声が聞こえる…。誰だろう?そういえば今日の薪割り終わってなかったな。早くやらないと……。って、違う!俺はフェイアスのそっくりさんに会って、なんかヤバそうな力を貰って…。それから、異世界を救うってなって、飛ばされて…!俺は…俺は…!!)
拳をギュッと握りしめ、身体全身に行き渡るように力を込め、勢いよく。
「俺はどうなったんだ!?」
「痛っ!!」
体を一気に起き上がらせると、ガンッ!!と何かが強く額にぶつかり衝撃が走る。両手を額に当てると、そこへじんわりと痛みが迫り、思わず涙目になる。それは相手も同じようで、ぶつかったものへ目を向けると、そこにいた人物はシルヴァと同じ行動を取っていた。
「起きてそうそう飛び起きるなんて、元気ありすぎだろお前!」
茶色の髪に赤のグラデーションの入った赤色のマントを羽織った青年が、こちらに向かって声を上げる。相当痛かったようで、少し涙声になっているようだった。
「ええ!?俺が悪いのか!?……それはごめんな!痛かったよな!良かったら、家でお茶でも…。」
そう言いながらシルヴァは周囲を見渡した。そこには見慣れた森も小屋もない。それどころか、何故か自分の服まで変化していたのだ。
「って!?ここはどこだ!?この服はなんだ!?一体全体どうなってるんだ!!??」
「おいおい、騒がしいやつだな。ここは惑星アストレア。お前はここで倒れてて、それを俺が見つけたの。」
「つまり…!お前はまさか、いわゆる泥棒ってやつか!うちの村にはいなかったけど、まさかこんなところで見れるなんて…!感動だ!!けど残念だったな!俺はお金ってやつも何も持ってないだだの薪割りやってる木こりだ!!」
「人を犯罪者扱いするな!あんたがぶっ倒れてたから生きてるかの確認ついでに助けたんだよ!!ていうか、泥棒見て感動するなよ…、泥棒じゃないけどな!」
「ん!」と言いながら、目の前の青年はシルヴァに手を差し出す。その手に困惑している様子を見かねた青年は、ふっ、と微笑を浮べながら声をかける。
「立てるか?」
「え?…あっ!ありがとう!」
差し出された手を掴みながら、下半身を冷たいコンクリートから離し、地面から立ち上がる。
「お前…良いやつなんだな!!泥棒呼びして悪かったな。…じゃあ、お前は誰なんだ?」
「俺か?そういえば怒涛の会話すぎて、自己紹介がまだだったな。」
こほん、と一つ咳払いをすると、眼の前の青年は俺と向き合い、片手を腰に、一方は胸に当てるポーズを取りながら、俺と目線を合わせる。
「Hello,world!俺の名前は澄風奏多。銀河協会所属の銀河戦士団の参謀さ!」
澄風奏多という青年の自己紹介で話している単語が難しすぎて、とてもじゃないけども理解が難しく、頭を抱えそうになってしまいそうだ。しかし、案外自分は心の声が口に出やすいようだった。
「はろー、わーるど?銀河協会…?戦士団…?何だそれ?」
それを聞いた奏多はとても驚いたような表情をしてシルヴァを見た。まるで常識を知らない珍獣に鉢合わせたような戸惑いだが、それがシルヴァに伝わることはない。
「お、まえ…、マジで知らないのか!?結構有名のはずなんだけど!」
「そんな事言われても、俺この世界初めてだし、異世界人っぽいからわかんねぇよ。」
「異世界人…!?お前が?」
(これ言っちゃまずかったやつか!?でも、助けてくれたし、悪いやつじゃない。むしろ良いやつと思うんだよな…。)
奏多の様子を見ると、何かを考えたように手を顎に抑える。俺から何かを言うことは出来ず、しばらく無言でいると、相手から「なるほどな。」と小さく呟く声が聞こえた。
「何がだ?」
「いや、こっちの話だ。あー、そういえば、お前の名前を教えてくれないか?異世界からの来訪者さん。」
(なーにが、なるほどな。だよ!ええ、これ正直に言って良いのかな!?)
「お、俺は…。」
ドカーンッ!!
何かが爆発したような音が今いる路地裏にも轟く。
「なんだ!?」
「おいおい、また事件かよ!」
体がくらりと傾き、ぺしゃんと座り込んでしまう。人生で平和に農民をやっていた自分にとって、全く聞き慣れない音が響き、冷や汗が頬を伝う。鼓動が早く、息が詰まりそうだ。こんなの、知らない、わからない!
_ポン。
視界が暗く染まりそうな俺の肩を軽く叩く音が耳に入った。
「おい、大丈夫か?」
「澄風…?」
「奏多でいい。怖いようなら、ここで待っててくれ。」
「なっ…!お前は怖くないのか!?」
「そうだな…、まあ、怖くはある。だけど、『怖い』は動かない理由にはならないだろ?」
「…っ!」
(…俺はこの異世界に何をしに来た?元の世界に帰るため?フェイアスを探すため?…この銀河を救うため?……全部だ!!ガタガタビクビク震えて、目の前のことから逃げてちゃ、救えるもんも救えない!)
「とりあえず現場に向かうから、お前は…」
「俺も行く。」
「平気なのか…?」
「ここで行かなきゃ、行動できなきゃダメなんだ!」
シルヴァは立ち上がり、音が聞こえた方角に向かって、前方へ一歩一歩駆けていく。瞳には、恐怖は宿らず、勇気に満ちた希望の眼差しであった。
「へぇ……、意外と根性あるじゃん。見直したっ!」
奏多はバッと大きく前方へ跳ね、先んじて走り始めたシルヴァに追いつくと、そのまま隣を並走する。
「なあ、お前。この騒動が片付いたらさ、うちに来ない?歓迎するよ!」
「『うち』ってその銀河戦士団ってとこ?」
「ああ!見た感じ行く当てないです~って感じっぽいしさ。」
「なっ!(図星)あー、こほん。その銀河戦士団って何する仕事なんだ?」
「そういえば言ってなかったな。まあ後でお前の名前と交換で教えてやるよ!」
「俺の名前…?そ、そういえば…!言ってなかったな!」
「……そろそろ着くぞ。この話はまた飯でも食いながら話すとするか!」
「ご飯!?やったー!!」
「……くっ!ふ…はははっ!お前、馬鹿正直すぎて本当に面白いな!」
奏多はシルヴァの返答がそこまで気に入ったのか愉快に顔を綻ばせる。
辺りの景色は曲がりくねった路地裏から、蛍光色がギラギラと輝く、華やかなネオン街へ移り変わっていく。生まれてから一度も見たことがない景色にらんらんと目を輝かせ、密かに胸を躍らせるシルヴァを余所目に奏多は、
「異世界人といい、……何故か右手に宿ってるっぽい、世界から消えたはずの運命の女神の刻印の力といい、ますますうちに来てほしくなっちゃった。あとで‘‘先生‘‘に報告だな。」
とぼそりと呟いたが、人々の喧騒に搔き消され、シルヴァの耳に入ることはなかった。
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